INTP女の直観と感情を満たす音楽5選
歌詞の付いた音楽が好きだ。自分の中に深く潜り込んで泥に包まれて眠ってしまいたい時に、どこかの誰かが紡いだ音など邪魔なだけなのだけれど、歌詞が自分の中に溢れる靄を形にして昇華してくれることがある。靄は、感情だったり、記憶だったり、既視感が描くイメージだったりと様々だが、書き手の自我を感じさせないどこか普遍的な歌詞は自分ごととして私の中に入り込み、私の中の靄を昇華してくれる。
そんな滅多に出会えない楽曲たちを5つ並べてみた。
炉心融解 feat.鏡音リン / kuma, iroha
可愛らしい恋愛観や空想世界のストーリーを歌ったボカロ曲が大成していく中で、この楽曲は異彩を放っていた。疾走するドラムンベースが印象的なイントロ、「君の首を絞める夢を見た」という心臓を鷲掴むフック。大人になる過程で自我を少しずつ殺さなければならない苦しさ、核融合炉に一瞬で白く融かされて苦痛なく社会に調和するという妄想、N(直観)型の多くの人間が心の奥底にひっそりひっそりと深く沈めた願望に輪郭を与えた歌詞が見事だ。
下記のコメントが、この楽曲の価値を端的に表現している。
you are my curse / nyamura
Tiktokによる音楽マーケティングが主流となり、中高生向けの世界観を纏った楽曲が続々と発表されているが、この楽曲は中でも稀有だ。誰が手を伸ばしても絶妙に届かなかった場所に掌を押し当ててくる感覚。nyamura氏の他の楽曲も鑑みるに特定のジャンルの恋愛をテーマにした歌のようだが、この曲の歌詞は愛を希求する人間の心内に渦巻く泥濘にフォーカスしており、期せずして愛というエゴイズムを普遍性高く表現するに至った。
ぽつぽつと語り始めるような静かなイントロからは想像できないほど醜い感情を怒涛のように迸らせるこの曲を眠る前に聴くと、心の奥の何かが昇華されたような浄化されたような、不思議な感覚を味わえる。
覚醒都市 / 新居昭乃
上京した頃に私が見た東京という都市を、そのまんま閉じ込めたような楽曲。東京を知らない頃に夜の首都高から見上げたビル群に感じた不思議な感覚を、今も思い出させる曲だ。
デジタルのスクリーンに空を映し出すほど発達した都市は、毎日嘘のように磨かれ洗練されていく。だがこの曲は同時に、都市に住まう誰もが、破滅に向かう世界を薄っすらと予感しているかのような退廃性を感じさせる。愛を知らなかった者たちが、歪ながらにも愛を見つけたというエモーショナルなストーリーも、浮遊するシンセサイザーと機械的なドラムのリズムによって矮小化され、無機質に俯瞰される。
初めて聞いた時は上京など露ほども頭に上っていない年齢だったが、私の中の人間社会のイメージとピッタリ符号し、衝撃的な印象を与えてくれた楽曲だった。
ちなみに、ご本人によるライナーノーツは下記。
At The End Of The Blue Sky / ent
鈴井貴之氏プロデュースの舞台にてテーマソングとして流れた楽曲である。「死」というテーマを扱った舞台だったので、この楽曲のテーマもおそらく「死」だ。美しく広大な自然の中に人間の魂が生まれ、営みが生まれ、感情が生まれる。交錯する感情が愛を生む。だからこそ死してなお魂は残り、大空を自由にどこまでも羽ばたいていく。ギターの音色が空のように広がる展開が心地よい楽曲だ。
Googleの機能を使った歌詞の和訳はこちら。
私の好きな映画のひとつに「ラブリーボーン」がある。この楽曲に似た精神性を扱った映画だ。死は愛を奪えない。少女の誘拐殺人という残酷なテーマを副次的に扱っているため、目を曇らされて作品の主旨を読み取れない人も多く平均的な評価は低いのだが、上記の楽曲と併せて鑑賞すれば見えるものがあるだろう。
那幕 (Falling Down) / 徐明浩 THE 8
K-POPグループに所属する中国人メンバーのソロ曲。彼自身による作詞のため、言語は中国語だ。彼の抱く自己実現欲求や世界への理想と、社会のマジョリティを占める感性との、埋められない隔絶への絶望が伺える。彼自身が構成したコンテンポラリーダンスでは、翼が墜ち、抑圧され、地を這い、どこまでも堕ちていく様が表現される。F(感情)とN(直観)によってより高次の欲求の元に世界を観測するタイプの人間には刺さる楽曲だ。
有志が日本語訳動画を上げてくださっている。
おわりに
まとめると、私の心の深層に触れる歌詞の条件は下記のようだ。
主体の人格が表現されないこと
作者の主義主張が表現されないこと
個別具体の事象が表現されないこと
その上で、心象世界を表現した歌詞を持つ楽曲をとても好む。
MBTI(16タイプ性格診断)において私は【INTP】というタイプなのだが、本記事で挙げた楽曲は果たしてどの心理機能を満足させてくれているのだろうか。
どう見ても他のINTPからは全く共感を得られなさそうな楽曲群で、我ながら不思議である。