プロレスが一人の人間を救った話

自分の好きなものの中で一番歴が短いが、今一番熱いコンテンツがプロレスだ。
月に2~3回の頻度で観戦に赴き、毎日のようにキャッキャしている。

プロレスにはまる前

以前からプロレス好きな友人から話を聞いていたこともありプロレス自体への興味はあったので「いつか生で見たいな」とは思っていた。しかし、人の「いつかやりたい」は基本的にやらないのである。「試合見に東京に行こうかな」などと言ってはいたが、万単位の費用をかけても見たいという熱量が無いとなかなか腰があがらない。そうした気持ちで数年が経った。

ひとつめのきっかけ

ある日、別の友人がとある動画コンテンツを勧めてきた。
それはミヤギテレビの「OH!バンデス」のコンテンツの一つである「TAXIめし リターンズ」
これが斉藤ブラザーズとの出会い。
最初は「なんかデカい人が飯食ってんな~。」くらいの感じで流し見していただけであったが、回数を重ねるごとに「なんか面白いぞこの人達」という感情が芽生えてきた。
しまいには次の回が公開されるまで待ちきれず、何度も過去動画を見るほどハマり、勧めた友人は若干引いて、しばらくDOOMと言うだけの機械になった。私は悪くない。

沼の入り口

そんな中、2023年8月に福岡でプロレスがあると知り「無料だし行ってみるか!」という事になった。
その日は2か所で試合があったが、大橋サマーフェスティバルを見に行く事に決めた。当時はプロレス団体やレスラーの名前はほとんど知らない。誰がどこの所属で、どういう人で、など事前情報ほぼ0で迎えたこのイベントで、私はとある団体のレスラーに出会った。

第一試合 トゥルエノ・ゲレーロ VS アンクルパリ

以下、レスラーの名前は敬称略させていただく。

私が人生で初めて生で見た試合。
トゥルエノ・ゲレーロと韓国レスラーのアンクルパリの試合。
変態ムーブをかますアンクルパリにゲレーロが翻弄される展開にクスクス笑いつつも、途中からは華麗な飛び技を決めるゲレーロの姿に魅了された。
それまでプロレスというとゴツい体の人が身体をぶつけ合うイメージしか無かったが、リング場を軽やかに飛んでは跳ねるその姿に一瞬で心を掴まれた。
結果はゲレーロの勝利。勝利後にアンクルパリに握手を求め相手を称えるスポーツマンシップも良かった。

次の試合へ

ネットがある時代に生まれて本当に良かった。もしこれがひと昔前ならこれきりだったかもしれないと思う。
満たされた気持ちで帰路に着き、無事にゲレーロのSNSを見つけた私は彼ががむしゃらプロレス所属だという事、そして8月末に小倉城、9月に門司で試合がある事を知る。
また試合を見たいという気持ちが徐々に高まる。残念ながら小倉城は都合で行けなかったため、対戦カードが出てギリギリになって9月のチケットを取った。
尚、小倉城の試合は後日テレビで特集が組まれたが、公式YouTubeにアップされたその放送は10回以上見た。多分。

一番の薬

こうしてプロレスにはまり始めた私だが、この頃は強迫性障害を発症しており非常に不安定な日々を過ごしていた。
この病気は人により様々な症状があり、誤解を招くと嫌なので病気の詳細は調べてほしいが、私の場合は不安が強ければ強くなるほど自分の記憶が曖昧になり、自身の視覚情報を信じる事が出来ず、一人で物事の判断が出来なくなった。仕事の効率も著しく落ちた。そしていつの間にか一人で行動するのが怖くなってしまっていた。
門司の大会数日前にようやく通院が叶い投薬がスタートするも、投薬による副作用と仕事に関する不安が重なり、大会前日は食欲の低下からまともに動く事が出来ない状況だった。

試合当日も極度な不安状態が続き、同行者に不安を吐露しながら会場へ向かっていた。
だが、そんな不安な気持ちは試合が始まってから全て飛んで行った。
前回のサマーフェスティバルの試合とは異なり、少し怖いと思うほど序盤から気迫に満ちた試合。会場の温もりと盛り上がり。最後までハラハラする展開ばかりの試合を目の前にした私は今までの不安の事などすっかり忘れて試合に集中し続けていた。

そして、翌日から不調だった体調が一気に改善した。薬の副作用が落ち着き効果が出始めたタイミングでもあると思うのだが、ここで一つの心の支えが出来たことは間違いない。

希望

それからバカみたいに試合を見に行っている。
先日のがむしゃらプロレス20周年記念大会では、発売されているDVDを全種類購入するというムーブを取り、その行動に自分でもちょっと引いた。

近場でゲレーロが出る試合はもちろん、他団体の試合も見に行く。
何もかも楽しくなかった日々が次の試合に向けて頑張る日々に変わった。
そして、レスラーが輝く姿を自分の手で写真に収めたいという欲望が出来た。処分しようとしていたカメラをまた手に取った。

レスラーの方々は日々、身体を作るためのトレーニングに食事管理、怪我をしない・させないための知識や技術を積み重ねている。仕事との折り合い、様々な準備。ありとあらゆるものをこなして、ファンの前では命がけの試合を繰り広げてくれる。きっと想像できないくらいの努力をされているのだと思う。

かっこいい、怖い、面白い、痛そう、すごい、綺麗。
うまく言えない、様々な感情は今の私の生きる原動力。

プロレスは私を救ってくれた大切なものになった。

だから私はプロレスが好きだ。

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