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サンドウィッチは石神井で

 ずいぶん前に「サンドウィッチは銀座で」(文藝春秋)というエッセイを読んだ。素敵なお店がいくつも紹介されていて、谷口ジローさんがイラストを描いている。先日、石神井公園通りにオープンした「ムームー・フェイマスデリ」でサンドイッチを食べた時、この本のことを思い出した。

 オープンといっても、もともとは富士街道沿いにあった「ムームー・サンドイッチワークス」からの移転である。ムームーの始まりは2020年11月だそうだが、失礼ながら時期は悪い。コロナ禍ではあったが、地元民の間での評判は上々で、今でもネットにはその頃の記事が上がっている。
 富士街道は道幅が狭く、それなりに交通量も多く、自転車だと急いで通り過ぎることが多い。おしゃれな外観が気になってはいたが、絶品サンドイッチを食べる前に閉店の情報を知り、残念に思っていた。
「趣味の店 大島屋」が隣りに場所を移し、そこにサンドイッチ店が入ることは聞いていたが、新しい店がまさかそのムームーだったとは。オープン当日、テイクアウトのための客で早くも込み合っていたが、中のカウンターで早速頂いた。

お店で頂いたサンドイッチ

 ムームーのメニューは魅力的だ。値段は自分がイメージするサンドイッチに比べて高いけれど、最近はこんなものなのだろうか。ほおばると具沢山で満足感がある。パンそのものも美味しい。だから結局は「高くない」という評価に落ち着く。オープンから少し経つと、開店前から結構な人が並ぶようになった。多少待つことがあっても、「パストラミサンド」はぜひ味わってほしい。

ホットレモネード。ビールという手もある

 移転したムームーも、今どきな可愛らしい店構えである。石神井に住み始めた時、古い駅舎とがらんとしたロータリー、角にぽつんと建つ派出所を見て、ずいぶんのどかな街に引っ越したものだと思った。駅が高架化すれば、周りの飲食店も様変わりしていく。ここ十年の間でも隔世の感がある。

晴れた日は公園で食べるのはいかがでしょう

 西武新宿線・上井草駅の近く「カリーナ」のサンドイッチも地元では有名だ。住所は石神井ではないが、千川通りを渡って井草に変わっただけである。このお店はテレビ東京の「出没!アド街ック天国」でも、2010年に取り上げられた。
 ふんだんに総菜を詰め込むムームーに比べれば、カリーナが出すのは、タマゴ、コロッケなどシンプルなサンドイッチである。月火水が定休日で二時には終わるので、ずいぶんゆったりした営業にように感じられるが、朝六時(!)に開店するということで、準備の苦労がしのばれる。朝早くから人が並んでいるし、昼過ぎになると完売の商品も多い。
 カリーナの看板には「サンドイッチとコーヒーの店」と書かれている。始まりは喫茶店だったとのこと。ただ今のところ販売のみだ。これまでに行くチャンスがあったかもしれず、惜しまれる。
 カリーナのサンドイッチは、通勤途中に買って電車に乗り込むことが多い。ふわふわで、優しい味付け。「レトロ」だとか、「昭和ノスタルジー」だとか、そんなことばで表す人も多いと思うが(間違ってはいない)、自分にとっては現在進行形の「今後ともよろしく」な味である。

フルーツ、タマゴ、コロッケ


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