アイヌとマタギ 持続可能な社会とは

アイヌやマタギ、蝦夷の文化や歴史が好きな櫻井です。先日、お客様の息子さんが大学受験を控えていて、何を学びたいかと伺ったら、獣害についてという話がでました。では「狼を放すのが一番ですね」と冗談半分・期待半分でお伝えしたら、「まさにそうだと思っているんです!」とのご回答を。日本の将来は楽しくなりそうです。

子供のころに見た「マタギ」という映画がそもそもの私とマタギ文化との出会いでした。その後、全くといってコンタクトは無かったのですが、10年ほど前、熊谷達也氏の「邂逅の森」という小説に出会い、マタギとの再開を果たしました。それから氏のマタギ関係の小説を読み漁り、ほかの作者が書いたマタギ小説も見つけ出してむさぼるように読んでいました。っといってもマタギについて書かれた本はそんなに多くは有りません。意外なところでは、あの直木賞作家「志茂田景樹」さんなんかも一冊書いてらっしたり(「黄色い牙」)、歴史小説で有名な高橋克彦さんの「炎立つ」もマタギ文化とつながりが深い、東北蝦夷のお話です。


マタギ、マタギといっていますが、もしかしてマタギって何かご存知ないかたの方がおおいんですかね。先日、当店のスタッフに、「マタギの小説にハマってるんだよね」なんて言ってみたところ、「またぎ??」っと頭の上に大きなクエスチョンマークが出ていたので、多分普通マタギは興味の対象ではないのでしょうね。

ちょこっとだけマタギの話をさせていただきますと、マタギとは東北、北海道で、古い方法で狩りをした猟師のことです。マタギは熊狩りが有名ですが、ウサギや鹿、今では天然記念物となって禁猟となっていしまったカモシカ(マタギの間では「アオシシ」と呼ばれていました)なども捕ります。獲った熊を解体するときに行う「ケボカイ」の儀式や、シカリ(狩りのための組を率いるまとめ役。棟梁のこと)の持つ「術」や「呪文」など、独特な文化と風習を持っています。

マタギは獲物のことを「山神様から授かりもの」と考えており、解体する前に必ず呪文を唱えて「魂送り」をします。これは獲物の魂が「現世に未練のないように、祟りがないように」するためだそうです。

同じような風習がアイヌの文化にもあります。アイヌは捕った熊の魂を、お土産を持たせて神の国に送るそうです。そうすることで人間にあんなに良くしてもらったと神の国、カムイモシリで他の神にも伝えてもらい、今度は、神が人間の国にお土産をもって訪れてもらうためだそうです。もしその熊に小熊がいたら、連れて帰り、上等な食事を与え、大切に1年か2年ほど育てて、その後集落をあげての盛大な送り儀礼を行たあと、みんなで食べるそうです。熊は食べることが目的ではなく、神に送ることが目的だそうです。これは良い噂を神の国に広げ、人間の国にお土産をもって訪れてもらうためということらしいです。ちなみに熊も神様です。自然は全て神様というのがアイヌの考えだそうです(間違ってたらごめんなさい)。

独特な風習と文化を持った二つですが、共通するところは、どちらも必要な分しか狩りをおこなわないこと。自然は神様のもの。獲物は神様の贈り物だからです。獲りすぎると自分たちの首をしめるということをわかっていました。アイヌは、河に上ってくる鮭に対しても、神様が、熊の分、オオカミの分、フクロウの分、そして人間の分をちゃんと数を数えて送ってくださると考えており、決して自分たちが必要な以上にとることはありませんでした。また、マタギも、その年が越せる分の獲物しかとりませんでした。個体数の減少を避けるため、子連れは捕らないなど様々な掟によって戒めていました。マタギもアイヌもどちらも熊を食べますが、一番熊を、そして自然を愛しているは彼らだと感じます。

征夷大将軍とは、東北に蝦夷を征伐するためにおかれた職です(前出の高橋克彦さんの「炎立つ」はこの蝦夷と征夷大将軍との戦いが題材です)。蝦夷とは、田んぼをつくって定住していたものとは違い、山野を駆け回り狩りをしながら生きていた山の民のこと。アイヌもその一つです。和人は圧倒的な数と武力をもって東北・北海道の地を先住の民から奪いました。そして利益のため、鮭や鹿を捕れるだけ捕って山も川も空っぽにしていきました。

蝦夷地が北海道と名前を変えたころ、アイヌの土地、アイヌモシリの自然は破壊され、アイヌは土人と虐げられ、住む場所を追われていきました。マタギは、そんな彼らの文化・風習を現代に残してきました。厳しい掟の中で森と共に生き、自然とともに生活していました。そんな文化や風習は今ではほとんどが失われしまっています。


今、私たちは健康で継続可能な生活様式をもとめています。それは自然に打ち勝つのではなく、ともに生きることだと先人は知っていました。近代化の波の中で失ったものの中に未来へのヒントが隠されているようです。多くのことを彼らの生き方から学べるはずです。伝統を重んじ、尊い自然を守り、自然の力をすこしだけ借りて生きていくことが大切だと感じています。

自然の力を借りて、人の体を癒す漢方も、先人の知恵と知識の蓄積から学ばなければ何もわかりません。持続可能で健全な社会と身体をつくるためにももっともっと漢方のこと、自然のことを深く学びたいと思う次第です。

この動画は、文字を持たないアイヌの口語伝承を幻想的なアニメーションで再現した、アイヌの子守歌です。とても興味深い内容です。見てみてくださいね。ちなみにうちの子はこの動画では寝てくれません。ギャン泣きしますww


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