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新大久保にある海城学園という②

 オレは「螺旋階段」というとっても小さなお店が行きつけで、地下に通じる階段を下りると下北沢の「シェルター」程度の広さのダンスフロアがあり、真ん中には・・・あっ違う、地下に行くにはその真ん中にあるスパイラル(螺旋階段)を降りて行くんだった。ほとんどいつも暗闇で、チークタイムになるとさらにまた真っ暗になるので、不純異性交遊の場としてはうってつけでもあった。
 隅のベンチ?に座りに行くと、知り合いが女を膝に乗せ、彼女のセーターの裾から手を差し込んだまま、オレと挨拶を交わし、しばし轟音の中での談笑となる。
 かかっている曲はほとんどがモータウンのナンバーであり、だからこそオレはこの螺旋階段が行きつけだったのだ。
 モータウン・レコードというのはアメリカはミシガン州デトロイトにあるレコード会社で、車産業で有名なデトロイトということで、モータータウン→モータウンになったのはよく知られた話。
 で、そのモータウンにはオレの大々好きなダイアナ・ロス&シュープリームスやテンプテーションズ、スモーキー・ロビンソン&ミラクルズ、リトル・スティービー・ワンダーにメリー・ウェルズ、あれ、何か大事なのを忘れてる気がする・・・とにかく“恋のキラキラ星”のごとくにR&Bアーティストが在籍しており、オレにとっては不純異性交遊もいいけど真っ暗闇の宝箱といった螺旋階段だったのだ。
 ある夜、年上の女二人と知り合うことがあって、話が盛り上がったのかどうか知らないが、場所を変えて三人で、とある地下の薄暗い部屋に行った記憶がある。
 お姉さん二人に挟まれるようにソファーに座ったオレの耳には、ジュークボックスから流れてくるシュープリームスの♪“ひとりぼっちのシンフォニー”・・・・
 そうか、ただナンパされただけだったのかといま書いていて気づくオレであった。
 そんなこんなでシュープリームスの大好きなこの歌を聴くたびに、甘く酸っぱく切なくときめく想いが脳裏をよぎっていくのです。

※このテキストは、かつて第一興商の音楽ファンサイト「ROOTS MUSIC」に連載されていた文章に、大幅に加筆修正したものです。

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