「力の指輪」を楽しむためのエルフの歴史解説(2)ーガラドリエル様の前々半生(要約エルフの歴史)

 ではようやくガラドリエル様の前々半生と題して、「力の指輪」に至るエルフの歴史をかいつまんで紹介したいと思います。固有名詞を説明なしに使っていきますので、(1)をお読みでない方は、お手数ですが(1)からお目通しください。これから紹介する物語の用語解説コーナーとなっています。
 重ねてお断りしますが、こちらの記事はわかりやすさを優先し、端折ったり遊んだ表現をとっています。興味を持たれた方はぜひ『シルマリルリオン』を手に取り、壮大な世界をお楽しみください。

1.ヴァラールによる創世

 ヴァラールが歌って世界を創世しました。メルコールはわざと不協和音を奏でて和を乱しました。
 色々あってメルコールに嫌気がさしたヴァラールがアマンに引きこもる
メルコールとヴァラールは戦いを繰り返しますが、ヴァラールは中つ国の西方にあるアマンに撤退します。

2.エルフが中つ国で誕生、ヴァラールがエルフをアマンに招く

 ヴァラールは、イルヴァタールの長子であるエルフ(言うなれば上司のお気に入りである優美で賢い種族)を、メルコール(ルシファー的な存在)の悪影響を受けないよう、手元のアマンに呼び寄せます。エルフのうち3部族がアマンに移住、光のエルフだとか上のエルフと呼ばれます。

3.エルフの隆盛、フェアノールの誕生、大宝玉シルマリル生成

 アマンに移住したノルドールエルフのフィンウェ上級王に長子フェアノールが誕生。フェアノールは才気煥発で天才的なアイテム作成職人で、大宝玉シルマリル(3個セット)を生成します。シルマリルは、太陽と月の光を集めたような宝玉(当時アマンを照らしていた二本の木の光を閉じ込めた)で、ヴァラールだって欲しがるようなシロモノでした。

4.ガラドリエル誕生

 ガラドリエルは、このころアマンで生まれています。フェアノールの弟の娘、つまり姪にあたります。ノルドールエルフの王族のお姫様という立場です。末尾に人間関係の略図を掲載していますのでご参照ください。

5.メルコールの暗躍

 悪さを続けるメルコールはいったんヴァラールに捕縛されましたが、改悛したふりをしてまんまと解放されます。至福の地アマンで、繁栄するエルフに不和の種をまきます。

6.メルコール、大宝玉シルマリルを奪い、中つ国に逃亡

 メルコールが、フェアノールの留守中に、フィンウェ上級王を殺害してシルマリルを強奪、中つ国に逃げます。フェアノールは大激怒。「一族総出でメルコールを追い、シルマリルが誰の手に渡っても、この手に取り戻すまでこの世の果てまで、復讐と憎悪をもって追跡する!」と大演説をぶち、二人の弟や息子たちにも誓約させます。

7.「メルコールを追って中つ国に戻るぞおるぁ!!」

 きれいで賢いエルフがそうならないように、メルコールの悪影響から守ろうとアマンに呼び寄せたヴァラールとしては、当然、引きとめにかかります。が、才気煥発なフェアノールは言うことを聞かず、ノルドールエルフの多数を連れて進軍開始。ガラドリエルは一族に従い、進軍に加わります。
 

8.エルフ同士の戦争勃発

 アマンは島国なので、中つ国に渡るために船が必要、ということで、テレリ族というエルフに「船を貸せ!」と迫りますが、断られます。
 船を貸してくれないなら強奪するまで(byフェアノール)。フェアノール率いるノルドールエルフが、テレリ族(エルフ)と交戦。打ち負かして船を奪います。が、これがヴァラールの逆鱗に触れる。

9.ノルドールエルフはアマンに出禁だ!(マンドスの呪い)

 怒ったヴァラールから、ノルドールエルフは、アマンへの出禁を告げられます(マンドスの呪い)。発端はメルコールの暗躍を許したヴァラールの手落ちじゃないかと思いますが。このようにしてノルドールエルフは呪われた存在となり、アマンに還れなくなりました。

10.出禁上等!俺たちはシルマリルを取り戻す!

 フェアノール達ノルドールエルフは、ヴァラールにより呪われた存在となりました。ここから、ノルドールエルフは血塗られた歴史を重ねる運命を背負います。
 まずは、中つ国に渡るにあたり、テレリ族を殺戮して手に入れた船を巡り揉め事が発生。一部のノルドールエルフが船を燃やしてしまうため、残ったノルドールエルフ(この中にガラドリエルもいた)は、当時まだ一部繋がっていた北方の陸橋を命からがら渡って、中つ国に到達します。

11.宝玉戦争の始まり

 中つ国において、大宝玉シルマリルをめぐり、エルフとメルコール(=モルゴス)の戦争が起こります。が、メルコールは一応神霊の一員なので、敗色濃厚。なお、フェアノールは早々に戦死します。

12.ベレンとルーシエンがシルマリルを入手

 宝玉戦争のさなか、史上初の人間とエルフの恋物語が発生します。
 ルーシエンは、中つ国で繁栄したシンダールエルフのお姫様で、人間男性のベレンと恋に落ちます。で、父王が「二人の仲を許してほしければシルマリルを取ってこい」とベレンに難題をふっかけます。
 二人は、シルマリルを1つ奪取することに成功(シルマリルは3個あります)。この一件により、シルマリルの1つがシンダールエルフに転がり込みます。

13.エルフ同士の殺し合い再び

 先ほどのフェアノールの誓言を見直してみましょう。「シルマリルが誰の手に渡っても、この手に取り戻すまでこの世の果てまで、復讐と憎悪をもって追跡する!」
 メルコール(=モルゴス)からエルフの手に渡ったとはいえ、正当な所持者は俺たちノルドールエルフだ、寄越せ!!というわけです。シルマリルにより、またもエルフ同士の戦争が起こります。
 この辺の戦争の経緯は割愛しますが、シルマリルはベレンとルーシエンの孫娘であるエルウィングに渡ります。そのエルウィングの結婚相手が、エアレンディルです。

14.エアレンディルの船出

 メルコール(=モルゴス)との戦いは劣勢一方だったので、エアレンディルはヴァラールの助力を乞うため、船出します。しかし、エアレンディルはアマンへの出禁を食らっているノルドールエルフ(のハーフエルフ)なので、基本、ヴァラールに拒否されます。
 一方エルウィングは、ノルドールエルフ勢に攻められて、シルマリルを胸に抱いたまま入水します。死んだかと思いきや、エルウィングは白い鳥の姿になってシルマリルを掲げ、エアレンディルの船を導き、エアレンディルはアマンに到達します。

15.宝玉戦争の終結(怒りの戦い)

 エアレンディルの嘆願によって、ヴァラールの加勢が得られ、メルコールは敗北(怒りの戦い)。ノルドールエルフも許されて、以後、アマンに還ることができるようになります。
 ただし、エアレンディルは、ハーフエルフだったため、アマンでの生活を許されず、お星さまにされ、シルマリルを船首に掲げていまも船旅を続けています((これが、明けの明星と宵の明星)。

16.以降、現在に至る
以上が、創世~第一紀のざっくりとした流れとなります。「力の指輪」は第二紀のお話、「指輪物語」自体は、第三紀の話です。

ガラドリエルはこの間何をしていたか

 実は、この間のガラドリエル様の足取りは、あまり語られていません。ノルドール一族がアマンを離れた際に、一緒に中つ国に渡ったことは明記されていますが、気がついたらシンダールエルフ(ベレンとルーシエンの項参照)の国、ドリアスに身を寄せていたような感じです。
 ただ、少なくとも彼女は、エアレンディルの嘆願により、ノルドールエルフがヴァラールに赦免されたあとも至福の地アマンに還って安穏とした生活を送る気はなく、中つ国で自分の国を築こうという、激しい気性の持ち主であったことが窺えます。
 ガラドリエル様の話はないのかよ!と怒られるかもしれませんが、彼女はアマンでのエルフの繁栄、ノルドールエルフに下された呪い、宝玉戦争や怒りの戦いをすべて見て生きてきたことを踏まえると、キャラクター理解に深みが増すと思われます。

第一紀のエルフ人間関係略図

 第一紀あたりのエルフの人間関係を図にしたので、ぜひ参考にしてみてください。(一部関係ないところは略してます)

見ていただければわかりますが、ガラドリエル様はギル=ガラド上級王から見れば、年上の王族です。さらにエルロンドよりこんなに上。

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