ブランクーシ

ブランクーシの「接吻」を観に行った。もともと、図書館で図録をみて知っていたが、白い……と思わず見惚れてしまった。立方体で発泡スチロールみたい。くっついた顔がおもしろく、つながれた手の指は思ったより小さく見え、カップルの手のつなぎ方というよりは、まるで胎児の右手と左手に分裂するまえの一つの手のように見えた。そして人間の体の中でたくさんの機能を要する「手」がちいさく表されることで、像は静かにみえる。そういえばジャコメッティが「エクリ」のなかで、ブランクーシの彫刻が錆びたり傷がついたり壊れたりしたらどうなるだろうか、と問いかけている。そんなジャコメッティの心配は無用で、白く輝くブランクーシの接吻。
偶然、同じスペースにジャコメッティの彫刻も展示されていた。
ちなみにぼくはジャコメッティの彫刻を横から見るのが好きだ。正面で空虚さを味わったあと安心するから。そういうのって、ある。

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