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※R18注意【有料記事】ある農夫の恋 part.5【「堕ちた神父と血の接吻」番外編】

 時が経ち、季節が過ぎる。
 コンラートは少しずつ、本当に少しずつ、回復していった。
 なかなか目は見えるようにならないけど、見えないなら見えないなりに、作物を荒らすネズミや鳥を捕まえるのが上手くなった。耳で聴いて、体温を感じ取って何とかするらしい。普通にすごいと思う。

 お袋に「猫みたいだね」と言われて、少し不服そうにしていたのが可愛くて、ベッドの上で「猫みたいですね」って言ったら、顔を真っ赤にして怒られた。
 オレたちの関係はもう親公認だから、隠す必要も特にない。……あんまりうるさすぎるとお袋にどやされるけどな。

 そんなある日の朝。
 硬いノックの音が、家の戸を叩いた。

 親父が玄関を開けると、長い赤髪の男が「……失礼」と言って、中に入ってくる。後に続くようにして、金髪の男も現れた。
 二人ともが胸に十字架を提げていて、神父服より少し簡素な、黒い修道士服を身につけている。赤髪の方は険しい顔つきをしているけど、金髪の方は何が楽しいのかヘラヘラと笑っていた。

「ち、ちょっと! 何の用だい、こんな朝早くに……!」

 お袋の抗議に、赤髪の男は「仕事です」と答え、淡々と続けた。

「ここに、『吸血鬼』がいるでしょう」

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