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女按司の歌《あだんやーぬあず(多良間島)》

K

《あだんやーぬあず》は二部構成になっている。

その(1)では、ボウという名の女按司が、シマの創設伝承に由緒のある聖地を切り開き、草分けの本家(ムトゥ)を建設するというもの。

その(2)では、女按司であるボウが屋内を踏みしめることで、その家を本家とする人たちの①長寿、②子孫繁盛が予祝され、③男の子には渚の白砂が米に変じることが予祝され、④女の子には沖合のリーフに砕ける波が宮古上布に変じることが予祝される。

出典は、外間守善・新里幸昭編『南島歌謡大成 3宮古篇』(1977年、角川書店)

私訳は具志堅 要による。

その(1)

あだんやーぬ あずよ すたたんぬ ぼうよ
アダンヤーという家の按司は、スタタン家のボウは、
めーぎぶす うぷやーよ
お目通りしたい、大いなる方よ
(囃子。以下略)

みどんあず やりば ぶなぐあず やりば
女按司だったので、妻の按司だったので、

ならぶとぬ まどん ならしゅぬ まどん
自分の夫のいない間に、自分の主人の留守に、

山なぎば とりむて 先ぶらば とりむて
山鉈を取って、大鉈を持って、

にすぬ山 んでて くさて山 んでて
北の山に出かけて、鎮守の森に出かけて、

あだん山 ながき さるか山 しゅらぎ
〔ギザギザ刺の〕阿旦(アダン)の山を刈り開き、〔刺の痛い〕サルカケミカンの山を整地して、

やしゅる しゃばらき としゅる しゃばらきて
八尋〔の聖域〕を設けた、十尋〔の聖域〕を設けた、

やしゅるゆーが うつん としゅるゆーが うつん
八尋〔の聖域〕の内に、十尋〔の聖域〕の内に、

やすき型 つふり とくに むらがらし
屋敷の型を造り、土台を盛り上げ、

うぷつとや びしゃし つとがまや かずらし
大きな石は据え石〔にして〕、小さな石は軒の石〔にして〕、

ばんじょうがにし きたうき つぶるがにし ぱらたて
番匠金で〔計って〕桁を置き、曲尺(かねじゃく)で〔計って〕柱を仕立てて、

ばすがぱに かややし うりがぷに ぷくやし
鷲の羽を〔茅葺きの〕茅にして、その骨を屋根押さえにして、

青ちゅなや ふきな まぶちゅなや しみな
青糸の縄は葺き縄〔にして〕、真苧糸の縄は締め縄〔にして〕、

くがにしや うしゅい なんじゃしや ぎぱしゃし
黄金〔の編み竹〕で覆い、銀〔の串〕で串刺しにした。

青なばぬ うゆいけ 黒なばぬ うゆいけ
青苔が生えるまで、黒苔が生えるまで、

ういかんがぬ くぬむと たいかんがぬ うぇぬむと
動かないこのムトゥ(草分けの家)よ、揺るがない天上のムトゥよ。


その(2)

くぬやすき うつん くぬとくに うつんや
この屋敷の内を、この礎(いしずえ)の内を、

ばが んーたみみりば ゆふ んーたみみりば
私が踏み鎮めてみると、よく踏み鎮めてみると、

かたくまぬ かたんや かたうつぬ かたんや
片隅の一角には、内側の片隅には、

いぬつばい あんちゅさ ながしゃばい あんちゅさ
命の栄えがあるという、長寿の栄えがあるという、

あんしーてな ちゅむんま うりしてな ちゅむんま
このようにこそ思うのだ。そのようにこそ思うのだ。

また んーたみみりば ゆふ んーたみみりば
また踏み鎮めてみると、よく踏み鎮めてみると、

かたくまぬ かたんや かたうつぬ かたんや
片隅の一角には、内側の片隅には、

つぶる木が うがねーし ばやう木が うがねーし
夕顔の木のその実のように、這う木のその実のように、

なすがりーぬ あんちゅさ だきがりーぬ あんちゅさ
おめでたの縁起があるという、〔子どもを〕抱く縁起があるという、

あんしてな ちゅむんま うりしてな ちゅむんま
このようにこそ思うのだ。そのようにこそ思うのだ。

また んたーみみりば ゆふ んたーみみりば
また踏み鎮めてみると、よく踏み鎮めてみると、

かたくまぬ かたんや かたうつぬ かたんや
片隅の一角には、内側の片隅には、

ゆにむいぬ あんちゅさ くみむいぬ あんちゅさ
よね(米)の山があるという、こめ(米)の山があるという、

びふがふぁぬ むてや さむるふぁが むてや
男の子の持ち分は、侍の子の持ち分は、

にすぬいんぬ んなぐぬ しゅわらぴだ しなぐぬ
北の海の砂が、潮洗う浜の白砂が、

ゆにんなりくば いら くみんなりくば いら
よね(米)になるほどだよ、こめ(米)になるほどだよ、

ういかだな 上納やしゅう たいかだな 上むぬやしゅう
揺らぐことなく上納しよう、ぐらつくことなく貢納しよう、

あんしーてな ちゅむんま うりしてな ちゅむんま
このようにこそ思うのだ。そのようにこそ思うのだ。

みどぬふぁぬ むてんや ぶなぐふぁが むてんや
女の子の持ち分は、姉妹の持ち分は、

ぴしぬ ぶりなんぬ うきんぶり しゃいぬ
珊瑚礁に砕ける波が、沖で砕ける白い波が、

しるがない なりくば じょうがない なりくば
貢納の反物になるほどだ、上納の反物になるほどだ、

ういかだな 上納やしゅう たいかだな 上むぬやしゅう
揺らぐことなく上納しよう、ぐらつくことなく貢納しよう、

あんしーてな ちゅむんま うりしてな ちゅむんま
このようにこそ思うのだ。そのようにこそ思うのだ。

(『村誌たらま島』)

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