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DAOのジレンマ ―人の手を加えるとDAOではなくなる―

今回は、私自身がDAO化にトライしてみて分かってきたことを、現時点の雑感として書いておきます。

DAOと株式会社を使い分ける

ブロックチェーンによってDAOが実現可能になりましたが、必ずしも「組織体系としてDAOが最適」とは限りません。
達成すべきミッションや業態によっては、ボトムアップ型のDAOではなく、旧来のトップダウン型の株式会社のほうがかえって都合が良い場合もあると考えます。

スタートアップのセオリー

DAO化を目指すプロジェクトは国内ではまだ先行事例が少なく、手探りの状態です。
DAOには未来があることは間違いないと考えますが、いわゆる自律分散的なシステムでDAOをワークさせるのは非常に難易度が高いです。

純度100%のDAOを実現するためには、人が介在して権限を持ってしまわないよう、「コア機能を全てブロックチェーン上で完結」させる必要があります。

しかし反面、プロジェクトの立ち上げ成功率という点で言うと、いきなり純度100%を目指すのは無謀かもしれません。
DAOは、ここ10年で確立されてきた一般的な"スタートアップ"の立ち上げセオリーに従って運営したほうが、皮肉にも上手く行くのでは無いか、と考えています。

DAOで最も重要で難易度が高いこと

DAOがDAOであるために、最も重要で難易度が高いことは何でしょうか?

それは、

そのプロジェクトのコア機能をスマートコントラクトで自動化し、人を介在させないこと

です。

この課題のクリアを目指す場合、すぐに以下のような壁が立ちはだかります。

①コア機能を完全にシステム化することが(技術的に)できない
②開発できる人材が、全然集まらない

つまり、技術的なハードルが高いため、即手詰まりを起こす可能性が高いのです。

成功事例である"ビットコイン"や"イーサリアム"は、もともとテクノロジー系のプロジェクトでした。
集まってくる人の多くがエンジニアだったため、上手く開発が進んだのです。

「システムを設計し、作り出し、検証し、また改善する」
といった、エンジニアであれば比較的スムーズな進行が、非エンジニアが中心となるプロジェクトでは、一気に難易度があがってしまうのです。

人の手が介在すると、中央が発生する

そもそも、なぜコア機能に人の手を介在させるとDAOでなくなるのでしょうか?
完璧を目指さなくても、部分的にでも人が介在していても別に良いのではないか?と思うかもしれません。
しかしそれはダメで、DAOにとって重要な手続きの執行に、特定の人・組織の思惑が入る余地を残してしまうと、いずれ既得権益化し、中央を作り出してしまうと考えられます。
事実上、中央が存在する組織はDAOではありません。

ビットコインでいえば、中央の人の意向によって
「Aさんは気に入らないから、マイニング報酬を減額する。」
「Bさんはいつも味方をしてくれるから、報酬を倍にしよう。」
等という恣意的な運用がなされる余地があったら、DAOの根幹が崩れてしまいます。

DAOというのは、
・コミュニティから提案があり、
・提案がコミュニティ内で共感を得られれば、
・そのDAO内のルールに基づいて、トレジャリー・ウォレット(コミュニティの共用ウォレット)から、
・自動的に予算配分が執行
されます。

この一連の流れは、人の恣意的な意思が介在する余地を完全に排除し、プログラムによって自動的に回らなければならないのです。

しかし、ここで1つ別の懸念が生まれます。
自動的な運用に従い、仮に非人道的で反社会的活動に通ずる予算執行がなされた場合は、どうでしょう?
倫理的には、非人道的な事態は防がなければならないと考えます。
では、自動化しつつそのような不都合を防ぐためにはどうしたらよいのでしょうか?

実は、こうした不都合に備えて、
・提案自体を事前にコアメンバーたちで精査してから上程する
・最終決議された決定でも、一部のコアメンバーは拒否権を発動して覆せる
といった防衛策を講じているDAOが存在します。
別の記事でご紹介した「Nouns DAO」も、序盤は創始者メンバーに拒否権が付与されています。

関連記事:Nouns DAOの凄さを解説 ―究極のNFTコレクション&DAO―

このような対策を「中央集権的だ」と捉えるか、「最低限の、仕方が無い措置だ」と捉えるかは、人によって判断が分かれるところでしょう。

いずれであるにせよ、DAOの純度でいうと100%では無いというところに、私はモヤモヤしてしまいます。

ガバナンス投票 snapshot.org

DAO投票所 Snapshot.org では、現状、ガバナンス・トークンの保有量に応じて投票の重み付けがなされます。
つまり、1人1票ではなく、1トークン1票なので、1億トークン持っている人がいれば、1億票ぶんの投票ができるのです。
ガバナンス・トークンをDEX(分散型取引所)などから大量に仕入れることができる場合、理論上は札束ビンタでそのDAOの乗っ取りが可能になります。

悪意ある乗っ取りにより、プロジェクトの信用を毀損させることもできます。
また、仮に悪意が無かったとしても、実質的に特定の個人や組織が中央集権的な意思決定権を行うことができるようになり、分散的では無くなりDAOでは無くなり、実質的にます。

これらの問題に対しては、ガバナンス投票所の仕様変更で対応可能だと思われます。

対策の一例としては、

・一定のトークン量以上は無効とする(1人最大10票までなど)
・トークン量によらず、1人1票にする(ウォレット・アドレスは無限量産できるので別途対策が必要)

等が考えられます。

まとめ

こうして考えていくと、上場している株式会社とDAOを比較した際、DAOが必ずしもガバナンスが取れているかというと、疑問です。
オープンに開かれすぎている分、理想通りいいかなかったケースにはまだまだ人の手による対策が必須の状況です。
特に、ディフェンス側に悪用のリスクを多く孕んでいるはらんでいることは認識しておく必要がありそうです。

とはいえ、
従来のように世界を国別に分けた法務・税務・会計システムよりも、DAOの目指すシームレスな新しい”クラウド国家”のような存在は魅力的ですし、大きな可能性を感じます。

過去の明治維新のときのように、より良い世界を目指して、リビルド(再構成)していくタイミングがまさに”今”なのだとしたら……?

そう考えると、あらゆる懸念を取り払いつつ、理想を目指して邁進すること自体にやり甲斐を感じるのです。


※この記事は、パジ(@paji_a)の発言をベースにかねりん(@kanerinx)が編集して記事化しています。
※この記事の元投稿は、HiDΞで連載中のマガジンです。(JPYCの投げ銭も可能)


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