ほかのひとのはなし(短歌16首)



いま旬のびわの写真をあげましたあなたのいいねだけがつかない

わがままはこのままわたしほろぼすのママが言ってたつつましくあれ

目を閉じてこのまますべてわすれたらわたしはせかいのおうさまになる

数センチ先のあなたに手を伸ばす触れたら壊れてしまうと知って

母さんがカバンに詰めた折り畳み忘れたふりして君に駆け寄る

さびしさはぜんぶ地球に置き去ってわたしは星の彼方で眠る

わがままなわたしみないでほしいからさみしいの文字消して眠った

話せなくなるよりましとにこやかにあなたから聞くほかの女(ひと)のはなし

遠き春来ぬと待つ人笑うよに桜の上に積もる純白

さよならも言えず終わるは卒業式お別れさえもなければいいのに

異国より君を運ぶは偏西風懐かしき声春の訪れ

この星にたった二人になったとて二つのマスク一つはきみに


帰り道錆びたブランコふたりのり浅い夢だと笑ってほしい

とっておきおいしいカレーの作り方教えてあげない来て欲しいから

さよならの代わりに贈る花束はB級映画の結末みたい

「ないしょだよ」「ないしょだからね」こそこそとささやくこえはぜんぶつつぬけ


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