律新集(令和5年12月号) 姫子松一樹 選


菊池洋勝

蘆刈に持たせる獣除けの鈴
釣果の腹に丸呑みの鰯かな
木犀や特売品の柔軟剤
晩菊の色落ち別にして洗ふ
朝礼の体育座り火恋し
穭田や母を起さぬやうに居る

川嶋ぱんだ

悴んで汽車濡れながらトンネルへ
ストーヴの火の落ち着きぬ昼休み
浅間山 初雪 走る自由な子
冬服を着たプードルが歩いて

常波静

竹馬や薬草ひとつ踏み抜いて
薬瓶振れば貼り付く冷たさよ
周波数ズレてるラジオ開戦日
冬日和少し乾かぬ裏起毛

中川多聞

冷や飯と濃い味噌汁と月の石
極彩色の股引の女児眠そうに
一室の少女の咳の湿っぽく

とこうわらび

冬晴れや接ぎ木の芽だけ残りけり
少女らのマフラー形揃いたる
冬の虹七色の境をなぞる


律新集選評(姫子松一樹)

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