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「アイビールック」に「T.P.O」、一時代を築き上げ″メンズファッションの神様″と呼ばれた男

皆さん今では当たり前に使われる【T・P・O】というある英単語の頭文字をとった言葉。
「TPOを弁える服装」なんて使われ方をよくしますよね。

「Time/時間」
「Place/場所」
「Occasion/場面」


これらの頭文字を取った略語ですが、実はこれ、和製英語であり海外で使われることは全くないのです。

この言葉の生みの親は、アメリカで生まれた後に日本で独自の文化として形成されていったアイビールックを築き上げた「VAN」というブランドのデザイナー、石津謙介氏。
″メンズファッションの神様″と呼ばれた彼の「アイビールック」というスタイルや「T.P.O」をはじめとする様々な言葉を生み出した逸話をご紹介します。

【ファッション用語の発信力】


「T・P・O」
この言葉が世に広まりだしたのは、今から遡ること約60年前の東京オリンピックが開催された1964年のこと。
戦後の復興をアピールする一大イベントであり、日本及びアジア地域で初めて開催されたオリンピックということで世界からの注目を浴びていました。
しかし当時の日本には時と場面によって服装を変えるという風潮はなかったため、海外旅行者に対して恥をかかぬようその時々によって服装を変えようとする啓蒙活動が行われました。
その時に使われるようになったのがこのTPOという言葉なのです。

その方にもスウェットシャツを″トレーナー″、バラクータやフレッドペリーなどで知られるハリントンジャケットを″スウィングトップ″と呼称したり、Tシャツやキャンペーン、メンズショップなんて言葉を日本に浸透させたのもVANというブランドの功績。
メンズファッションの神様と呼ばれる由縁の一つです。

【アイビールック】


元は1950年代にアメリカで生まれたファッションスタイルを指し、1954年にアメリカのハーバード大学やコロンビア大学など8校のフットボール連盟「アイビーリーグ」が結成された際に彼らが好んだファッションにちなんでアイビールックと呼ばれるようになりました。

オックスフォードのボタンダウンシャツにレジメンタルタイ、紺のブレザーを羽織り下はコットンのホワイトやベージュのチノパン、足元は白のロングホーズソックスにペニーローファーというのが個人的に思い描く理想的かつ定番のコーデ。

そうそう、可愛らしいレタードのカーディガンも忘れてはいけません。大きなアルファベットのワッペンが付いた洋服をみたことがあるかと思いますが、あれはそれぞれの学校の頭文字をとったもの。アイビーリーグに選ばれた特別な選手たちが着用を許されたという忘れてはならないアイビールックの定番です。

Photofest/AFLO

1951年創業の「VAN JAC」はこれを日本に持ち込み、身長や体重・骨格など全く体型の違う日本人にもこれが合うようにアレンジし世に送り出しました。

60年代半ばにはアイビールックに身を包んだ若者達が銀座のみゆき通りに集まり、VANの紙袋をひっさげ闊歩していたといいます。これが世にいう「みゆき族」であり、当時の日本のファッション文化を代表する流行の先端をゆく人々でした。
その後、彼らは前にご紹介した記事にあるように「カラス族」としてその時代の象徴となっていったのです。
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その後もしばらく日本のファッションシーンの最先端を走り続けたVANですが、目まぐるしく移り変わるファッション文化に対応しきれずに莫大な在庫を抱えてしまい1978年に倒産。
「デザイナーとしては優等生であるが経営者としては落第生である」とレッテルを貼られた石津謙介氏は2005年、93歳でこの世を去りました。

VANのロゴには小さく添えられる一文があります。
「for the young and the young-at-heart/若者と若い心を持った人たちのために」

最後までファッションを愛した彼の死装束はISSEY MIYAKE/三宅一生のシャツだったといいます。

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