「したいこと」から「みえること」 小学生低学年用の俳句の授業 

松野町での俳句の授業

毎月、愛媛県松野町内の小中学校で俳句の授業をしています。
2018年にいちばん最初の授業をしてからかれこれ6年。
小中学校の授業では、義務教育の9年間で、松野町出身の俳人、芝不器男の俳句を味わえるようになることを目標として取り組んでいます。

その過程で俳句という題材を使って良し悪しを討議したり、作品を推敲したり、表現力やコミュニケーション力が身につくといいなと思っております。

とはいえ、小学生低学年となると俳句をつくるのはとてもたいへん。
まずは定石通り五七五や季語というルールについて説明しますが、おそらく「そういうものがあるんや」くらいの理解ができたら上々ではないでしょうか。そこから実際に「自由に俳句を作っていいよ」というと、たいへんなことになるので、まずは「575のリズムで自己紹介をしてみよう!」とか、「好きなものを紹介してみよう!」といった具合で、五七五のリズム感覚(拍感覚)を身につけるところからスタートします。

この稿の前提として、松野町では毎月俳句をつくるので季語や五七五のルールは1年生でもある程度理解しているところからスタートしています。

五七五のリズム感覚で表現ができる次の段階として、どういう描き方をするとオリジナリティがでるかという内容をまとめたものです。


まずは「したいこと」

はじめにこのプログラムは60分、教室の児童数は15名程度で考えています。もし、45分だと授業で行う場合は、この稿の途中に出てくるトーナメントなど割愛し、児童の作品の中から良いものを紹介するなど内容を工夫する必要があります。

さて、小学校低学年の授業では、いくつか教室のルールを決めます。
ルールを決めるというか、約束で表現を絞らないと例外がたくさん出てしまうからです。例えば次のようなルールを決めています。

○頭の五音はみんな同じ言葉(季語)
○五七五の音数は守る
○季重なりはOK

冒頭に説明するのは「頭の五音はみんな同じ言葉(季語)」「五七五の音数は守る」ですが、担任の先生からよく出る質問として「季重なりはいいんですか?」というものがあります。季語は一句に一個とよく言われるますが、厳密には、季重なりになる句が絶対にダメであるというわけではないのと、「季重なりダメ」と低学年に言ってもちょっと無理があり、厳格にやると確実に創作時間が伸びてしまうため許容します。

まずはじめにその季節のイベントから季語を黒板に書き出す。
たとえば「12月〜1月は何がある」と言って、イベントの頭文字を書いていきます。
たとえばこんな感じ。

○ク(リスマス)
○ふ(ゆやすみ)
○お(おみそか)
○お(しょうがつ)

他にもサンタクロースや年賀状など別の季語が児童から声が上がったら、それも黒板に書いておきます。

次に、黒板に書いた季語で、頭の五文字に使って、残りの十二文字で「したいこと」(黒板に書く)を表現するというワークを10分程度します。

「したいこと」とは「おなじこと」

結論から言うと、この段階で良い俳句はなかなかできません。

例として「ふゆやすみ」で作ったらこんな俳句ができます

ふゆやすみみんなでしたいボールなげ
ふゆやすみみんなでしたいゆきがっせん
ふゆやすみかぞくでいくよゆうえんち
ふゆやすみいとことみたいドラえもん

このあとに俳句トーナメント(一対一で俳句を戦わせる遊び)を行いながら、負けた俳句に感想を述べて返却しますが、まずは「したいこと」というテーマで、五七五の内容のイメージを作っていきます。ここまでが前半戦です。

「したいこと」から「みえること」

前半の俳句を読み終え返却したとに2回戦の俳句を募集します。しかし、「少し次は難しくするよ!」と言って、「みえること」(これも黒板に書く)で五七五を作ろうと呼びかけます。

そのときに、季語の題がいくつもあると子どもは題選びに時間を取られるので、ひとつに絞ります。今回は引き続き「ふゆやすみ」を例にします。
「ともだちとボール投げをしながら何が見えるかな?雪が降っているかな?ボールは大きい小さい?どんな場所でやっている?見えることを書いてみよう!」などいくつか例を出しながら見えることを想像するように誘導していきます。これも10分程度時間をとります。ちなみに前半でのプログラムでも後半でのプログラムでも「1人3句は書いて!」と指示を出します。さて、「したいこと」から「見えること」とテーマを変えると完成する俳句が次のように変化していきます。

ふゆやすみおおきなゆきがふってきた
ふゆやすみかまくらふたつならんでる
ふゆやすみちいさないえをみつけたよ

この授業の要点は大きなこと(抽象的なこと)から焦点をしぼること(具体的なこと)に意識を向けていくということです。

1、2年生の授業は難しいと感じることが多いのですが、手応えがあったプログラムなのでまとめてみました。




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