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『水曜日が消えた』吉野耕平監督が長編映画制作のきっかけとなったと語る『エンドローラーズ』をみて

現在全国で公開中の映画『水曜日が消えた』。私も先日鑑賞しすっかりその魅力にハマってしまい、映画の余韻が何日も続いています。吉野監督の作り出す世界がなんとも美しく、画面全体に滲み出る孤独な雰囲気の中にも温かさがあり、どことなくホラー?ミステリー?な空気も流れたりしていて。不思議と興味がわいてくる作品だと感じました。その時の感想はこちらに書かせていただいております。お時間ありましたらどうぞ・・。

この作品を観て以来、吉野監督が作り出す世界にもっと触れてみたいなと思うようになり、監督ご自身が長編映画制作のきっかけになったと語る『エンドローラーズ』を観るに至りました。

本作品は若手映画作家の発掘・育成を目的とした文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」の2014年度完成作品であります。あらすじについては映画紹介ページから引用させていただきますと【葬儀屋の中本は、故人の兄で喪主を務める昇からある依頼をされる。それは、「工業用ロボットの金具制作をしていた弟の孫に、弟がどんな仕事をしていたのか知ってもらいたい。ロボットを使った映像を作れ」というものだった。】といった内容の作品です。

わずか29分という短い作品ですが、主人公の成長物語やちょぴりホラーでクスッと笑えるシュールさもあり、監督ならではのアニメーションも取り入れられたり、最後はほろっと泣かせてくる素晴らしい作品です。

またこれは私の勝手な見解ですが・・・『水曜日が消えた』ファン目線でこの映画をみるとさらにワクワクする仕掛けが面白いように出てきているなと思われます。

主人公は前職ではアニメーションか何かの制作をしている会社に勤めていたようですが、ロッカーの片付けもしないままドタバタ退職をしており、円満退職でなかったことを伺わせます。ロッカーに貼られた 片付けろ!! のメモ。この辺りの映像の雰囲気は『水曜日が消えた』にも共通のものを感じてしまいます。ワクワクです。

主人公に葬儀のイメージ映像依頼をしてきた今回のお客様。故人の方の弟ということですが・・・もうこの方の存在がホラーです。これは詳しく言えないというか言わない方が楽しめると思うのですが、ホラーと思わせてホラーじゃないけど結局どっちなの?という微妙なラインが絶妙です。
このホラーなのか?違うのか?というニュアンスが『水曜日が消えた』にもありましたよね。私の見解としてはこの『エンドローラーズ』は隠れホラーだと解釈しています。最後の最後でM・ナイト・シャマランの某有名映画の匂いを感じずにはいられず、意図せずもう一度最初から鑑賞するハメになりました。でも、やっぱりどっちなんでしょう。(色んな方のレビュー検索してみましたがそのことに言及している方はおられず、私の単なる勘違い??)ワクワクは続きます。

そして『水曜日が消えた』でも感じていた、誰かが誰かの事を考え思うということ、他の人からすれば何てことのないことだけどその人個人の存在や思いをどうしても大切にしたいという登場人物の意思や行動が映画のテーマになっているという意味でも共通点を感じます。
この思いは映像を依頼してきた故人の弟さんきっかけで始まり、最終的には主人公自信にも芽生え、映画全体の盛り上がりと共に温かいものに仕上げております。

お葬式の場面にまさかのアニメーションやポップな要素を持ってきた監督のアイディアも逸品で観客を引き込ませる魅力に溢れています。
本作の鑑賞により益々吉野監督作品のファンになってしまいました。これからの作品も楽しみにしております。

皆様も『エンドローラーズ』に是非触れてみては如何でしょうか。