見出し画像

eigamita

『竜とそばかすの姫』を見てきました。

細田守作品が特別好きなわけではないのですが、彼の描くインターネットなり田舎なりがきれいだから大好きなのです。『サマーウォーズ』が結構好きだし、世界観や設定も似ているので、とても楽しみにしていました。公開から日にちが経ってしまったのは、一緒に見に行こうと誘ってくれた友人と予定が合わなかったからです。

まず、劇場で見ていて「なんかとってもムズカシイ」とも思いました。どんなに些細なことでも制作側の意図を深読みして、何かしらの意味があるんだろうとか、これはきっとここの描写のための表現だ、とか考えてみていたら頭がパンクします。考えさせる表現が多用されているとしたら、とてもとても難解だし、ついていきません。日本のアニメ文化の一般化と発展によって視聴する僕たちの目が肥えてきた影響だとも思いますが、それにしても『サマーウォーズ』と比べても飛躍していると思います。だから、感じてください。脳みそを空っぽにして、目と耳を最大限に活用してください。それが1番楽しめると思います。詳しく知りたいなら原作小説読めって話ですよね。

※「~と思います」「~と感じました」のような語尾が多いのは、単に自信がないからです。少しネタバレ(?)みたいのがあります。

さて、見に行った感想です。率直に言って、すごかったです。なぜ仮想と現実が対義なのかがわかった気がします。前半においてはインターネットの素晴らしさをベルのショーに合わせて煌びやかに演出されていると思いました。華やかなインターネット世界では、様々な個性が満ち溢れていて、グロテスクなほどのグラデーションがかかっていて、現実にはない充実感を与えてくれます。反面、日常は残酷な人間性が濃く映し出されており、よりインターネットが美しいものに思えてしまいます。ベルの歌に合わせてきらっきらに映し出されるピンク色の画面には圧倒されました。

後半はその逆です。インターネットの闇(いわゆる本質的ななにか)が牙をむき始めます。巷で話題の誹謗中傷や過剰批判、攻撃的な正義がさらに鋭利なものになってくる。または今までは煌びやかさの中に隠れていたものであったがある時にふとそう過敏に感じてしまうような描写があったと感じます。これについては、誰もが知っている類の恐怖だと思います。インターネットでは毎日飽きもせずに行われている事で、SNSやコメントできるニュースアプリを見ていれば、嫌でも目に付くはずです。

仮想と現実が対義であることともう1つ、仮想と現実は場合によってはコインの表裏であり、そうではないことにも気づかされたと思います。『サマーウォーズ』でもインターネットと日常があいまいになってしまい、双方が波及しあう状態になっていたと感じました。例えば、最終局面ではラブマシーンのインターネット攻撃によって現実世界のバランスが大きく崩されてしまう場面が多々ありました。インターネット世界には人々の精神状態が反映されることでラブマシーンの撃退にまでつながったと思います。『竜とそばかすの姫』では、”あいまい”というより一部が完全に溶け合ってしまっているように思えました。最後のシーンです。あの瞬間こそ、この作品が1番に伝えたいことの最高に抽象的な描写だと思います。僕は頭が悪いので特に何が伝えたいシーンだとかはわからないし、感じることもできなかったです。でも、あそこのシーンに伝えたいなにかがあるような気がしてならないのです。仮想と現実の双方向関係は匿名性を最大の要素として成り立っているのにもかかわらず、匿名性をなげうって自分をインターネットに映し出す。その場合ではコインの表裏になれない、というかその表現に当てはまらないと思います。だって表裏も糞もないから。

ただ、日常とインターネットが近い距離にある場合はコインの表裏になると思います。特にメッセージアプリ(特にlineのような気軽さで使えるもの)が日常で多用されているシーンです。メッセージアプリは少数のコミュニティで使用されるので、さほど匿名性は重要ではありません。むしろない方が好ましいまであります。されど、そのコミュニティも立派なインターネットです。潜在的な心の匿名性だけはぬぐえません。みんな表では平然としているくせに、相手の見えない裏部分を邪推して、派閥に分かれて諍い騙しあい。仮想と現実はコインの表裏に当てはめることができると思います。微妙なバランスで仮想と現実が存在していることは、対義でもあるし同質であるともいえるし、表裏一体ともいえる可能性がある。おや、僕は一体何について熱く語っていたのでしょうか。現実?はたまた仮想?どちらについても?ああ、もうわかりません。それくらい、仮想と現実って”あいまい”なものになってきているのではないでしょうか。

今や完全に「もう一つの世界」であったり、「裏世界」としての面を携えたインターネットです。私たちはいずれ、もっと実際的にどちらの世界で生きていくかを真剣に考えなければならない日が来ると思います。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?