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上石神井と青梅街道

 石神井も大泉学園、上井草ぐらいまではご近所感があり、実際、飲食店では移転も多い。これが青梅街道を越えてくると、同じ練馬区でも石神井より中央線に軸足を置いているように思うがどうだろうか。都内は少し歩けばどこかの路線に行き当たるが、中にはどちらの駅とも言い難い場所もある。

 上石神井で美味しい町中華を検索して、しばしば上位に上がってくる名前が「梁山泊」だ。住所的には練馬区「関町」で青梅街道を越えたところにある。有名なタレントさんも、この店の「肉あんかけチャーハン」をほめているらしい。
 店は石神井駅から十分以上歩く。街道沿いにぽつんという感じだ。武蔵関駅からも同じくらいの距離なので、「上石神井」に含めることに違和感もあるが、まだ吉祥寺とも言えないし、急行が停まる一番近い駅を採ったのだろう。青梅街道沿いなので、車の人は苦にならないかもしれない。

 青梅街道は青梅駅まで自転車で行ったことが何回かある。往復で七十キロぐらいだ。交通量も多くて、正直、乗っていて楽しい道ではない。一方、梁山泊のあるあたりは、夜になるとケヤキの巨木が影を落し、どんよりした独特な雰囲気がある。
 青梅街道は、もともと青梅市で産出された石灰を江戸に運ぶための道だった。そばには暗渠化していない千川上水の緑道があり、畑も残っていて、住宅と店が肩を寄せ合っている上石神井とは違った趣がある。

まっすぐ進めば青梅に

 梁山泊の営業は夜のみだ。店の外ではたいてい人が並んでいる。寒い季節はつらいところだが、ここまで来る頃には、すでにお目あての料理の口になっているにちがいない。
 テーブル席はなく、厨房を囲むカウンターに座り、みなさん黙々と食べて帰る。ビール(瓶のみです)、肉あんかけチャーハン、餃子(6個入り)。食べすすめると幸せだ。
 周りに店がないように書いたが、街道を挟んだ真向かいには、クラフトビールが飲める酒店「関町セラー」がある。二階のテラス席からは通りが見下ろせて、夏の昼下がりはいい風が吹く。駅からはやはり一足ある。多少遠くても足を運びたくなるというのが、人気店の証ということか。

「肉あんかけチャーハン」

 いつの頃からか、該当する駅の前に東京都の「お知らせ」が立った。内容は、西武新宿線・井荻駅付近から西武柳沢駅付近までを立体交差化する事業についてだ。その距離は約五千百メートル。上石神井駅も含まれ、今後、用地取得をすすめていくらしい。19か所ある踏切は除却され、しばしば起こっていた踏切トラブルが解消される。
 上石神井駅は普段からカオス状態だ。二面三線のホームのある開かずの踏切を用意ドンで横断する歩行者、自転車、車。タクシーが停まり、狭い道をのしのしとバスが運行する。
 練馬区は、この混雑解消のために「外郭環状線の2」事業として「交通広場」を造る予定だ。駅を中心に東西南北にわたる大工事が行われるという算段である。

渡り切れない人もいそう

 上石神井駅前では最近、青果店「フレッシュ島田」が閉店した。昔ながらの「八百屋さん」という風情だったが、とても寂しい。同じく駅前では最近「中央フラワー上石神井店」が営業を終了している。クリスマスの時期、並んだポインセチアがきれいであった。
 高架化には鉄道で分断された地域を「一体化」する効果もあるという。その点では今のところ、あまりイメージがわかない。私鉄においても出遅れた感のある西武線が、この地域でいかに存在感を高められるか、その施策のひとつには違いない。これは石神井に限らないけれど、あらかた街が出来上がってから、「今さら」という気もするし、工事をしないと活力がわかないというのも、今どき知恵がない気もする。判断が難しい。

赤いところが高架予定地


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