第6回架空選評句会

【はじめに(第5回架空賞の賞品発表!!)】

さて、節目の第5回架空選評句会ではたくさんの投句ありがとうございました!!
【架空賞】に見事選ばれた(僕が選んだ)作品


星歌ふやうに風鈴呼びたる夜  三島ちとせ


を約束通り、俳句擬人化していただきました!

この句は、風鈴と星がうまく共存しています。「星歌ふ」の書き出しが目を引きますが、この句の中で星は背景として役割を果たし、風鈴がドンとそこに存在感を発揮しています。夜に向かって星が(歌うように)輝いていく。そこに風鈴がせせらいで様子がいきいきと想像できます。

この俳句擬人化していただいたのは、「つくえの部屋」の表紙絵でもおなじみの、平山菜々美さんです!!

今回のスポンサーとして俳句擬人化を描いてくださいました!!

ちなみに、平山さんが描いた「つくえの部屋5号」の表紙絵

毛糸帽他人のぶりつこには厳しい 北大路 翼

は、こんな感じでした!!知らない方もいると思うので原画を貼っておきます!

画像1

俳句からキャラクターが錬成されるのはすごく刺激的で俳句の射程を広げてくれます。

さて、前置きが長くなりました。

三島さんの作品の俳句擬人化を発表したいと思います!!


三島さんの俳句擬人化は・・・・




いちばん下の告知欄に掲載します!!!!


ぜひ!先に今回の選評を読んでいってください!!

【今回のお題】

大きな無花果が成っていて紫色に熟し、甘味が強そう。その無花果をいきなりちぎって貪り食う。その指が短い。

今回のポイント
①熟した無花果を提示し、大胆に食す光景
②無花果を食べたことにより、指の短さが強調される。

さて、今回の選評は細かな指示があり、かなり制約が多く難しかったのでは、ないでしょうか。



今回の選評は、昭和を代表する4Sのひとり、山口誓子『鑑賞の書』にある山口誓子作「無花果を食ふ百姓の短き指」の自句自解を参考に作りました。この『鑑賞の書』は、すごーーーーく参考になる本です!
読めば、必ず鑑賞力の一助になります!

川嶋ぱんだの鑑賞方法は、この山口誓子さんが用いている鑑賞の手続きを参考にしています。この方法だと解釈、鑑賞が大きく逸脱せず、俳句を読むチカラがメキメキ付く方法です!山口誓子『鑑賞の書』をよければ鑑賞する際の参考にしてください。

この方法に対しては、かつて議論があったのでそのときの記事を下記に掲載します。

【さっそく選評】

楽園の無花果蛙男喰ふ 寺津豪佐
楽園の無花果を蛙男が喰っているという俳句。楽園という平和そうな世界で不格好な蛙男が無花果を食べています。楽園の豊かさと、蛙男が生まれる不気味さの両方を無花果が内包している感じがします。句の出来は一番よかった印象でしたが、お題の架空選評と照らし合わせると少し違うかなという印象でした。

無花果や食い込む指を見失う 菊池洋勝
「無花果や」で切っていますが、その後に意味が繋がる切字ですね。指が出ていることは指を意識していること、また無花果が熟していることが分かりGOODなポイントです。ただ、短さまで描かれているかというとそうではない印象です。

稚児のごとき指に無花果の無残 潤目の鰯
子供のような指に無花果が無残な状態であるという俳句。稚児のごときなので稚児ではないから、大人だろうと推察できます。親切に読むと大人が無花果を食べる時、子供のように無残(手を汚しながら)食べるということになりそうですが、やや構成が捻りすぎていて読後感が軽薄になってしまいます。

汚き爪熟無花果の低き枝 六文風鈴
汚い爪を提示させることで、子供の短い指を狙ったのでしょうか。そこで言い終わって、無花果の低い枝とさらりと流した光景は、頭のなかでぼんやりと光景を描けるものの、そこから何を読み取っていいのか分かりません。「汚き爪」というなんだろうと思わせるポイントに対して、それ以降の表現で化学反応がありません。

無花果の甘露甘露とハクビシン 夏銀
ハクビシンが甘露甘露と喜んで無花果を食べている様は可愛いいですね。
短い指は句のなかに内包されているかもしれませんが、お題のような選評を得ようとするには、指がこの句では焦点になっていません。
また、言いたいことが出すぎている点や「と」のつなぎ方が気になりました。もう少しモノのつながりや読者の読みを信用して作ってもいいのかなと思いました。

【架空賞な一句】

無花果の乳吸う母指の短さよ みーのすけ@猫愛すクリーム
「母指の短さ」と書いていることで今回のお題の眼目が指の短さであることを、しっかり読み込んで意識されている印象を受けました。お題の原句に近くお題の俳句を再錬成された感覚も少しありました。この句のように、ガッと指でしっかりと掴めば、無花果の熟した感覚を強く意識させます。なので、無花果の尖りまで表現しようとして、無花果を乳に見立てない方がよかったかもしれません。


【投句一覧2020.9.15】

楽園の無花果蛙男喰ふ 寺津豪佐
https://twitter.com/pbkk05JZJOmL3jb

無花果の乳吸う母指の短さよ みーのすけ@猫愛すクリーム
https://twitter.com/haikuneko1119

無花果や食い込む指を見失う 菊池洋勝
https://twitter.com/kikuti29

稚児のごとき指に無花果の無残 潤目の鰯
https://twitter.com/urumenoiwashi

汚き爪熟無花果の低き枝 六文風鈴
https://twitter.com/Shinnsyutu2020

無花果の甘露甘露とハクビシン 夏銀
https://twitter.com/ctMkUQaJ7UUKGcN



【次回のお題】

「大切に」は作者の想像。猫がこれを「大切に」しているかは人間には察せるところではない。「大切に」という副詞は、即物的に描きだすものではない。

【告知】

おまたせしました!!

星歌ふやうに風鈴呼びたる夜 三島ちとせ

画像2

風鈴と星という難しいふたつの要素が一体になったキャラクターに仕上がっています!!

平山さんの俳句擬人化は3500円〜制作いただけるとのこと!

お問い合わせは下記のツイッターへ


 そして樹色から、【お知らせ】
樹色が月額399円と参加しやすくなりました!
毎月2回のオンライン句会に原稿依頼も多数!
ここでしか体験できない実験句会も充実!!
この機会にどうぞご参加ください


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