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緩和ケアとは?(3-1)

《一般の方向け》《医療従事者向け》
● 緩和ケアの定義をさらに細かく読んで、緩和ケアをもう少し掘り下げる。
 以下では、緩和ケアの定義文をもう少し細かく読んで、その特徴をさらに掘り下げて理解したいと思います。

*2002年のWHO緩和ケアの定義 *
緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、 痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである。

 この定義文のはじめに書かれている緩和ケアの対象は、生命を脅かす病となっています。ここでで、単なる病(やまい)ではなく、「生命を脅かす」という修辞句をつけていることが注目点です。
 「生命を脅かす病」とは、「死」を意識させる疾患と言い換えられます。現代ホスピスケアが始まった当初は、その対象が末期がんでした。「死」を意識させる病の代表選手です。わたくしがものの本から得た知識だと、当時の病院等では、根本的な医学的治癒が見込めなくなった患者は、治療の対象から外れるだけでなく、ケアの対象からも外れてしまっていたようです。現在の医療でも多分にそういう場面に遭遇しますから、その頃がどんな状況であったか何となく想像ができます。
 シシリー・ソンダー女史の素晴らしいのは、医療関係者が目を向けなかった末期がんの人々にケアの対象として光をあてたところにあります。「生命を脅かす」という文言は、ホスピスケアや緩和ケアのルーツとなる魂を忘れないためにとても大切な一言です。

 今の日本でも、進行がんの緩和ケアは、メインテーマであり続けています。それは、やはり進行がんという病気がそれだけたくさんのことを人間に投げかけているからだと思います。
 一方、日本緩和医療学会の学術大会において、がん以外でよく取り上げられている疾患は、神経難病と各種臓器不全です。神経難病で話題によくあがるのはALS(筋委縮性側索硬化症)です。肺、心臓、腎臓、肝臓などの臓器不全に至る原疾患としては以下のものがあげられます。

呼吸不全:慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺結核後遺症、肺線維症など
心不全:虚血性心疾患、弁膜症、心筋症など
腎不全:糖尿病性腎症、腎硬化症、慢性糸球体腎炎など
肝不全:ウイルス性肝炎、アルコール性肝障害

 上にあげた疾患のすべてが、臓器不全(各臓器の働きが身体全体を支えるのに不十分な状態)に至るわけではありませんが、中には進行性のものがあり、その場合は「生命を脅かす病」と言えます。

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