短編小説①嘘つき

「いいかい、ぼうや。正直な人になりなさい。嘘をついてはいけないよ。」


お母さんが、毎日子供に言い聞かせた。



「ママ、嘘をついたらどうなるの。」

「悪い人になって、幸せになれないよ。」

少年はお母さんの言いつけに従った。
どんなときでも、自分の心に正直だった。





少年は大人になった。

彼の正直な言葉は多くの人を傷つけた。
彼の正直な行動はいくつもの法に触れた。

彼の元には、何も残っていなかった。
友人、恋人、家族でさえも。


彼は、死ぬ間際に呟いた。


「ママが一番、嘘つきじゃないか。」

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