Daily Life - vol.017 - 夏夜に

とまり木にしがみつく
ゆだねる

みんなが強くみえている
みんなに強くみられるが
ほんとうはわたしも脆く

だれかが到達したそれは
わたしの到達点ではないのに
なんだか輝いていて
それが欲しくて

それが欲しいと思うわたしは
なんて卑しいんだと

わたしはわたしの輝きを見て
わたしの手で磨いていくんだ
大切にするんだとしてもなお

なぜそんなにも比べるのか
いちばん比べているのは
自分自身だと

ぼうっとしていて
不注意で切れた指先
止まらぬ赤色に
応急処置をした日
ひとり

不意に止まらない水色の
その間に流れつく言葉を
すべて眺めていてくれた
ひとりじゃない
ふたりだった


それは今まで母だった
それは今までカウンセラーさんだった
それは今まで友達ではなかった

友達は友達だからこそゆだねなかった

友達にだって色々あるから
友達とできるのは明るいほうや
おたがいの好きなほうはこっちだって
おたがいに思い出せることだから

それは今まで自分自身だった
それは過去に恋人ではなかった

でもやっときみに

自分自身に話すときと同じくらいの
言葉の数と言葉の種類とで

みんなに渡すような
綺麗なものじゃなくて
もっと自然のもので

ぐしゃぐしゃな
葉っぱたちだったと思う

それがまた堆積して
きみがいて堆積することができて
森の栄養になったのだと思う


とまり木の蝉が
あんなに鳴いていられるのは
だれかと居たのだと思う
森の栄養をもらったのだと思う

ひとりでじっとしているようで
ちゃんと誰かと居ることを
ひとは虫は森はしているんだと

そう思った


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