けーせいのざくざくアクターズ考察④ 初期構想を考える(後半)

※今回の考察では水着イベント3話のネタバレも含まれます。まずはそちらをプレイしてからのご拝読をオススメします。


前回までの考察


本題に入る前に

さて、ここまで考察は3章終了の場面まで恙無く進行してきた。コレが本当に合っているかはともかく、物語としては特に大きな矛盾点も無く全体的にキレイにまとめられている。寧ろコッチの方が本編よりもいいシナリオになってない?と筆者が密かに思う場面すらあった。

しかしそれはおかしい、コレは没になったシナリオなのだ。ここまで出来の良いシナリオを没にするだけの理由が何であったか、未だに一切判明していない。

ならばだ

ここから先の結末にこそ、本編を大幅に変更した理由があるのではないか?

マクスウェルが終始味方ならこの物語の黒幕はシノブしかいない。最初に設定されていたシノブの本当の正体、本当の目的、本当の結末。

それこそが主人公を変更してゲームシステムを変更して結末を変更して、マクスウェルという仲間を悪役に仕立て直してでも秘匿した余りにも残酷な結末なのではないか?


・・・その可能性に突き当たっても尚もう一つの、あったかもしれない結末を見る覚悟のある方のみ先に進んで欲しい。




4章の全容

前編でも言った通りズブーブ大湿原を攻略した後はそのままタンポポ山に進撃するものと予想している。

というのも、4章のイベントの内「ドンコッコ海岸」「ハグレ大祭り」はハグレ王国がないと成立しないし「東の世界樹」「ウソウの森撤退戦」「決戦」はマクスウェルがいないと成立しない。

そもそも本編でタンポポ山に向かうきっかけとなったのはシノブの提案だ。初期構想ではどのようなきっかけで向かったのか?話の繋がり的にも、そのままマップが繋がっている方が自然な流れだ。風景も似ているしBGMも一緒なのは元がそう設計されていたからだ。

本編では何度かに分けて出陣するが初期構想では一度で全てを終わらせる。初期構想ではシノブを止めるという明確な目的で訪れている。何度も行き来するのは不自然だろう。

よってここからのシナリオは「シノブと決着を付けてエンディング」。言葉にするならコレが全てとなる。

けどもちろん「倒しましたハイ終わり」で片付けられるものではない。シノブが黒幕である以上、これまでの彼女の行動に納得のいく説明と、それに伴う今までの伏線が回収されなければ物語は成立しない。

その為にまずは彼女が一体何をしたかったのか?そこから整理を始めよう。

シノブの目的

本編でも発言してはいるが彼女の目的は世界をあるべき姿に戻す事。しかしこれだけでは酷く曖昧な物言いであり具体性の欠片もない。

そもそも本編では世界に元々人は住んでいなかったとブリギットが言っている。最初からあるべき姿の無い世界であるべき姿に戻す、という目的はどこか矛盾のようなものを感じる。

というか、この部分こそが初期構想から設定を変更した際に発生した矛盾点だ。つまり逆に言えば初期構想の世界にはあるべき姿というのが存在していた

では元々の世界観とはどんなものだろう?


真の世界

思えばざくアク世界で起きているハグレと現代人間の差別問題はアメリカ史の構図と非常によく似ている。ブリギットの言う「連中(現代人)だって元々この世界の住人でないのにハグレと呼ぶなんて滑稽だよな」とは正に黒人差別の構図そのままだ。

となれば古代人のモチーフとはアメリカの先住民族、インディアンが妥当となる。

本編の現代人は古代人がマナの薄い世界に適応した姿とあるが、上記に当て嵌めるのなら初期構想での設定は異なる。古代人とは現代人と出生の異なる、この世界に最初から存在し、そして現代人によって迫害され潰えた原住民族だ

そしてシノブのこれまでの行動や設定、異様な強さに始まり古代遺跡でキーオブパンドラを手に入れゴーレムを自力で修理、古代文字もマスターしており何故だかトゲチーク山岳古代種の生態にも詳しかった。

これらの理由を本編では「天才だから」で片づけられていた。だがそうではない、たった一つのシンプルな理由でこれら全ての伏線は回収出来る。

シノブの正体は古代人だ

つまり本来あるべき姿に戻すとは世界を自分達古代人の元へ取り戻すという意味だ。


古代人の行方

しかし作中シノブの他に古代人の姿は確認されていない。一応水着イベントで登場するがあの話は後々更新されたアフターストーリーだ。メインストーリー中で伏線を回収しなければ物語は成立しない。

ではどこかで登場していたのか?そのヒントとなるのも水着イベント、これらも今まで同様に没となった初期構想の再構成シナリオだ。

彼ら古代人……今は始祖竜と呼ばれる者達は地底で生き延びる為の延命処置を施した結果、絶大な力を得た代償に竜へと姿を変えてしまった。

初期構想でも古代人は異形の姿へと変貌してしまったと考えられる。

それはどこに現れたか?古代遺跡の中で1か所だけ明確に人が住んでいたと示される場所がある。トゲチーク山岳地帯の地底にある遺跡だ。あそこはブリギットによって元は居住区だったと説明されている。

トゲチーク山岳地帯で傭兵達を襲った異形の怪物古代種。アレこそが化け物と化してしまった古代人の成れ果て姿だ。



一度、ここまでの情報を基に古代史をまとめてみよう

古代史まとめ

元々この世界にはマナが存在していなかった。しかし古代人はマナの無い環境に適応した種族であり文明を築き上げるまでに発展していた。

しかしある日異世界からの来訪者がやってくる。ローズマリーやエステル達現代人の祖先だ。彼らがどうしてこの世界にやってきたかは定かではないが、とにかく大勢訪れた。

しかし彼らは、トゲチークでのマクスウェル(ローズマリー)がそうであったようにマナのない環境では生きられない。

では他の世界に転移しようにもマナの濃度差によって別世界へ行くことはできない。ここには一方通行で侵入する事しか出来なかった。

なので祖先達はマナを取り込む為の「空気穴」を世界中に作った。それが一方通行固定ゲートであり、世界樹の正体だ。

しかし今度はマナに適応した身体をしていない古代人に異変が起きた。彼らの姿はみるみる内に異形の怪物へと変貌し、マナへの適応能力と強大な力の代償に知性を失った。シノブという唯一の例外を除いて

彼女だけは人の姿と知性を保ったまま強大な力を得た。しかし彼女も無事ではなく古代史から今日まで15歳のまま一切変わらない不老不死になっていた


ゼロキャンペーン

これが古代人達の身の上に起きた顛末だ。

現代人達も生きる為には仕方のない事情があったがシノブから見た彼らは侵略者以外の何者でもない。それはハグレも同様だ

世界中に存在する魔物の出現ポイント一方通行固定ゲートは現代人とハグレが生きる為に必要なマナを供給する為の、言わば空気穴だ。特級封印装置であるキーオブパンドラを手に入れた彼女は、人々を魔物の手から守る為という口実でこれらを塞ごうとした。

しかし本当の目的はマナの供給源を根絶する事。そうなればマナ無しでは生きられない生命体……魔物も、現代人も、ハグレも。古代種を除く全ての生命がゼロになる。それがゼロキャンペーンの正体だ。


本編でシノブはマクスウェルの罠に嵌り巨大次元の穴に落とされた。初期構想では恐らく、ありったけのマナ植物を用いてこの穴を自発的に生み出そうとしていた。今までゲートによってマナを世界に供給していた逆の要領、巨大次元の穴を生み出し世界中のマナを吐き出そうとする。エステル達はそれらを阻止する為に彼女と戦う。


決着

たんぽぽ山の大型魔物、時計塔のゴーレム(もちろんマクスウェルでなくシノブが復元したもの)等々……数々の強敵を倒し遂にはシノブの暴走を食い止める。しかしあのシノブにどうしてエステル達が勝てたのか?彼女が本気を出せば一たまりも無かったはずだ。

かつてシノブはトゲチークでエステル達を守るために古代種を倒した。その際彼女はこう言い放つ。

「私が怖くないの?ひょっとして、そこに転がっている人のしたいは私がやったかもしれないわよ?」

シノブは古代種の正体を知っていた、つまり彼女は本当に人を殺していた。それを承知で、自分の同胞よりもエステル達の命を優先した。

そして妖精王国でもそうだ、マナが無くなったら真っ先に死んでしまう妖精達の為にマナジャムの栽培法を伝えていた。

シノブは今の世界が好きになってしまっていた。だから本気になれず、葛藤の中にあった彼女は、迷いを断ち切りここまでやってきたエステル達に敗北した。

しかし最終段階にあった巨大次元の穴は止められない、もしくは暴走してしまう。シノブは自分の行いに始末をつける為ゲートの内側から封印を図る。

しかし本編同様に彼女は帰ってこない。


……覚えているだろうか?ズブーブ大湿原は古代遺跡、つまりそこと繋がっている時計塔もまた古代遺跡だ。そして「東の世界樹」「決戦イベント」の無いコチラではここで戦うボスや大型モンスターの説明がされていない。

アンノウンプラント、ゲオルギウス、アンノウンビースト、プラントヒュドラ、バベルティターン、そしてアシッドドラゴンの番い

これらは全員古代種だ。

トゲチークで古代種を殺戮した後、シノブの手は震えていなかった。震えが無い事に震えていた。頭では人と理解していても、心は既に古代種を人と認識出来なくなっていた。

それでも彼女は彼らをそばに置いていた。それは彼らの正体が、かつてシノブの大切だった人達、友と、そして家族だからだ

古代種を人と認識出来なくなっても、それでもなお断つ事の出来なかった未練。それらはここに来るまでのエステル達によって討ち倒され、彼女の未練は、生きる理由は全て失われてしまった。だから穴の中で静かな死を迎える事を彼女は望んだ。


しかしそれでもエステルは助けに向かう。

シノブに生きる気力を取り戻させるためにキーオブパンドラで彼女の精神世界へと突入する。


そしてそこでエステルは見る。シノブの心が再現した、かつてシノブが過ごしていた世界を。


シノブの世界

空想の世界でシノブはかつて過ごしていた、千年前のこの世界にあった日常を再現する。

つまり本雲と歯車の世界ではなく雪乃の故郷とよく似た世界、と言うよりは雪乃の故郷が初期構想シノブの世界の再現だ。BGMが一致したのはそれが理由だ。

マナも魔法も魔物もいない世界でシノブは家族と過ごし、学校で授業を受け、放課後友人とパフェを食べる。


シノブの正体は古代人。しかしその名は今を生きる者達が付けた呼び名だ。

「シノブ」という名前、彼女の容姿。ここでこの物語は最大の核心に触れる







シノブの真の正体は日本人だ


ざくざくアクターズの舞台は地球だったのだ


古代遺跡のエレベーターも「関係者以外立ち入り禁止」の文字もかつてあった日本の何気ない日常の光景だ。

しかしそれを知るのはプレイヤーのみ。エステルはシノブを救う為、記憶を消した彼女に辛い現実を伝える。それでも生きろと、未練を断って前に進めと言う。

命を賭しても自分を助けに来たエステル、そして帰りを待ってくれてるマクスウェルとメニャーニャ。

自分にはまだ帰れる場所があると知ったシノブは夢の中にある全てにシノブは別れを告げる。

そして最後、エステルはキーオブパンドラの力をシノブの世界で使う事で不老不死の力を封印する

ただの少女に戻ったシノブは、その限りある命をこの世界で生きる事に費やす。

大切な3人の友達と共に。



終わりに

以上が筆者の推測するざくざくアクターズ初期構想のメインストーリーとなります。

可能な限りは原作に沿ったつもりにはなってますが……ぶっちゃけ細かい部分は妄想で補っているし、特に終盤はほぼ二次創作以外の何物でもない状態になってる自覚はあります。

……もしもはむすた先生に見つかったら謝罪しなければ。


あと2つのおまけで本考察を締めくくらせて貰います。ここまでのご拝読誠にありがとうございました!


おまけ1

シノブの世界に侵入した際のエステルだが「えすてるさん」の姿になっていると思われる。

「異界にイメージを届ける際、送信主がアホだと縮尺がおかしくなる」

かなづち大明神の存在はそんな小ネタの伏線だったのだ!


おまけ2

時計塔はシノブかつての思い出の場所。つまり彼女はああいう場所がお気に入りだ。

という事はつまり本編でも伝説の苔キャンプ、これは元々はシノブの趣味だ。

この世界を好きに生きる為、そして友達に自分の事を知ってもらう為に彼女は密かな趣味を打ち明ける。(そしてドン引きされる)

しかしそんなおおよそ天才らしからぬ、見た目の年齢相応の少女の姿を見てマクスウェルはようやく和解。トゲチークの失言を謝り2人のわだかまりは解消される。

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