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※R18注意【300円記事】Il gatto nero e la rondine, o Due gatti neri【「墜ちた将校、恩讐に啼く」番外編】

 外は、雨の音が騒がしい。

「ったく、身体冷やしたらどうすんだ」

 私の濡れた髪を大雑把に拭き終わったところで、くすんだ金髪の男はため息をついた。

「……で、どうすんだよ、それ」

 腕の中で、毛玉の塊が「にゃあ」と鳴く。
 胸中で複雑に絡み合う感情とは裏腹に、冷たい雨に打たれた身体は、小さな命の温もりを慈しんでいた。

「窓から姿が見えて……放っておけなかった」
「フェルドがか? 珍しいな。そんないい子ちゃんだった覚えはさっぱりねぇぞ」
「……おい。私をなんだと思っている」
「少なくとも、他人に興味がねぇヤツだってのはよく分かってら」
「…………」

 否定はできない。
 他人が何を思おうが、どう生きようが、私の知ったことではない。相手に対して、何か「果たすべき義務」が生じた場合はできる限りの努力をすべきだとは思うが……まあ、それぐらいだ。

「首輪がある」
「だろうな。人にもよく慣れていやがる」
「迷い猫か、あるいは……捨てられたのか、だ」
「……。そうかい、気になっちまったんだな」

 ジヤグアーロは全てを察したのか、それ以上を追求することはなかった。

「ともかく、先にシャワー浴びてきな。まずはお前から可愛がってやるから」
「私が君を欲しているような言い草だな。随分と自分の魅力に自信があるらしい」
「で、実際のところはどうなんだい?」
「……否定はしない」
「可愛いねぇ」
「黙れ」

 軽口を叩く相手に猫を預け、シャワールームの方へと向かう。「でもお前の方が可愛いかもな」「にゃあ」などといった戯けた会話(?)が背後から聞こえてきた。

「……っ、また、疼きが……」

 下腹部を手で押さえるが、内側で「それ」がきゅんきゅんと騒がしいほどに主張してくる。
 ……腹立たしいことに、私の肉体は間違いなくジャグアーロを求めていた。

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