本記事は、戦争研究所(ISW)の2023年12月4日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。
(記事サムネイル画像の引用元:ウクライナ参謀本部Facebook投稿写真)
バフムート方面
報告書原文の引用(英文)
日本語訳
ロシア軍は12月4日もバフムート方面で攻勢作戦を続けた。また、バフムートの北側面でロシア軍が前進したことが確認されている。ロシア軍事ブロガーの一部は、ロシア軍がバフムートの北方に位置する養苗園を占領したと主張したが、その場所はボフダニウカ(バフムートから北西に約6km)付近にある苗木の養苗園を指している可能性が高い。ロシア軍事ブロガーはさらに、ロシア軍がフロモヴェ(バフムートの北西外周部上に位置する)の西方でイヴァニウシケ(バフムートから西に5km)に向かって攻撃を続け、また、クリシチーウカ〜アンドリーウカ線(バフムートから南西に7km)沿いで攻撃を続けたと主張した。ロシア側情報筋は、バフムートの外周部で戦っているドネツク人民共和国(DNR)、ルハンスク人民共和国(LNR)、空挺軍(VDV)から成るさまざまな部隊が撮影された動画を拡散した。ウクライナ軍参謀本部の報告によると、ボフダニウカ付近、イヴァニウシケ付近、クリシチーウカ付近、アンドリーウカ付近でウクライナ軍はロシア軍の攻撃を撃退したとのことだ。ウクライナ軍参謀本部はまた、ウクライナ軍がバフムートの南方側面で攻撃行動を継続したことを繰り返し述べた。
アウジーウカ方面
報告書原文の引用(英文)
日本語訳
ロシア軍は12月4日もアウジーウカ方面で攻勢作戦を続けた。また、ロシア軍の前進が確認されている。撮影地点特定済みの12月4日公開の動画に、ロシア軍がアウジーウカのすぐ北にある貯水池地区で前進した様子が映っている。撮影地点特定済みの動画で、12月4日に公開された別の動画には、ロシア軍がステポヴェ(アウジーウカから北西に5km)の集落内で前進しつつある様子が映し出されている。複数のロシア軍事ブロガーは、ロシア軍がステポヴェ内部とその周辺の展開地点の支配を固めつつあると主張した。また、ロシア軍事ブロガー・アカウントの一つは、ステポヴェから南東方向にある森林地区内で、ロシア軍が最大で600m前進したと主張している。軍事ブロガーたちは、激しい戦闘がアウジーウカ・コークス工場(アウジーウカと北西方向で隣接)付近と工業地区(アウジーウカと南東方向で隣接)内で続いているとも主張した。複数のロシア側情報筋はある動画を拡散したが、その動画に映っているのは、ニジニ・ノヴゴロドを拠点とする「コズマ・ミニン」志願兵戦車大隊所属部隊が、アウジーウカ工業地区内で任務を遂行している様子だとされている。ウクライナ軍参謀本部の報告によると、ノヴォカリノヴェ(アウジーウカから北西に10km)の東方、ノヴォバフムティウカ(アウジーウカから北東に10km)の東方、アウジーウカ市の付近、ステポヴェ付近、シェヴェルネ(アウジーウカから西に5km)付近、ペルヴォマイシケ(アウジーウカから南西に10km)付近でロシア軍は攻勢作戦を行ったが、失敗に終わったとのことだ。
ウクライナ軍はここ最近、アウジーウカ周辺で反撃を敢行し、12月1日時点で以前失った諸陣地を奪還している。撮影地点特定済みの12月4日投稿の動画に、12月1日かそのあたりの頃に、ウクライナ軍がステポヴェ南方の樹木線にあるロシア軍陣地を強襲する様子が映っている。
ヘルソン方面
報告書原文の引用(英文)
日本語訳
ウクライナ軍は12月4日もヘルソン州東岸(左岸)での地上作戦を続けた。また、ここ最近、ウクライナ軍はヘルソン市の南西方向に位置するビロフルドニー島で確固とした拠点を確立した。撮影地点特定済みの動画で、11月3日、12月1日と3日に公開されたものに、ビロフルドヴェ(ヘルソン市から南西に11km)という集落内でロシア軍と交戦するウクライナ軍が映っている。そのことが示しているのは、ロシア軍がビロフルドニー島の大半を支配下に置いている可能性が高いということと、ウクライナ軍が最近、ビロフルドヴェ付近に展開拠点を確立したということだ。また、ロシア軍事ブロガー・アカウントの一つは、12月4日時点でウクライナ軍がビロフルドヴェに拠点を保持していると主張した。別のロシア軍事ブロガーの主張によると、ウクライナ軍は一時的にクリンキ(ヘルソン市から北東に30km、ドニプロ川から内陸に2km)の南方で前進したが、ロシア軍の砲撃によって、ウクライナ軍は新たに進出した地点からの後退を迫られたとのことだ。そのほかの軍事ブロガーは、クリンキ付近で戦闘が続いているが、ウクライナ軍もロシア軍も最近、前進できていないと主張した。ロシア軍事ブロガー・アカウントの一つは、具体名は不明だがロシア空挺軍(VDV)部隊と第70自動車化狙撃師団(第18諸兵科連合軍)所属部隊がストレスにさらされていると主張し、その理由として、クリンキでウクライナ軍に対して適切な行動がとれていない点をあげた。ウクライナ人軍事評論家コンスタンティン・マショヴェツのレポートによると、ロシア軍「ドニエプル」部隊集団は、悪天候を利用して再編成を行っており、クリンキのウクライナ軍拠点陣地に対抗するための主力となるアセットを集結させているところだという。