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おとなちゃれんじ 〜嗅覚消失編〜

持って生まれた天真爛漫さゆえに春風邪を引いてしまった私であるが、三日三晩寝込んだ末に5/11本日、とうとう病魔を克服するに至った。
多少鼻水は出るが、熱も咳も落ち着いた。体もそんなにだるくない。

健康になれたらやりたいことは山ほどあったが、その辺の説明は割愛して、とにかくまずは食事と風呂である。発熱アラサー単身者が入浴なんかしたらもう二度と上がってこれない気がして、恐怖のあまり2, 3日風呂には入れていなかった。

朝10時に目覚めた直後、自身の快復を確信した私は、布団から出る前にウーバーイーツですき家のキムチ牛丼と高菜明太マヨ牛丼を注文し、配達を待つ30分間を有効活用しようと久しぶりの風呂に飛び込んだ。

脂っぽくなった髪を濡らし、こないだ買ったやや高いシャンプーで頭を洗い、一度じゃ足りない気がしてもう一度洗おうと……したところで気がついた。シャンプーの匂いがしない。

自分のシャンプーの香りは慣れると感じにくくなるものではあるが、そのレベルではなく全くの無臭である。ん? ん?と思いながらリンスやボディーソープを嗅いだがやはり匂いがせず、風呂上がりに適当に棚から引っ張り出した旭ポンズを嗅いでも全く匂いがしなかった。どうやらコロナ禍の時にちょくちょく耳にした嗅覚障害が、私の身にも降りかかったようである。

検査で陰性だったので、今回の風邪は新型コロナでもインフルエンザでもないはずだが、普通の風邪でも嗅覚がなくなることはあるらしい。



マジかよ……。
牛丼頼んじゃったよ……。



髪を乾かしている頃にちょうど牛丼が届いた。
より匂いの強いキムチ牛丼の方を口に含んでみたが、やはり香りはほとんど感じられなかった。塩味と肉の油とキムチの食感は感じられるので不味いというほどではなかったが、確かに匂いのない食事というのは物足りなさがある。なんというか、いまいち自分が何食べてるのかわからないような、味付けさえ同じなら何を食べても変わらないような……。そんなことを考えながら牛丼を二杯平らげ、鼻以外は元気いっぱいになった今、この記事を書いている。



この風邪は、先日のGW、東京から遊びに来てくれた幼馴染からもらった可能性が、高いっちゃあ高い。
彼女とはあわじ島の南側を一緒に旅行して、私の家にお泊まりし、その後梅田市街を散策した。その間、確かに彼女は風邪気味っぽく、ときおりコンコンと咳をしていた。

ただ、彼女からうつされたと断言しきれないのは、あまりに彼女と私で症状に差がありすぎるからだ。
彼女は確か四月下旬くらいから咳の症状が出始めて、一回落ち着いたものの五月の頭からぶり返し始めたと言っていた。
一方わたしの方は、この短期間で鼻水から始まり、熱、喉、頭痛全部やった。
つまり本当にこの風邪が幼馴染からもらったものだとすれば、この私を、すき家の牛丼を二杯平らげるようなポテンシャルを持つ女を数日間寝込ませるほどに凶暴な風邪菌を、彼女は半月近く体内で飼い慣らしているということである。だとしたら彼女の免疫機能は、あまりに剛力すぎる。

旅行中の彼女との会話を思い出すに、たしか最近ブロッコリーが好きで、ブロッコリー食べたさに毎日サラダを作ってそればっか食べてるとか……報連相とTPOの弁えができない年上男性を私に紹介してくれるとか……旅行した県の缶バッチを集めることにしたとか……友だちの息子が懐っこすぎてビビったとか……。

会話の中から免疫強化の秘訣を見出すことは難しそうだが、とにかく次のパンデミックが起きた際には、彼女の血液からワクチンを作るようどっかの学会に進言してみようと思う。

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