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【有料記事】Die Reise geht weiter.(続)【「堕ちた神父と血の接吻」番外編】

※「堕ちた神父と血の接吻」後日譚です。
三部作の二話目になります。


 翌日、廃坑内の整備をヴィルに頼み、代わりに私がエルンストの元へと赴いた。
 目立たないよう髪はヴィルに結い上げてもらい、帽子の中に隠せるようにしておく。散髪も提案したが、「あー……短髪もそれはそれで……いやでも……うーーーーん」とひとしきり悩まれた上で反対された。

 ヴィルは私が人里に行くことを心配していたが、こちらも落盤が心配なので、しっかりと取り決めておく。「お互い、絶対に無茶はしない」……と。

 もう、自らを蔑ろにはできない。
 私達は、二人で支え合って生きると決めたのだから。
 ……犯した罪も、血塗れた過去も、生きて償うと決めたのだから。

「ヴィルさん? 確かに探してる人はいたんだけど……賊だから探してるって感じじゃなかったよ?」

 エルンストに確認すると、そんな答えが返ってくる。
 ……ヴィルが後ろめたさや過去の経験から悪い方向へ考えてしまった可能性は十分にあるが、エルンストが世間知らずなのも事実だ。安心するには早いだろう。

「旅芸人って言ってた。チラシも貰ったよ」
「旅芸人? なぜ、旅芸人がヴィルを探しているのだ」
「さぁ……。事情が分からないし、色々うやむやにしておいたけど……。ただ……『亜麻色の髪に茶色の瞳で20代半ばのヴィルヘルム』って、ヴィルさん以外に有り得る?」
「……それは……」

 確かに、特徴が当てはまりすぎている……とは思ったが、ふと違和感に気付く。

「……? いや、待て。ヴィルヘルムだと? 確かに、そう聞かれたのか?」

 ヴィルは、自らのフルネームを覚えていない。
 確かに、ヴィルとつく名は「ヴィルヘルム」である可能性が高いのは事実だが、ヴィルフリートやヴィルマーの可能性もあり、ヴィリバルトやヴェルナーを聞き間違えた可能性も十分にある。

「うん。ヴィルヘルムって言ってた」
「……。チラシを貰ったと言っていたな。見せてもらって構わないか」
「良いよ! 一緒に見に行っても良いし」
「……いや、共に見に行くなら、イルゼさんとだな……」
「あ、そっか。イルゼさん、こういうの興味あるかなぁ」

 しかし、この二人はいつまでも夫婦らしくないというか、なんというのか……。
 とはいえ、どちらもかなりの変わり者だ。……愛の形は人それぞれということだろう。
 ……まあ……エルンストのきょうだい愛も、イルゼの奔放さも、それ自体は決して悪というわけではないのだが……自由すぎるのも困りものではある。
 これはあくまで風紀への懸念であり全くもって嫉妬しているわけではないが、ヴィルも口説かれたと言っていた。
 ……快楽に堕ちた私が言えたことでもないが、節度というものも、ある程度は大事ではないだろうか。

「そういえばコンラート兄さん、義手は付けないの? ずっと片腕じゃ大変でしょ」
「……両腕があれば、誰かを傷付けかねない。今は、これでいい」
「そっか。……やっぱり、兄さんは優しいね。でも……」

 エルンストは何かを言いかけたが、その言葉はけたたましい泣き声にかき消された。
 エルンストは慌てた様子で別室の方を見やり……

「あっ、ご、ごめん! フリーデが起きたみたい! 今日は僕が見るって約束してたし、行かないと……!」

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