見出し画像

フェス出展者さんに聞く⑥行動の理解に「正解」なんてない[会津大学大学院 助川拓哉さん]

こんにちは!ライターのかのです。
2023年10月に開催され大盛況のうちに幕を閉じた「教えて!赤ちゃんフェスティバル」。参加された赤ちゃん、ママパパには楽しいという感想をいただきましたが、では展示をしてくださった出展者の方は何を得ることができたのでしょうか?そもそも、こんなふしぎなイベントに、みなさん、どんなモチベーションで向かい合っていたの?その感想を出展者の方に伺います。

さわると音がなるキーボードにわくわく!

会場で赤ちゃんが熱心に触っていたのが、キーボードを模したようなもの。

端っこをガジガジ噛んだり、ママパパがいつもしているように、パタパタ手で触ってみたり…。

近くにカメラが設置されていて、置かれたiPadでは「赤ちゃん目線」の映像が表示されています。

このキーボードのような展示「赤ちゃんってどこを見てるの?お気に入りのキーボードを教えて!」を持ってきてくれたのは、会津大学大学院修士二年生(当時)の助川拓哉さん。唯一学生という立場で、個人的に参加してくれました。

ワークショップに圧倒されて、火が付いた

ー助川さんは学生さんだそうですね。そもそもどういったきっかけで赤ちゃん研究所さんとお知り合いになられたのですか?

助川:2022年11月に、会津で開催された「わたしたちのウェルビーイングのためのハッカソン」が開催されました。そこに僕はエンジニアとして参加していて、赤ちゃん研究所さんと出会ったのがきっかけです。

そこでご縁をいただいて、12月には神田のWeWorkまで足を運んで、はじめてワークショップに参加させていただいたのですが、これにただただ圧倒されまして。

ーどのあたりに圧倒されたのでしょうか?

助川:そこに「泣いても笑っても全肯定」という空間がいきなりできていたことに感動しました。赤ちゃんはとにかく自由に過ごしていて、その赤ちゃんを観察して「君は〇〇なんだね」というようにコミュニケーションをとっている姿も新鮮でした。僕は個人的にこれまで赤ちゃんに触れる機会が多くあったというわけではないのですが、これは保育園とも違う空気なんだろうなと感じました。

そこで僕にも火がついて、何かしたいという気持ちになったんです。赤ちゃん研究所さんからも、毎月きてもいいよとフランクに声をかけていただけました。

「次は赤ちゃんにこういうことを試してみたいので、こういうものを持って行ってもいいでしょうか?」というように、僕が勝手に「作って持ち込む」という関係で、2023年はほぼ毎月ワークショップに参加させていただいていました。行くからには手ぶらでは行きたくないなと思っていて、何かしら毎回制作物をアップデートし続ける挑戦という側面もありましたね。

ー今回はどうしてキーボードに着目したのですか?

助川:ワークショップで、赤ちゃんが遊んでいたおもちゃの中に、キーボードがありました。「家でパパやママが触っているものだね」というようなことを親御さんが言いながら、子どももとても興味深く触っているという様子を目にして興味を持ち、「赤ちゃんは、キーボードのどこが好きなのか?」を探るツールを作ることにしたんです。

「赤ちゃんにとってキーボードって何だろう?」と考えたときに、僕は「押したらへこむ」「かちゃかちゃ音がする」「触るとママやパパが飛んでくる」のがポイントなのではないかという仮説を立てました。それを今回の展示を通じて検証してみようと考えたのです。

そこで、キーボードを模した発泡スチロールに、MESHというセンサーを仕込んで、ひっくり返ったり力が加わると近くに置かれたiPadから光や音が鳴るという仕掛けを作りました。同時に、赤ちゃんの近くに設置されたカメラが、赤ちゃんの目線をとらえ、近くに置かれたiPadに、赤ちゃんの目線の画像も表示されます。

行動に対する理解に「正解」はない

ー実際にイベント当日はどんな気持ちで迎えられましたか?

助川:「教えて!赤ちゃんフェスティバル」は、普段参加するハッカソンとはまったく違った空間で、そういった場所で、赤ちゃんや親御さんに、自分が作ったものを見てもらえることに、単純にわくわくドキドキしましたね。

ー当日、助川さんのプロダクトに対する赤ちゃんの様子はいかがでしたか?

助川:赤ちゃんにもいろいろタイプがあって、キーボードに貼られているシールを熱心にはがして遊ぶ赤ちゃんもいましたし、角をぺろっと食べる子も、たくさんたたく子もいました。同じものを同じように渡してみても、触る方向が違いますし、そもそも触ろうとしない赤ちゃんもいました。

ーフェスを通じてどんな気づきがありましたか?

助川:僕たち学生は、行動に対する理解に対して何か一つの「正解」を求めてしまいがちですが、そこに正解を求めてはいけないなと思いました。

ボタンをどれぐらいなめるのか?とか、どれぐらいたたくのか?とか、何か仮説をたてて、それが本当に検証できるのかというと、そんなにストレートにわかるものではないということが実感できました。これは単純に「いい悪い」の話ではありませんし、なかなか稀な体験だったと思っています。

それでつい深く悩んだり、考えこんでしまうこともあるのですが、そういうときに赤ちゃん研究所のメンバーさんが、観察メソッドに基づいて「これってこういうことかな?」「こういうことじゃない?」というアドバイスをくださったのは、とてもありがたかったですね。

今回の展示は、これまで培ってきた技術をいろいろと使ってみた感覚があるのですが、大切なのは技術力よりも「何を観察したいのか」とか、「引き出すきっかけ」の方が大事なんだなと。これからのものづくりの中では「引き出し方」のようなものを、もう少し工夫して設計していきたいですね。

ー助川さんは春から社会人になられるということで、赤ちゃん研究所と今後どのような関わり方をなさりたいと思いますか?

助川:赤ちゃん研究所のワークショップは、2022年12月頃からスタートして、少人数で月1回淡々とやっています。これは急に大きくはならないだろうけれども、確かに続いていく感覚があります。同時に、このワークショップが少しずつ新しくなっているのも感じていて、今後何か規格化されるなどして、進化するのかも…というところを楽しみに見ていきたいですね。

それと、今回のフェスに個人の学生という立ち位置で参加したのは僕だけなのですが、今後、企業・教育機関だけでなく、第三のつながりのようなものができないかということにも、期待しています。

ーパパママでも、企業や教育機関でもない、赤ちゃん研究所とのつながり方があっても面白いのかもしれませんね。赤ちゃん観察メソッドを教えてもらいつつ、ウェルビーイングな生き方を、一緒に掘り進めていくイメージでしょうか。今日はありがとうございました。

(所属は2024年1月の取材当時のもの)
(まとめ、聞き手:プレーンテキスト 鹿野恵子)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?