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20代そこそこの折り①

20代そこそこの折り。
頭脳警察として九州をツアーで周り、阿蘇の黒川温泉で一週間ほど休暇を取っていた。
シーズンオフということもあり、オレたち以外に客はなく、露天風呂のお湯で機材車を洗ったり、裸で庭園を走り回ったり、それは御乱行と呼んでもいい代物であった。
街まで買い出しに行くのであるが、免許を持ってるのはオレだけしかいない。
買い物が終わり帰って来るときに、それはそれは素晴らしい“やまなみハイウェイ”というワインディングロードを走ることになるのだが、運転してるのは新車で購入したハイエースロングとは言え、所詮、機材車であり、その事にオレの心は、不満そしてまた不満が日々積み重ねられていった。
ここはこんな機材車で走る道ではない。スポーツカー、そうイタリー製のスポーツカー、出来れば色は赤であって欲しい・・・という願いが沸々と革新的に芽生えていったのであった。
東京へ帰って、随分と日が経った頃、ある夜中に友人と帰宅途中、運転しているオレの左目を、確かに丸いテールランプが、かすめていった。

※このテキストは、かつて第一興商の音楽ファンサイト「ROOTS MUSIC」に連載されていた文章に、大幅に加筆修正したものです。

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