たぶん、言えない(短歌15首)

懐かしむ道理もないのに覚えてるなんとなく好きだった人の名

別アカを「見つけないで」と笑うけど前から知ってる同じ「、」の位置

人間は衣類を纏い身を隠し内なる心も隠しているの

「あと少し」なんてうそぶく江ノ島の君の隣でのぼる階段

深い青きらきらひかる水槽に美味しそうだと笑う横顔

「ついてきて」左手引かれ放課後の乗った電車はいつもと逆側

浮遊してクラゲは語るぷかぷかと動くことは楽しいことと

平日の小田急線は人まばら理由も言わぬ君の隣で

大人ぶり背伸びの君に贈るのはいちごが一番乗ったケーキ

想像し怖くなっては否定する君の世界が満たされること

年重ね新たなきみに出会うのはやっぱりぼくが一番がいい

君はもう僕よりひとつ年上で僕の歩幅はすこし早足

ふわもこのニットのきみは恋の表情(かお)誰にと聞けずLINEを閉じた

君想いにやけた頰は間抜けヅラ君がここにいなくてよかった

誰が為に人はご飯を食べるのか午後十二時の二人の食堂

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