【読了】「おかしな数字」をパッと見抜く会計術

はじめに

同じ資料を見ているのに、ある人は気づき、ある人は気づけない
おかしな数字を見抜くノウハウは、会計基準が変わっても基本的に同じ

第1章 基本姿勢

おかしな数字の原因

・誤謬
・不正
・特殊な事象:この場合は説明がつけば正しい数字だと分かる

経理担当者に対する質問方法

全ての決算数値の生成過程を把握している人間は経理部にもいない
実務的には、経理部長が経理担当者に分担して管理し、質問してチェックしている

「どのような確認をした結果、この数字は正しいと言えるのか?(正しいと言える根拠を説明してもらう)」に経理担当者が答えられなければ、数字が怪しい可能性が高まる

経理業務とは、単純に数値を集計しているわけではない
数値の背景にある現象を意識して、様々な判断を行って、決算数値を作っている

経理部門の人間なら、自社の基本的な数字は覚えておくべき
・PL:売上高、売上総利益、営業利益、経常利益、税前利益、当期純利益
・BS:総資産、純資産、資本金

数字の読み方

数字を読む=財務情報を解釈する
売上高総利益率がN%の会社は同業他社と比較して売上原価を抑えられているのか?

会社外部から数字を読む
・手に入るのは、開示された四半期や年次の数字(実績値)のみ
・財務諸表の数字と事業報告の説明は整合しているか?

会社内部から数字を読む
・予算の数字、月次の数字も手に入る

数値比較(前期比較/予実比較/月次推移比較)

前期比較
ポイント
・増減が著しい勘定科目はないか?
・勘定科目間で増減に不整合はないか?
・そもそも増減してないのはおかしくないか?(勘定科目の関連性から考えて)
メリット
・簡単
デメリット
・前期の数値が「おかしくない」ことを前提にしている

例:
・売上高が2倍なのに、売上原価が3倍になっている
→普通は同じ倍率になるはず、利益率の低い商品がたくさん売れたのか?
・売上高が2倍なのに、売掛金は1.5倍になっている
→普通は同じ倍率になるはず、売掛金回転期間が早まったのか?早まったのなら何故?
・棚卸資産が1/5になっている
→仕入や製造が間に合わなかったのか?それとも販売見込がないから控えたのか?

予算実績比較
ポイント
・予算の数字の目的は何か?予測値(実績値とのズレは予測精度の悪さを意味する)or目標値(実績値とのズレは想定済み)?
・予算の数字の根拠は何か?(予算の前提となる経営環境に変化が生じていれば、当然、実績値とは乖離する)

月次推移分析
ポイント
・増減が著しい勘定科目はないか? →「計上月の誤り」「二重計上」「仕訳漏れ」が原因な可能性あり
・勘定科目間で増減に不整合はないか?
・決算月は他月と比較して異常はないか? →決算整理仕訳(収益の見越/費用の繰延など)は不正や誤謬の機会になりやすい、押込販売、損益の付替

一般的に連動する項目
・売上高:売上原価、販売費
・給与(賃金):法定福利費、福利厚生費、通勤費
・預金:受取利息
・借入金:支払利息
・有価証券:有価証券利息
・固定資産:減価償却費

たとえ財務会計的に収益認識基準を守っていても(出荷してから売上計上していても)、実質的に経済実態として翌期に上がるはずの収益を当期に前取りしているならば(当期の収益を高く見せたいという動機によって)、管理会計的には誤った経営判断を招いてしまう原因にもなる(決算月の売上の高さの原因が何なのか理解しにくくなる)

最低限理解しておくべき簿記ルール

おかしな数字を見抜くためには、複式簿記の理解が不可欠
残高が誤っている勘定科目を発見したら、「誤った仕訳において相手勘定は何だったのか?」と考えなければならないため

会計処理を理解する時のポイント

①対象の勘定科目がどのタイミングで使われるかを理解する
例:売掛金の相手勘定
・売上計上時:売上高
・返品時:売上高
・現金による回収時:現金預金
・手形による回収時:受取手形

不正する場合、一般的には以下のような勘定科目に紛れ込ませることが多い
・残高が大きい勘定科目
・仮勘定:仮払金、借受金

②会計処理は「仕訳時にBS項目を使うのか/PL項目を使うのか」に注意して理解する
実務上で誤りが頻発する例
・修繕費(PL)と固定資産(BS):修理した時は、資本的支出ならBS計上、経費扱いならPL計上
・支払手数料(PL)と前払費用(BS):サービスの効果が当期のみに及ぶならPL計上、翌期まで及ぶなら翌期分はBS計上

③おかしい仕訳に気づくために「よくある仕訳」を記憶する
一般的な会計システムには、仕訳情報として、以下のような情報も併せて記録されているため、取引実態がイメージできる
・起票日
・仕入先/販売先
・担当部門

例:
売上高/現金預金
・返金処理か?商品は戻ってきているのか?
・売上割戻(リベート)か?規定の割戻基準に準拠しているか?
→理由が不明な場合、現金預金が着服されている場合あり

例:
雑損失/現金預金
・現金実査の結果として計上された仕訳(帳簿残高と実際有高の差異調整)か?
・なぜ具体的な勘定科目で費用処理されていないのか?どんな請求書があるはずだったのか?

財務情報には経営者の意図が表現されている

会計方針の選択により変わる金額
・固定資産の簿価:減価償却方法や耐用年数などにより変わる

見積もり根拠により変わる金額
・固定資産の耐用年数
・引当金

経営者の誤った判断の例
・営業担当者が販売しやすいように(利益が確保しやすいように)、棚卸資産の評価損を多額に計上する(評価損が計上されやすいような経理規程にしてしまう)

重要性の原則

企業会計原則の一般原則では、重要性の乏しい処理については、本来の厳密な処理方法を適用せずに、簡便法で処理することも容認されている
重要性の閾値は経営者が決めるものであり、経営者は何故その数値が閾値として合理的なのかを監査人に対して説明できないといけない

計算間違いを確認するコツ

第2章 勘定科目別

財務諸表を構成する勘定科目の性質に着目する
各勘定科目を管理する(内部統制)ポイントを把握する

1.現金

日常的な現金実査
・金種表を作成して、紙幣硬貨の数をチェックする
・会計監査においては現金実査の日を事前告知する(内部統制が有効であることを前提にしているため)が、内部監査の場合は抜き打ちでやってもOK

小口現金の補充方法
定額資金前渡制度(インプレストシステム):理想的
・小口現金の残高が、月初に定額になるように補充する制度
・当月末までの現金使用量が把握できる
随時補充法
・使用するたびに補充する(統制が弱い)

月次の現金出納帳チェック
・帳簿残高と実際有高が一致しているか?
・残高がマイナスになっている日付がないか?立替処理が事後承認になっている可能性あり
・現金の用途として不適切なものはないか?例えば、現金で仕入している場合、購買プロセスから逸脱(不審な仕入先からの購入、検収なしの購入、横流し)になっている可能性あり

不審な小口現金取引の例
・領収書がない、記載が曖昧:実際の用途は?個人用途で使ってないか?
・アルバイト代の支払い:普通は銀行振込
・手数料の支払い:手数料だけ現金は不審
・会費や寄付金の支払い:使途が不審
・仮払金の支払い:社内規程(出張規程など)に準拠しているか、長く未精算である場合は横領されている可能性あり

監査人が気にする点
・小口現金の補充方法はどれか?小口現金の限度額はいくらか?

2.預金

預金残高の確認はとても簡単
・残高証明書の入手
・ファームバンキングシステムでの閲覧

銀行勘定調整表を期末にチェックするだけでは、期中の不正な資金流用が検知できないため、理由のない引き出しの実態を確認するべき(個人的な貸し付けを隠蔽している可能性あり)

銀行勘定調整表
・銀行が把握している口座預金残高には、実際の預金金額リアルタイムに反映されていないため、調整を行う必要がある。調整項目に誤りがないかをチェックする。
・不一致の6原因
 ・修正仕訳が必要(企業側で修正しないと一致しないまま):連絡未通知、誤記入、未渡小切手
 ・修正仕訳が不要(時間が経てば銀行側の処理により反映される):時間外預入、未取立小切手、未取付小切手

預金勘定の増減モニタリング
・キャッシュプルーフ:銀行通帳の入金合計&出金合計と、預金勘定の貸借金額を月次で突合させる手続

3.有価証券・投資有価証券

時価を把握して、評価差額の計上処理や、減損判定処理をする必要がある

有価証券の分類
・有価証券(流動資産と営業外損益で計上):残存期間が1年以内。
・投資有価証券(固定資産と特別損益で計上):満期保有目的や、支配目的で保有しているもの。残存期間が1年を超える。

時価(=公正な評価額)
・市場価格に基づく価額:取引所において売買された価額(実績値)
・合理的に算定された価額:利率や期間などから算出される価額(理論値)

減損テスト
・「会計商品会計に関する実務指針」に基づき、企業は合理的な基準を定義し、減損処理の要否を判定しなければならない
・有価証券リストを作成し、下落率/減損要否/減損金額の列を作ってトラッキングする

時価のない有価証券
・例:非上場会社の株式
・実質価額=期末における発行法人の1株当たり純資産額×所有株式数
・実質価額が取得価額の50%以下になった場合、「時価のない有価証券」でも実質価額まで減損処理する必要あり

4.売上債権

売掛金残高は、預金のように通帳やFBでは確認できない
さらに、売掛金の決済条件(月末締/翌々月末振込、など)は販売先により様々に異なることが一般的
販売管理システムで入金予定日(回収予定日)を登録していない可能性もある
銀行ではなく販売先に残高確認書を送付する必要あり

残高確認書発送一覧
・当社の売掛金残高と販売先認識額に差異がある場合、証憑を確認して原因を分析する。ただし、たとえ差異がなくても、適切な残高かどうかはまだ判らない(回収可能性のない売掛金を計上している=貸倒引当金が適切に計上されていない可能性があるため)
・回収予定日に入金されなかった場合は、督促を行う
・当社の経理部長と販売先と共謀して、売掛金が未回収だと偽り、実際には回収できた売掛金を横領している不正事例もあった

売掛金管理台帳
・売掛金残高がマイナスになることはあり得ない(計算ミスが混入している)

カイティング(偽装回収)の検収
・カイティング:入金の充当先(売掛金)を操作して、横領を隠蔽する不正
・売掛金残高は販売先ごとの合計値しか見れないが、内訳(決済条件により、当月の売掛金残高を構成している売掛金は、計上タイミングがそれぞれ異なっている)と合計値を比較することで、異常な回収状況が見れることがある

売掛金回転期間
・販売先との決済条件が変わっていなければ、売掛金回転期間も変わらないことが想定される
・平均的な決済条件と回転期間が分かれば、売掛金残高の推定値を算出することも可能

売掛金に対する貸倒引当金額の適切性
・経理担当者の独断ではなく、合理的に定義された経理規程に準拠して貸倒引当金が見積もられていることが重要

売掛金年齢表
・販売先ごとに各期間で回収できる予定額が記載されたもの

5.棚卸資産

棚卸資産の管理レベルを見れば、会社の管理レベルが判る
棚卸資産の種類:原材料、仕掛品、半製品、製品、商品、など

継続記録法(受払簿や在庫管理システム)を導入していても、記録ミスや盗難などにより、記録数と実際の在庫有高に差異がある場合がある(会社の統制が弱いと乖離が大きくなる)

実地棚卸の方法
・リスク方式:リストに載っている資産の実在性しか確認できない(網羅性=簿外資産の存在有無は確認できない)
・タグ方式:実在性も網羅性も確認できる
※原則2名1組で確認する
※評価減(商品評価損、棚卸減耗損)の計上要否を判定するため、保存状態も併記しておくと良い

滞留製品の評価
・期末日に「取得価額>正味売却価額」となっている場合は、簿価を「正味売却価額」まで下げなければならない
・正味売却価額=売価−見積追加製造原価−見積販売直接経費

滞留仕掛品の評価
・仕掛品が滞留している場合、その仕掛品自体の評価減の要否の他に、完成品(製品)の評価減の要否も検討する必要あり

滞留逃れ
・滞留データにカウントされないようにする不正
・滞留期間が閾値を超える前に、新規の製造指図書(オーダー)を発行し、滞留した仕掛品を振り替えてしまうこと

仕掛品を使った利益操作
・受注情報(オーダー)が誰にでも登録(査閲や承認なし)できてしまうと、利益操作が可能になってしまう
・通常の受注Aの他に、利益操作用の受注Bを登録し、もし仕掛品Aで費用超過が起こり利益率が下がりそうなったら、費用を仕掛品Bに付け替えてしまえば、Aの利益率を操作できる。Bは販売せずに仕掛品のまま持っておき、好きなタイミング(例えば会社に多額の利益が出た時)に評価減を計上すれば誰も気づかなくできる。

棚卸資産の管理方法
・標準品を大量生産するような業態の場合、回転期間分析が有用(受注生産のような多品種少量品生産の場合は、基準となる回転期間が定まらず、適用が難しい)
・会社の方針として、基準とする棚卸資産の回転期間を決めておく
・回転期間を使って平均の在庫数を算出する
 ・棚卸資産をグループ化して平均回転期間を使う方法
 ・個々の棚卸資産の回転期間を使う方法
・売上高が増加していないのにも関わらず在庫回転期間が伸びた場合は、在庫滞留が発生している(評価減すべき)可能性がある

不正の例
・期末在庫を過大計上して、売上原価を小さく見せかけ、利益を大きく見せかける
 ・架空在庫を計上した場合は、倉庫費や保険料が増加しないことから検知できる(実在する在庫ならば、倉庫費や保険料が伴って増加するはず)

棚卸資産年齢表
・各製品に対して、どれくらいの期間滞留しているかが判る
・通常は、滞留期間が長いものから販売していく
・一定期間以上滞留したものについては、評価減が必要

6.有形固定資産

固定資産の分類には、有形/無形の他に、減価償却性資産/非減価償却性資産がある

非償却性資産
・有形固定資産の一部:土地、美術品
・無形固定資産の一部:電話加入権、土地の上に存する権利(借地権、地上権、地役権)
・その他の資産:棚卸資産、繰延資産
・事業の用に供していいない資産:遊休状態、未完成なもの

有形固定資産の種類
・建設仮勘定
・建物、建物付属設備、構築物
・機械装置
・車両運搬具
・工具器具部品

固定資産台帳による管理
・勘定科目、管理部門、設置場所、担当者、購入順番などを示した資産番号シールを貼付し、資産番号を台帳に記載する
・固定資産を除却廃棄する場合は、除却廃棄申請書による承認を得る
・定期的な実査(棚卸)を行う
・既に耐用年数に達している固定資産が、固定資産台帳に載ったままであることも多い
・既に使わなくなった固定資産が、固定資産台帳に載ったままであることも多い。使わなくなった固定資産は、残存価額があれば貯蔵品としてBS表示(除却処理)、残存価額がなければ固定資産廃棄損をPL表示(廃棄処理)する必要あり。

減価償却費の算定要素
・償却方法:定額法、定率法、生産高比例法、級数法
・残存価額
・耐用年数:規程で定めた「耐用年数別表」に基づき決まる
 ・法定耐用年数:省令で定義されている値。
 ・経済耐用年数:財務会計上で使われる見積値。実務上で経済耐用年数を見積ることが困難な場合は、法定耐用年数を使う場合もある。
・償却開始日:法人税法上は「事業の用に供した日」。機械の場合は稼働日(「稼働報告書」の記載日)であり、取得日ではない(一方で、固定資産台帳には「取得日」しか記録しない場合が多いので注意)。例えば、期末日に取得したが未稼働である場合、BS上では資産計上できるが、PL上では費用計上できない。
 ※機械の取得プロセス:納品(取得日)→検収→設置→動作確認→試運転→稼働(償却開始日)

オーバーオールテスト(概算テスト)
・固定資産の減価償却費(借入金の支払利息などにも使う)について、概算値とPL計上値の乖離を検証するテスト
・概算値にどこまで精度を求めるかにより、計算方法が異なる
・期中取得や期中売却があった場合、発生する減価償却費に補正が必要になる(例えば、期央に取得/売却したとみなして計算する)

建設仮勘定
・建設仮勘定に含まれる要素:支払手付金(放棄すれば解約可能)、内金・頭金(=前渡金=前払金)、建設目的で取得した機械など
・完成時に漏れなく本勘定へ振替られているか?(減価償却費の計上遅れは不正)
 ・完成報告書や稼働報告書を証憑として、償却開始日の正確性をチェックする
 ・もし本勘定以外に振り替えられているものがあった場合(例えば、修繕費への振替など)、前期までの建設仮勘定は過大計上されていたということを示す。
・建設仮勘定の資産性が低下していないか?(建設が中断した場合など)
 ・建設再開の見込みがない場合、除却や廃棄の対象となる
 ・完成する本資産について見込み収益額が減った場合は、建設仮勘定自体も減損の対象となる
・建設仮勘定は、いついくら計上予定か、いつ本勘定に振替予定か、という計画書が存在する。計上額が適切かどうかは、計画書と比較して判断する。
 ・稼働報告が漏れている場合
 ・工事と無関係の費用が建設仮勘定に含まれている場合

7.無形固定資産

実務上、資産性が問題視される(過大計上が疑われる)のは、特に
・ソフトウェア:使用しなくなったソフトウェアは未償却残高が残っていても廃棄処理するべき、機能改善なら資産計上(資本的支出)/不具合修正なら修繕費
・のれん:親会社個別BS上の子会社株式が減損になった場合、連結BS上ののれんも減損させるべき

無形固定資産の例
・法律上の権利:借地権(地上権を含む)、鉱業権、漁業権(入漁権を含む)、など
・知的財産権:工業所有権(特許権、商標権、実用新案権、意匠権)、著作権
・契約上の権利:電話加入権、施設利用権、など
・超過収益力:営業権(のれん)
・ソフトウェア:仕様書などの関連文書を含む
・コンテンツ:データベースを含む
・リース資産

ソフトウェア制作費の区分
・研究開発目的:研究開発費(販管費または売上原価)
・販売目的
 ・受注制作の場合:ソフトウェア(棚卸資産)
 ・市場販売目的の場合:ソフトウェア(無形固定資産、償却費は売上原価に算入)
・自社利用目的:ソフトウェア(無形固定資産)

のれんの管理
・日本基準では償却性資産のため20年以内で定額法により償却する
・減損会計の対象になるため、減損の兆候をモニタリングする必要あり
・のれんが連結財務諸表に出てくるときには「連結調整勘定」になり、個別財務諸表に出てくるときには「営業権」になる

8.その他資産

経過勘定
役務提供(サービスの効果が翌期に及ぶ)の場合、損益の適切な期間配分を行うために使う勘定科目
○資産
・前払費用:費用の繰延(当期に対価を支払っているが、役務提供はまだ)
・未収収益:収益の見越(当期に役務提供したが、対価の受取りはまだ)
○負債
・前受収益:収益の繰延(当期に対価を受取っているが、役務提供はまだ)
・未払費用:費用の見越(当期に役務提供を受けたが、対価の支払いはまだ)

未決済項目
役務提供とは関係ない
○資産
・前払金(=前渡金)
・未収金
○負債
・前受金
・未払金

仮勘定
正しい勘定科目が分からない場合に、臨時で使う勘定科目
・仮払金/仮受金
・現金化不足

その他資産に属する勘定科目
・経過勘定:前払費用、未収収益
・未決済項目:前払金(=前渡金)、未収金
・短期貸付金
・仮払金:特に留意すべき(資産扱いだが、資産性に疑義が生じている状態)

仮払金の管理
・規程を定める
 ・仮払金の精算期限:長期未精算の仮払金は横領されている可能性あり
 ・申請承認プロセス:仮払金勘定を使う際には承認が必要にする
・仮払金管理台帳を作成し、仮払発生日/仮払依頼者/仮払先/発生理由/精算予定日などを管理する
・仮払いした資金の使用明細(証憑)を、従業員から入手する

仮払金を使った不正事例
・貸付金の隠蔽:不正に貸し付ける場合、仮払金として処理してしまえば、金利や返済日を明記しなくても済む(現金が回収できなくても貸倒処理ではなく、何らかの費用として処理できる)
・仮払金の横領:精算しなければどんな使途に使ったのかバレることはない
・費用計上を遅らせて利益操作:当期に発生した費用をいったん仮払金として処理(資産計上)し、翌期に精算して費用に振り替てしまえば、当期の利益を大きく見せられる
・返金(売上の取消)の隠蔽:返金があった場合に、仮払金として処理(仮払金/現金預金)してしまえば、売上を減らす逆仕訳(売上/現金預金)を切らずに済む
・不正な購買取引:通常の購買取引であれば、購入代金の前払いは、前渡金(前払金)を使って処理されるはず。敢えて仮払金を使う意図が不審。

9.仕入債務

・売上債権:実在性が重要
・仕入債務:網羅性が重要

仕入債務の種類
・買掛金
・支払手形

仕入債務の認識タイミング
①納品・入荷時点
②検品完了時点:内容や数量の確認
③入庫完了時点
④検収完了時点:機能や性能の確認
※一般的には、検収作業が漏れなく実施されているこをも以って、仕入債務が漏れなく網羅的に計上できているとみなす(入荷予定日が到来しているのに未検収な場合、仕入債務の計上漏れがある可能性がある)

仕入債権回転期間による分析
・仮に、全ての仕入先との決済条件が「月末締め/翌々月末振込」の場合、回転期間は2ヶ月となる。ここで平均の月度売上原価(仕入高)が100万であるとすると、仕入債務の推定値は200万(2ヶ月分の仕入れから構成されている)となる。
・ここで、実際の残高の方が少ない場合、実際の残高には計上漏れがある可能性あり

10.その他負債

計上根拠の理解が重要
留意すべき取引は、
・給与取引
・社会保険関係取引
・税金関係取引

その他負債に属する勘定科目
・経過勘定:前受収益、未払費用
・未決済項目:前受金、未払金
・短期貸入金
・仮受金

給与取引
給与は原則として月次後払いなので、締日から月末までの発生額は未払費用として計上する必要がある
従業員給与/未払従業員給与
・未払費用の実績値は、推定値と乖離していないか?(残業手当が多額に発生している場合、実績値の方が大きくなる)

社会保険関係取引
日本の社会保険制度は強制加入(国民皆保険皆年金)
会社に関係ある社会保険(広義)は、
○労働保険
・労災保険
・雇用保険:キャリアアップ助成金、失業等給付金
○社会保険(狭義):標準報酬月額×保険料率で算定、保険料は事業主/被保険者が折半して支払う(未払費用/預り金)
・健康保険:医療保険の一種、協会けんぽ(保険者:全国健保協会)/組合健保(保険者:各企業の健保組合)
・厚生年金保険

4種の社会保険の保険料率と納付期限を把握しておくと、おかしな数字に気づける
・労災保険料&雇用保険料:期末に預り金や未払費用の残高は残らない
・健康保険料&厚生年金保険料:期末に預り金の残高は残らない、未払費用(会社負担分)は3月分が残る
保険料が推定値より少ない場合、保険料が支払われていない従業員が存在する可能性がある(日本の社会保険制度は強制加入であるため、保険料を支払っていないとコンプライアンス違反になる)

税金関係取引
・法人税等の納付:「12.税金費用」で扱う
・源泉所得税の納付:支払給与、支払報酬、受取利息、受取配当金
・「従業員別年末調整結果一覧」を作成し、年末調整の計算が正しく行われているかをチェックする
 ・通常は、追徴ではなく還付になるケースが多い

11.引当金

引当金の区分
・評価性引当金:資産価額から控除する、貸倒引当金
・負債性引当金:将来の支出、製品保証引当金、賞与引当金、退職給付引当金、債務保証損失引当金

引当金の管理
・会計基準に基づき社内規程を作成する:発生可能性と金額を見積るステップや、拠点ごとに適用する閾値を明確にするため(属人性を廃すため)
・例えば、貸倒引当金の場合、以下に区分して管理する
 ・一般債権:貸倒実績率法
 ・貸倒懸念債権:将来CF法または財務内容評価法
 ・破産更生債権等:財務内容評価法

監査人が気にする点
・債権の「年齢調べ表」が正しく作成されているか?改竄や誤記があると、引当金の見積金額も正しくないことになる

12.税金費用

PLの「法人税等」=正しくは「法人税、住民税及び事業税」

法人税
法人の課税所得に対してかかる国税。法人税率に基づく。

住民税
・税法上は、道府県民税+市町村税。
・法人住民税の区分
 ・法人税割:法人税額に税率を乗じて算出
 ・均等割:課税所得とは無関係に、資本金などの金額+従業員数により算出
 ・利子割:金融機関からの受取利息に税率を乗じて算出

事業税
・事業所得などを課税標準として課す都道府県税。
・法人事業税の区分:資本金1億円以下の法人は基本的に所得割のみ負担する(「法人税等」に含めて計上)。それ以上の法人は外形標準課税の対象となり、付加価値割と資本割を負担する(販管費の「租税公課」に含めて計上)。ただし、BS上はどちらも「未払法人税等」として計上する。
 ・所得割:所得に税率を乗じて算出
 ・付加価値割:「報酬給与額、純支払利子、純支払賃借料、当期損益」に税率を乗じて算出
 ・資本割:資本金などの金額に税率を乗じて算出

消費税
・厳密には、消費税等=消費税(国税)+地方消費税
・課税取引額に対して税率を乗じて算出
・会計処理の方法には、税抜方式/税込方式がある(上場企業はほぼ税抜方式)
・監査人が気にする点
 ・適切な消費税区分が適用されているか?(特に、課税資産の譲渡)
 ・仕入税額の控除日付は適切か?(特に、長期前払費用、建設仮勘定、ファイナンスリース取引にかかる仮払消費税の処理)
 ・控除対象外消費税額等が適切に資産計上されているか?(期間費用処理する場合は、販管費の「租税公課」として処理)

税効果会計
・法人税等の金額を適切に期間配分するための会計処理(法人税等と税引前当期純利益を合理的に対応させるため)
・税金費用=「法人税等」(実際に支払うべき金額)+「法人税等調整額」(会計上の損益に対応させるための調整額)
・税効果会計を実施するためには、以下の理解が必要
 ・一時差異
 ・法定実効税率
 ・繰延税金資産の回収可能性

税率差異分析
税金費用に「おかしな数字」がないかどうかは税率差異分析でわかる
・一般的に、以下の理由により、「税引前当期純利益×法定実効税率」の値は、税金費用に一致しないものだが、一致しない場合は差額の原因分析が必要(規定された不明差異率を下回るまで)
 ・永久差異:公債費など
 ・課税所得額に関係なく課税される税:住民税の均等割など
 ・繰延税金資産の評価性引当額(繰延税金資産のうち、回収可能性がないと判断された金額)
・実務上は、税金関係勘定科目推移表を作成して、BSとPLの税金関連科目残高に整合性が維持されているかをチェックする
 ・期首の「未払法人税等」と、当期の確定納付額に差異はないか?
 ・追徴や還付された税額が含まれていないか?もし含まれていた額が多額ならば「過年度法人税等」という勘定科目で「法人税等」とは区別して計上する必要あり(過年度に帰属する金額であるため)、さらに重大な場合は遡及して前期BSの未払法人税等を修正する必要がる(「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」)

13.偶発債務

将来的に損失を生む要因となる事象が当期中に発生したなら、それを負債として認識しておくという考え方

偶発事象
・偶発利益:保守主義の観点から資産計上はしない
・偶発損失:発生可能性と金額見積り可能性に基づき、負債(偶発債務)として認識する
 ・発生可能性が高く金額を見積もれる場合は、BSに「債務保証損失引当金」を計上する
 ・それ以外の場合は、注記に記載して開示する

偶発債務の例
・手形の割引や裏書による償還義務
・債務保証および保証類似行為
・訴訟事件に係る損害賠償義務:和解する可能性がある時点では計上不要
・将来的に事業の負担となる契約
・将来的に一定条件が成立した場合に債務化するもの:デリバティブ取引など

偶発債務金額の見積り方
・会計基準では具体的には定められていないため、監基報540「会計上の見積りの監査」を参考にして、会社として「合理的な見積り手続」をルール化しておく必要がある

監査人が気にする点
・見積りに使う数式の精度は十分か?(過年度の予実比較をして乖離が許容できる範囲内か?)
・見積りの数式の前提条件が当期も成立しているのか?
・見積りに使うインプットデータは信頼できるか?
・数式通りに正確に計算できているか?
・権限規程に基づく査閲承認プロセスを経ているか?

14.売上高&売上原価

売上高:原則的には実現主義
売上原価:売上高(収益)に対応した費用

売上原価のチェック
・売上/売上原価対応表(売上総利益率と見込値の比較)を確認する
 ・売上総利益率が高すぎる:売上原価の計上漏れ(商品からの振替漏れ)?
 ・売上総利益率が低すぎる:他の製品に対する売上原価が誤って計上されている?
・売上/売上原価対応表とPLの差異も確認する

売上の計上時期のチェック
①取引に対して、適切な収益認識基準(売上計上基準)が選択されているか?
②売上計上日の根拠資料(どの資料のどの日付を売上計上日として計上するべきか)が明確になっているか?

(参考)伝統的な収益認識基準
・通常の商品販売:出荷基準、検収基準
・委託販売:仕切精算書到達基準
・試用販売:買取意思表明基準
・割賦販売:回収期限到達日基準、入金日基準
・長期の工事請負契約:工事進行基準(原則)、工事完成基準

15.販管費

原価性のある費用(営業活動上、日常的に発生し不可避な費用)
・売上原価CGS:変動費
・販管費SGA
 ・販売費:変動費の性質が強い
 ・一般管理費:固定費の性質が強い

販売費の例
・販売手数料
・荷造費
・運搬費
・広告宣伝費
・見本費
・販売員や営業担当者の給与/手当/賞与/福利厚生費:人件費なので固定費の性質が強い

売上高との比較
・販管費は売上高と比較して推移分析する
・売上高の増加率と販管費の増加率に乖離が検出された場合、原因を分析するべき
 ・販管費の増加率が少ない場合:経費削減の対策を講じていたのか?スケールメリットが働いたのか?そもそも誤って他の勘定科目で計上していないか?
 ・販管費の増加率が多い場合:固定費部分が増加したのか?

人件費の内訳
・人件費(従業員給与)は以下の3つに区分される
 ・製造原価>労務費:製造部門の場合
 ・販管費>販売費:営業部門の場合
 ・販管費>一般管理費>研究開発費:R&Dの場合
 ・販管費>一般管理費>その他:その他の部門の場合
・特に、製造原価として計上した場合、製品が販売されるまで(売上原価として計上されるまで)は、棚卸資産として資産計上されるため、費用にしなくて済むということである。つまり、人件費の内訳配分を操作することで利益が出せてしまう。

製造原価との比較
・販管費と製造原価の比率は、基本的に一定である(管理部門と製造部門の規模=従業員数に大きな変化がない限りは)
・もし比率に大きな変動があった場合、原因分析をする必要がある

監査人が気にする点
・期間帰属が適切かどうか?(販管費推移と売上高推移が乖離する原因は、期間帰属の誤りまたは不正であることが多い)

16.営業外収益&営業外費用

営業外損益は、経常的に発生するが、本業(定款で定めている業務)には該当しないもの

営業外収益/営業外費用の例
・受取利息/支払利息
・有価証券利息(受け取る方)/社債利息(支払う方)
・受取配当金
・仕入割引/売上割引

「その他」「雑収入」「雑損失」の分析
・「その他」「雑収入」「雑損失」を発見したら、実態が何かを確認する
・雑損失の場合、税務上で損金不算入の扱いになる可能性がある(もし使途秘匿金にするなら全額が損金不算入で追加課税がある)
・不正の例
 ・非公式な融資:独断で融資し、貸付金は「仮払金」、受取利息を「雑収入」として処理する。金消契約(金銭消費貸借契約)書を作成せず、査閲承認プロセスも無視する。

営業外損益か迷うもの
・固定資産売却損:経常的に発生するものではないため、営業外費用ではなく特別損失として計上する
・現金紛失:通常は一般管理費として計上するが、盗難などが経常的に発生していれば営業外費用に、横領不正などがあった場合は特別損失に計上する
・寄付金

17.特別利益&特別損失

特別項目に含まれるもの
・臨時損益:経常的に発生しないもの、金額的重要性が異常に高いもの
※2011年以前は、前期損益修正(発生の原因が当期以前の期間にあったもの)も特別項目に計上していたが、現在は過年度遡及会計基準が適用されたため、過年度の財務諸表を修正することになった

特別項目の例
・固定資産売却損益
・負ののれん発生駅
・設備の廃棄による損益
・転売以外の目的で取得した有価証券/その他資産の売却/処分による損益
・企業結合にかかる特定勘定の取り崩し益
・企業結合における交換損益
・事業分離における移転損益
・繰延資産の一時的償却額:創立費/開業費/開発費/株式交付費/社債等発行費
・災害による損失
・減損損失

特別項目か営業外損益か迷うもの
・貸倒引当金繰入額
・棚卸資産廃棄損

監査人が気にする点
・経常利益を大きく見せかけていないか?
 ・経常的に発生する損失なのに、特別損失として計上していないか?例えば、閉店に伴う損失が継続的に発生している場合、それは特別項目ではなく経常項目とみなすべき
 ・特別に発生した利益なのに、経常利益として計上していないか?
・貸倒引当金繰入額と貸倒損失の計上区分は適切か?
 ・販管費として計上:通常取引(経常的で短期間に循環するもの)の債権に対する引当金(売上債権、前渡金、立替金、営業上の貸付金)
 ・営業外費用として計上:通常取引以外の貸付金
 ・特別損失として計上:臨時的な損失

第3章 決算整理仕訳

決算時の仕訳

・決算整理仕訳:損益を確定させる仕訳。会計システムを導入していてもマニュアルで登録されるものがある。
・決算振替仕訳:確定した損益を剰余金に振り替える仕訳。会計システムを導入していれば通常は自動処理されている。

※決算整理仕訳の特殊性
・通常の仕訳:例えば、経費の支払は、取引先が発行する請求書(外部証憑)に基づき仕訳する。処理フローが単純で、誰が処理しても同じになり、自動化も可能。
・決算整理仕訳:見積り(+根拠となる内部資料)が必要であり、担当者により金額が異なる場合がある。処理フローが複雑で、機械的に登録するのは困難。

決算整理仕訳の例

特に注意すべきは、収益費用の見越/繰延、期末評価、見積り

①経過勘定の計上(収益費用の見越/繰延):見越勘定(未払費用、未収収益)、繰延勘定(前払費用、前受収益)
②金融商品:時価評価
③棚卸資産:評価損の計上
④固定資産:減価償却費の計上 ※通常は自動計算される(耐用年数と償却方法を基に)
⑤固定資産・投資に関する資産:減損損失の計上
⑥引当金の計上:賞与引当金、貸倒引当金
⑦繰延税金資産負債の計上
⑧外貨建取引の期末換算

①収益費用の見越/繰延

経過勘定が漏れなく計上されているかを確認するための最も簡単な方法は、BS残高と経過勘定算定表を確認すること
経過勘定算定表は、収益費用の発生原因となる資産負債(貸付金・借入金など)に対して、発生する収益費用の見越繰延額を記録したもの

例:前払利息未払利息の算定表
・借入先ごとに、期末日時点の借入金額/利率/利払日/利払方法/前払利息/未払利息を記録する
・算定表上の借入金額の合計値が、BS上の借入金残高と一致していない場合、経過勘定に計上漏れがあることが分かる

②期末評価

期末評価の対象となる勘定科目
・売上債権(売掛金・受取手形):貸倒引当金繰入額が発生
・有価証券&投資有価証券:有価証券評価損&投資有価証券評価損、その他有価証券評価差額金(純資産の部)
・棚卸資産&販売用不動産など:品質低下評価損、陳腐化評価損
・有形固定資産&無形固定資産:減損損失
・デリバティブ取引:評価損
・繰延税金資産:法人税等調整額
・外貨建金銭債権債務:為替差損/為替差益 ※厳密には「評価」ではなく「換算」であるが観点は同様

同じ「時価評価」でも情報源が異なるので注意
・有価証券の時価:取引所における株価
・固定資産の時価:該当資産の売買市場(例:不動産売買市場)における取引価格の相場、鑑定評価額

会計監査人が気にする点
・評価処理を忘れていないか?
 ・固定資産の減損処理
 ・棚卸資産の評価損計上
・評価額が適切か?
 ・売上債権:債権区分を行い、貸倒実績率法/CF見積法/財務内容評価法により、回収可能額を見積もる
 ・繰延税金資産:企業分類に基づき、スケジューリング/タックスプランニングにより回収可能額を見積もる
  ・スケジューリング:将来減算一時差異について解消見込の年度と金額を見積もること
  ・タックスプランニング:将来的に課税所得を発生させる(含み益のある不動産や有価証券の売却など)ための計画を立てること
 ※スケジューリング/タックスプランニングは、経営者の判断であるため、その判断が本当に実施されたことを支持する根拠資料(取締役会の承認を受けた計画書など)が必要になる

③見積り

見積りが必要な勘定科目
・引当金
・繰延税金資産(税効果会計)

経営者は、以下のような動機により、見積りを合理的に行わない(無理やりな理屈付けを行う)場合がある
・自分の代では、前期より多くの当期純利益を計上したい
・自分の代では、赤字に転落したくない
・自分の代では、上場要件を満たしたい
・自分の代では、配当金額を維持したい
例えば、売上高を上げたい場合、単純に販売数だけを増やすと、販売費もそれだけ増えるのが自然
悪質になると、社外に依頼して楽観的な見積りの根拠を捏造することもある

見積りの根拠としてよく使われる前提が「過年度と同様の状況が将来的にも発生する(過年度ベースの前提)」である
しかし、より現実的には「過年度と異なる状況が将来的に発生する可能性」も考慮して、期待値による補正をかけることが合理的だと見做される

監査人が気にする点
・見積り根拠となる証拠資料があるか?
・見積りの前提条件は合理的か?
・内部統制として、見積りの精度を改善するための業務プロセス(見積り額の事後検証など)があるか?

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