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看護助手さんがいてこその

先週まで3回に渡って看護師さんについて記事を書いた。

看護師さんのことを書くとき、私は密かに心の中で看護助手さんのことも思い出している。いや、別に密かでなくても良いんだけども。

皆さんも入院していると知らず知らずのうちにお世話になっているであろう看護助手さん。
今回は、そんな一般的にはあまり注目されていない看護助手さんについて書きたい。

看護助手は忙しい

厚生労働省は、看護助手について次のように定義しているそうだ。

原則として療養生活上の世話(食事、清潔、排泄、入浴、移動等)のほか、病室内の環境整備、ベッドメーキング、看護用品及び消耗品の整理整頓等の業務を行う。

看護師になるためには国家試験に受からなければいけないが、看護助手だと資格は不要となる。
看護助手は看護師の仕事がスムーズに行えるようサポートして、患者の身の周りの世話をする。
ただし、一切の医療行為は認められず、採血や点滴等の医療行為はできない。これが看護師との大きな違いといえるだろう。

具体的な仕事の内容を(私が見てきたもので)言えば、

患者の体重測定、
患者の尿量測定、
患者の検査や処置の際の移動介助(検査室や処置室まで車いすで連れて行ってくれる。ストレッチャーのときももちろんある)、
入浴介助やまだシャワーを浴びる許可が下りてない患者への頭髪洗浄(シャンプーやコンディショナーをガシガシしてくれる)、
清拭(よくこんなタオル持てるねと思うほどの熱々タオルを使って拭いてくれる)、
患者の給食配膳、及びその給食をどのくらい食べたかのチェック、
患者のベッド脇に設置しているごみ箱のごみ回収、
退院した患者のベッドメーキング(専門のスタッフがいるのだが、曜日によってはお休みとなり看護助手さんの仕事となる)、
患者の部屋移動の介助(患者はベッドに乗ったままの状態で運んでくれる)、
入院してきた患者に対する備品の使い方レクチャー
……などなどなどなど。

病棟に配置されている看護助手さんの人数は、看護師さんに比べて圧倒的に少ない。
私の感想としては、いつの時代もいつの病院のどんな病棟であっても、看護助手さんはちょっと尋常じゃない忙しさだ(看護師さんももちろん忙しいよ)。

看護師じゃないよ、看護助手だよ

看護助手さんは看護師さんとは違う制服を着用していて、病院によって黄色だったりピンクだったり様々だ。

とはいえ制服の色が違うだけなので、なかなかその差はわからない。

患者さんの中には
「看護師さん、この点滴なんかおかしいねんけど…」
と看護助手さんに言って
「ごめんなさい、私じゃできないので看護師さんに言いますね」
と返事をされると
「なんや、あんたできへんのかいな」
と少し怒る人もいる。
患者さんとしては、今すぐにでも何とかしてもらえるつもりで声をかけたのだから、苛立つ気持ちがわからなくもない。
ただ、看護助手さんは己の仕事を全うしているだけなのだ。苛立ちをぶつけられても困るだろうなとそばで見ていると感じる。

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看護助手さんが「看護師さんを呼ぶ」ことはとても多い。

例えば私の場合、検査室への移動は車いすを使う。
で、その際に状態が悪いときは酸素を吸いながら行くのだけど、車いすの後ろに酸素ボンベを積む行為までは看護助手さんができる。
ところがそのボンベの栓を開いて実際に酸素を流すことは看護師さんでなければ行えない。
酸素ボンベの栓を開く(酸素を出す)ことは医療行為なのだ。

ということで、ナースコールを押して
「ぱきらさんレントゲンです、酸素お願いしますー!」
と看護師さんを呼ぶことになる。
看護師さんがすぐに来てくれるときは良いのだが、忙しくてなかなか来られないことも少なくない。
正直、とっても時間がもったいない。
もういっそ、私が栓を開きたいくらいだ(しないけど)。

仕方のないこととは言え、もどかしくなるときもあるだろうと想像する。

看護助手さんが検査室に連れて行ってくれるとき、その車いすを押すスピードがめちゃくちゃ速い人がいる。とにかく足が速い。
向こうからくる患者さんや看護師さんをスイスイと避けるさまは、ついこの間流行った(?)「密ですゲーム」のよう。
普段患者が通れない「関係者以外立ち入り禁止」区域を駆使し(本来はダメなんだと思うけど、ショートカットのために使う人が多い)、普段見られないところが見られて私はあの移動時間が楽しい。

「〇〇さんが万歩計つけてたら、毎日すごい歩数でしょうね」
と聞くと看護助手さんは
「一万歩は軽いですよ」と教えてくれる。
そうだろうなぁ、あんなに動き回っているのだから、という感想しかない。
きっと他の人たちも同じだろう。
でも、そのうちその歩数を見るのが嫌で(すごい歩いてるなと実感したくないとか)、万歩計をつけなくなるらしい。

看護助手さんの運動量は半端ではない。

違うからこそ

看護助手さんは給食配膳を行う際に毎回患者の名前を確認する。私がお世話になっている病院では、その際毎回生年月日も確認する徹底ぶりだ。
そして彼女たちは病棟内の全てと言って良いくらいの病室を何度も巡回するので、自然と患者の名前を早く、的確に覚える。
看護師さんはどうしても担当の患者以外はなかなか名前と顔が一致しないようなので、この点は看護助手さんってすごいなぁと感じている。

そんな看護助手さんたちは、朝ごはんを配りながら
「おはようございます。今朝は冷え込んだよ」と教えてくれるし、
「え?今日から外泊?良かったねぇ」
などと声をかけてくれる。

ちょっと時間にゆとりがあるときは、用事をしながら(例えばごみを回収しながら、とか)少し話をする。

私が「レンタルのパジャマ、前と違う…」と言えば
「経費削減で外注にしたのよ。レンタル料高くなったでしょ」と教えてくれ、

毎回とんでもない量の白米(小盛に変更してもらっても量が多いうちの病院)を眺めてため息をついていると
「良いのよ良いのよ、残しちゃえば」
と言ってくれる。

看護助手さんは私の病状などを詳しく把握はしていない。
おそらく
「循環器内科に入院した40歳代の女性、内科的治療でどうやら長引くらしい」
というような軽めの認識だ。

だからこそ、看護師さんとはまた違う会話ができるし、面白い。

看護助手さんたちは、入院期間が長引けば大変そうだなとは思ってくれているようだけど、特に踏み込んでいろいろと聞いてくることはない。
こちらの体調うんぬんとは関係ない話をポツポツするだけだ。

ずっと病院にいるとどうしても自分の体調についてばかり考えてしまうが、看護助手さんの、その医師でも看護師でもない距離感が助かるときがある。

もちろん私も看護助手さんも人間なので、合う合わないがある。

なんだかいつも仕事で手一杯で、
「あ、今日めちゃくちゃ機嫌悪そう」
と、失礼ながら見ていてわかる人だっている。
そして全く会話がない。

でもそういう人は看護師さんの中にもいるし、何も看護助手さんだからではない。

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私の個人的感覚として、看護助手さんはあまり注目されることがないように思う。
別に注目されたいと思って仕事をしているわけではないだろうけれど、もっと注目されても良いのにな、と私は思っている。
だってあんなに働いてるのよ。
もっと「私って凄くない?」と思ってもバチは当たらないはずだ。

看護師さんがいてこそ医師が力を発揮できるのなら、
看護助手さんがいてこそ看護師さんが力を発揮できている部分は大いにあるだろうと私は思っている。

あまり大々的に言われるのは嫌なのかもしれない。

でも私は、看護助手さんにもいつも感謝している。
ありがとうございます。
そして、(たぶん)これからもお世話になります。


あまり本を読んで来なかった私、いただいたサポートで本を購入し、新しい世界の扉を開けたらと考えています。どうぞよろしくお願いします!