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越中五箇山「麦屋まつり」

越中五箇山(えっちゅうごかやま)に伝わる民謡「麦屋節」をご存知でしょうか。
「麦屋節」を説明する前に、越中五箇山について簡単に説明を。

まず、越中の国は現在の富山県で、ざっくり言うと、日本の真ん中あたりに位置します。五箇山は、富山湾に注ぎ込む庄川(しょうがわ)の上流、奥深い山間にあって、合掌造りといわれる急勾配の茅葺屋根の家々が立ち並ぶ集落は、日本の原風景といわれています。
1995年には、隣接する岐阜県の白川郷とともに「白川郷・五箇山の合掌造り集落」としてユネスコ世界文化遺産に登録されました。
合掌造り集落としては、白川郷の方が大きく、観光地として知名度が高いので、合掌造り集落の景観を楽しむだけなら、白川郷のもう一つ山の向こうにある、五箇山まで足を運ばなくてもよいのかもしれません。

しかし、しかし、しかし、五箇山の圧倒的な魅力は民謡の宝庫であることなのです。五箇山民謡というと、日本最古の民謡といわれる「こきりこ節」が有名ですが、私の推しは断然「麦屋節」です。

「麦屋節」は五箇山に伝わる「平家の落人の伝説」と深いかかわりがあります。今から約800年前、日本では平家と源氏、武士の二大勢力が覇権を争い戦いました。世にいう「源平の戦い」です。結果、富と権力をほしいままに、栄華を極めていた平家が破れ、滅亡しました。
(余談ですが、2021年に平家の栄華と滅亡を描いた「平家物語」がアニメ化されましたね)

平家の落ち武者の中には、五箇山に逃げ延びた者もあり、その平家の落ち武者たちの中で生まれたのが「麦屋節」ともいわれています。
麦屋節の笠踊りでは、踊り手の男性は黒紋付に袴、白のたすきを掛け、刀を手挟み、角笠を手に横一列に並びます。
お囃子の三味線がリズムを刻み、四つ竹、締め太鼓が後に続くと、胡弓が旋律を奏で、歌い手が一節唄ったところで、踊りが始まります。

踊り手たちは正面に持った笠を手前から向こう側へ、向こう側から手前へとくるくると回転させ、そして止める。また回転させる、止める。
笠を手元で操りながら、大きく弧を描き、素早く構える。
端正で切れのある動作と胡弓の哀切漂う旋律と、平家の悲哀がこもる歌詞が、胸に迫ります。

今では「麦屋節」もYouTubeで動画を見ることができます。しかし、本当の魅力は、やはり、ここ五箇山で見てこそわかるという気がします。
「麦屋節」を五箇山で見られるのはが毎年9月23日に行われる「五箇山麦屋まつり」で、五箇山・相倉(あいのくら)集落の下梨地主(しもなしじぬし)神社の秋の例祭にあたります。


日中は、夜の総踊りに備えて、観光客の皆さんに踊りの講習会もしています。祭りの終わりには、地元の人といっしょに踊ることができるでしょう。

五箇山はそこに暮らす人がいる、今を生きる文化遺産なのです。
五箇山には民謡のほかにも、見どころがたくさんあります。五箇山豆腐、そば、地酒、五箇山和紙・・・

五箇山に暮らす人たちに配慮をしつつ、この秋、越中五箇山を堪能する旅に出てみるのはいかがでしょうか。

読んでいただきありがとうございます。文中の写真は、南砺市の観光情報サイト「旅々なんと」より引用しました。
https://www.tabi-nanto.jp/

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