ショートショート1 『名前』
「詩織じゃないよ、伊織だよ。」と香織は言った。
「あ、幼馴染は伊織ちゃんか。詩織ちゃんは職場の人だったね。」
「ちがう、それは美織。詩織は大学時代の親友。」
「あれ?大学時代の親友は沙織ちゃんじゃなかった?」
「沙織は高校時代の親友。前一緒にご飯食べたでしょ?」
「そうだった、ごめんごめん。」
香織が何度説明すれば分かるのかと言わんばかりの顔で呆れる。
無理もない。
香織が俺に友達の話をするたびにこのやりとりが行われる。
どうして香織の周りにはこうも似たような名前の子が集まる