燃えるゴミは火曜日

拝啓　朝晩がめっきり寒く布団から出るのも辛い今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。あなたが風邪などをひいていないと良いなと思います。
先日贈ったセーター、見立て通りよくお似合いでとても嬉しく感じました。幸助くんには明るい色が似合うと以前から思っていたので見立て通りでした。からし色が華やかな顔立ちによくお似合いで気に入っていただけたのなら幸いに感じます。
舞台の稽古の方は順調でしょうか？次の舞台はあの古典を題材にしたミュージカルだそうでわたしもこの機会にしっかりと原作を履修して臨みたいと考えております。幸助くんを応援していると様々なことと出会う機会があって本当に日々勉強させられる日々です。わたしもこの歳になって戦隊ヒーローの名前を覚えることになるとはよもや想像していませんでしたが今やおもちゃ売り場などを通りがかれば即座に『あ、あれはシャークレンジャー！』だなんて判別がつけられるようになりました（笑）
先日出演されていたバラエティ番組もなかなか周りからも高評価です。お味噌汁にご飯を入れると美味しい、とおっしゃっていたのでわたしも試してみましたがなかなか悪くないですね。共演者の方からは不評でしたがわたしは好きですよ。
わたしの地元で生産されている味噌は東京のものと違って少し甘くまろやかな味わいのものでわたしが味噌汁を作るときはもっぱらこれです。同封するので是非試して欲しいな、と思います。これからも応援しています



幸助くんへ♡
今日のマチネもお疲れ様でした！今日もマチソワ（※）の間に書いてます（笑）
もはや日記みたいになってきてるけど今日も読んでくれると嬉しいな。
今日のマチネは７列と少し後ろの方だったので全体像がよく見えました。幸助くんの殺陣のシーンが見たくていつもロックオン気味なのですが引きで見ると指先のしなやかさとか足の長さが際立ってたまにはこういうのもいいなーと思いました。
昨日出てたバラエティの幸助くんは舞台の稽古中なのもあって顔がしゅっとしててすごくかっこよかったです。幻野幸助しか勝たん！
ソワレがそろそろはじまるので今日はここまでです。ソワレも応援してます。次は最前だよ〜！

P S　今日もわたしがあげたレッスン着、着てくれて嬉しかったです♡今日はTシャツです。安物でごめんね（ ; ; ）

幻野幸助様

寒の入りとともに寒さが一段と厳しくなってまいりましたが、幸助くんにおかれましてはますますご壮健のこととお慶び申し上げます。
さて、本日は申し上げたいことがありましてこうして手紙をしたためております。と言いますのも、最近の幸助くんの行動には少し身に余るところがありまして、これから俳優として活動していく上で支障になるのではないか、と考え、少し厳しいことも伝えなくてはいけないな、と決心いたしました。一ファンからの個人的な進言ですのであくまで参考程度に留めていただければ幸いです。
第一に先日のバラエティ『日本人のこれってど〜なの！？』の際の発言です。
あなたは『家に帰ったら料理を作って待っていてくれる人がいて欲しいから結婚したい』とおっしゃっていましたが令和の時代で全国放送されるテレビ番組に出演される方としてはいかがなものかな、と思います。家事をするのは妻だけでしょうか？今や日本における共働き世帯は全体の６割にものぼると言われています。どちらが仕事でどちらが家事かなんて時代ではもはやありませんし、共働きの妻に家事を強いるのも少し心証が悪く感じます。かねてよりあなたの発言は男女差別的であると感じる機会が度々ありましたがそれも思想の一つである、と無闇に口出しすることは避けていました。しかし今回は全国放送の番組です。
番組終了後のS N Sなどでも『あの発言はないわ』『初めて見る人だけどこの人とは結婚したくない』というような意見が散見されました。せっかくあなたのことをいろんな人に知ってもらうチャンスなのにそこで潜在的なファンを減らすような失言はとても残念に感じます。以後気をつけていただけると幸いです。

第二にここ最近の交友関係についてです。先日S N SにアップされていたF R T４８の苺野みるくさんとの２ショット写真、少々距離が近すぎないでしょうか？もちろん舞台『マシュマロ乱舞』で共演されているとはいえ現役の女性アイドルと肩を組んだ写真は度が過ぎているのではないか、と考えます。あちらのユニットは『恋愛禁止』をルールに掲げていることですし事実がどうあれ、F R Tのファンの方から「みるくちゃんが若い男に手を出される」という印象を持たれてもおかしくありません。火の無いところには煙は立たないと言います。火種となりうるものは徹底的に排除するべきです。いわれのない中傷で幸助くんが傷つくのは見ていられません。

第三に━━

（略）

最後に、先日の配信で着ていた黄色のセーター、少しデザインが古臭く感じました。せっかく顔が綺麗なのにもったいないなと思います。ちゃんと似合うものを着てください。
今日同封したニットは幸助くんに似合うと思って購入しました。ぜひ着ていただけると幸いです。
これからも応援しております

「こーちゃん、この袋の中のやつ全部捨てていいの？」
「あーいいよ。全部一回ずつ着て写真とったから。みーちゃんが欲しいものあったら中から取っていいよ」
「やだよ。匂わせとか言われんじゃん。しかも全部普通にダサいし。こーちゃんこないだ掲示板に書かれてたよ。『幻野幸助　ファッションセンスなすぎて問題』って」
「全部もらいものだっつーの。はあ、マジでいつも言ってるのに。『気持ちだけで嬉しい』って。こないだなんか事務所に味噌送られてきてさすがにその場で捨てたわ」
「味噌！？やばすぎ」
「ホントみんな応援してますって付ければなんでも許されてると思ってんだよな。応援は免罪符じゃねえっつーの」
分厚い便箋もラメペンで書かれた丸文字も全て一様に紙屑になる。手回しシュレッダーの中にたまったそれらを服でいっぱいのごみ袋の中に加えて袋の口をきつくきつく縛った。応援なんて免罪符でわたしの最愛の恋人を縛る存在のまとう空気さえこの部屋に入れたくなくって。
「燃えるゴミの日っていつだっけ」
「たぶん火曜と木曜」
そんなのもういいよ、というように彼はわたしの手からゴミ袋を奪って後ろからわたしを抱きしめた。仕方ないなあ、と笑ってみせれば唇が重なった。次の火曜がどうしようもなく遠く感じた。

※マチソワ：舞台などの昼公演を意味する「マチネ」（フランス語でmatinee ）と、夜公演を意味する「ソワレ」（フランス語でsoiree ）を繋げた言葉。 “マチネとソワレを続けて観劇すること”を表す舞台用語である