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2024J2開幕 徳島vs甲府②

ここからは戦術とその落とし込み…指導と練習に関わる部分について触れていきます。

しかしこれは実際に確認できない部分が多く推測に推測を重ねたところがありますので、
あくまで参考として皆様が様々な可能性を考えていただくための叩き台となれれば幸いです。


的にどのように辿り着くか

「的」については前回述べたとおり
今期は前から奪い、そしてショートカウンターを仕掛ける機会を逃さないことではないかと考えています。
もちろん相手を分析し臨機応変に戦い方を決めていくなかでは、時としてJ1での鳥栖戦のようなローブロック&ロングカウンターの戦術をとる場合などもあるでしょうが。
これらはここまでのトップチームの経緯(前回参照)やチーム全体として掲げているものと合致するものと考えます。

ここで過去の強化本部長によるインタビューも置いておきます。

岡田明彦強化本部長、1万字インタビューhttps://www3.targma.jp/vortis/2022/01/21/post42292/

【徳島ヴォルティス】レアル・ソシエダとの業務提携について、岡田強化本部長インタビューhttps://sports.yahoo.co.jp/official/detail/202212190058-spnaviow

※一部分を抜き出すのは特に今の状況では誤解を生み迷惑をかけるリスクが大いにあるので控えます。

しかし甲府戦では

・狙った状況を引き起こせない
(前から行くも連動せず、奪えないまま間延びする)
・駄目な時のニの手への移行がうまくいなかい。
(サポートが少ないなかでも、得点の可能性が低いエリアでも、無理矢理に前に仕掛けてしまう等)

…という前半だったと見ています。

これは前回述べたように状況的に選手の個体差ではなく、チームとして的にしているものへ辿り着くための設計と選手への落とし込みの両方でうまくいっていないことを疑っています。

なおこちらの「的」そのものに対する推測が実際と違っていたとしても…以後の話の流れは変わらないとも考えています。
そのくらい甲府戦の前半は上手くいっている(理にかなっている)要素がほぼ見つからなかったので、的として何を狙っていたとしてもここから述べていく準備に係るところには少なからず問題は存在するのではないかと。

設計面への疑問

今回の甲府戦での徳島の守備は4-5-1の配置から後ろを相手より一人多く確保、ノア選手と杉本選手が交互に相手ボランチを監視しもう1人が2CBを牽制するかたちでしたが(二人で相手の三人を担当)
ここまでは現代のGKを含めたビルドアップのなかで2対4の状況になることが多く、ブロックを組み待ち構える(様子を観る)配置だと考えている。

そこから段階を進めて機をみて(条件を発動させ)スイッチを入れ、かたちを変えて(ウイングが出たりトップ下が出たり)後ろが連動し前に出ることで初めて、的としてある「前から奪う」守備が完成するものではないか。

条件的に厳しい→行くべきでない
条件的に整っている→連動して行ける

しかし実際にはそのスイッチがぼんやりしておりノア選手が単独でプレスに行くような場面が頻発
その頻度から前から奪いに行く意思はチームとして伺えるものの

「ここまで来たらプレスをかける」
「ここでは誰と誰が連動する」

…という様な段階的な設計(基準)は見えませんでした。

昨期までなら相手のビルドアップに応じて条件を整え、FWとトップ下で片方のサイドに限定したり両ウイングがある外のコースを切りながら内向きに相手CBに制限をかける動きが見られました(これについてはポヤトス氏の設計は抜群だったと感じています)
また先方役…森海渡選手や藤尾選手は頻繁に後ろを振り向き連動の可否を確認しながらプレスのタイミングを伺う素振りも見られ、連動に対する意識を感じさせました。

このような過去がチームにありながら、当時を経験している選手が残っているなかでも今回のような状態に陥ってしまうのは何故なのか。
焦点を他にあてこの部分についての積み上げが薄まっていったか、実際の状況と解離した練習を行い過ぎた可能性が考えられます。

練習形式と落とし込み

サッカーの練習形式は

・アナリティコ(アナリティクス、ドリル)
・グローバル
・システミコ(インテグラル)

の3つの分類があり、
そのなかで的にしているもの自体の詳細の詰めは主に前の2つ、的の前後の状況…文脈まで含めた実戦的な形式の練習はシステミコであると理解しています。

この3つの形式を活用しながら選手やチームを向上させていくなか、
選手に落とし込む最適な配分については多くの議論がなされているところです(※)

※アナリティコの活用については、先日ラバイン氏に質問をさせていただきました。
こちら興味深い話でしたので、よろしければ過去ポストをご覧ください。

サッカーでは基本的に前後の関係が大事で、前段階で躓けば的としている部分の練習をしていたとしてもその機会にはうまく辿り着けません(セットプレー等は例外)

今期のキャンプの様子のなかで気になったのは対人形式のなかにミニゴールが設置してある練習の割合が多いこと
このことから的であるカウンター、スピードをもってゴールに向かう部分については取り組んでいたのではないかと考えます。
しかしこれが実際の試合で起こる状況に近かったのか、前後の文脈まで含んだものにまで及んでいたかどうか、
「システミコ」を活用することについてはどうだったのか?というところです。

というのも甲府戦の特に前半は的に対する意識が強すぎて、
その状況を前後の文脈無視で無理矢理作ろうとした結果、状況的に行くべきでない場面でも前に出ていってしまう…という場面が頻発した様子に感じられたのです。
そしてそれが徳島の積み上げや良さであった保持の部分すら消してしまっているようでした。

文脈を練習する

実際の試合に近づける「前後の文脈」が入る練習では

「方向性」
「フォーメーション」

は大きなポイントだと考えています。

例えば四角いコートの中でパスを繋ぐ本数を競うパスゲームは一般的な練習かと思われますが、
目指すものは固定されたものではなく状態の良い味方となり方向に優先順位が生まれず、
実際の試合である「前を優先する」「戻してやり直す」等の判断が欠けたものとなり、実際の文脈のなかでの練習とは少し違いが出てくるのです。

フォーメーションについても実際の試合では配置を基準とした判断が存在します。 
例えばプレッシングやビルドアップでは

「最終ラインの枚数に対して〜」

というような数を基準とする言葉がよく聞かれるところだと思います。
練習の対人形式でもフォーメーションをつけることによって新たな判断要素が出てくるわけです。
この部分は特に育成年代で、「ポジションは固定しない〜」という指導方針の部分と少しぶつかるところがあり抜け落ちがちなのかな、という印象もあります。

なおこの部分に関してはセンシティブな部分でもあり、公開してしまうと相手に大きなヒントを与えてしまうものになりますので、それを我々が目にすることはなかなか無いはずです。
よって実際のところどうなのかは一番わからない部分ではあります。

例えば以下の練習

守備側(青)は奪ったらゲートを通過
パスを活用することで加算ポイントあり

テーマとしてこれは攻守の切替、ゴールを目指すというカウンターの意識づけの土台の練習として効果あるものかと考えますが、これには守備側には一定の方向性があるものの人数比など実際の試合における文脈とは少し解離したものにはなります。

このように各要素を分割しある部分を強調したり、難易度を上げ下げするために実際の状況に無い形式(これは「グローバル」の範疇かと)で練習することもまたチームをつくる過程では有効であり、
チームの成熟度によってはこれで練習を完結できる場合もあるかとは思います。
しかし今回の結果的に(勝敗というより内容的な意味で)徳島の様子からは文脈まで練習していくことにもっと取り組むべきだったと考えてます。

ここ数年のなかで特にまとまりのないスタートとなったように見える今期の徳島
的自体を変えてくるのか、的はそのままにフォーメーション変更を含めた取り組みを変えてくるのか。
まだまだこれからです。

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