マイルＣＳ回顧 ～拝啓、グランアレグリア様～

拝啓、グランアレグリア様

秋が終われば冬が来る。ほんとうに早いものですね。

このコラムの初期、あなたを題材にした高松宮記念では

「ポテンシャル抜群のチョーめんどくさいオンナ」

などと大変失礼なことを書いてスイマセンでした。今となっては外から抜かれると「もうヤダ、私帰る」と競馬を投げてしまった若かりし頃のあなたはいい思い出です。

大人になってからのあなたは安田記念で最強馬アーモンドアイを突き放し、ルメールコーチを略奪するとスプリンターズＳではダノンスマッシュのプライドをズタズタに切り裂くような追い込み一気。そして今回のマイルＣＳでは「黄金世代って言っても大したことないのね」と３歳馬たちを完封する素晴らしいドSの走り。ミニスカートが似合わなくなったオバさんになっても若い子に負ける気なんてサラサラなかったことはわかってました。最後まであなたの強さを信じてよかったです。

藤沢さんがあなたを騙し2000ｍを２度も使ったことは許してあげてください。某番組で彼も謝っておりました。たぶん走ってていつもより長いことに気がついたんじゃないかな、って思ってます。でも、あなたがあまりに強すぎたので、みんなどこまで強いかを見てみたかっただけなんです。

来年の春には江口洋介似のイケメン牡馬と結婚、そして出産ですね。数年後、競馬場で貴女の子供に出会えることを楽しみにしております。これから寒くなるのでお体ご自愛下さい。

敬具

さて、冗談はこの辺にしておいて、レースの回顧だ。

グランアレグリアのパドック映像を見て正直、ほっとした。天皇賞と違い昨年のマイルＣＳで見せたデキくらいにはなっていたので「このデキなら勝つでしょ」と思えたからだ。前日コラムで今回は仕上げてくると書いたが、やっぱり当日のデキを見ないと安心できないのがパドック派の性。

ただ想定外だったのが日曜日の馬場。前日の競馬を見て「外有利」で予想しているのに午前中のレースで内から馬が抜け出してくる。造園課さ～ん、馬場を維持する努力には敬意を表しますが、こーゆー頑張り方、止めてもらえまんせんかね？

スローペースということも相まって終わってみれば上位６頭の内、４頭が内２頭分を通った馬という結果になった。

外に持ち出すロスが少し発生したシュネルマイスターを、外々を回りながら同馬を交わしていく時のスピード差を見ると着差以上の力差があったのだと思う。おそらく並みの強さの馬じゃ、４着が精いっぱいというコース取りだったと思う。

負けたシュネルマイスターは毎日王冠の時と少しデキが違っていた。体幹は上がったのと引き換えに少し硬さも見られたのが今回。加速は速くなるがキレ味が失われる可能性もあった。パドックの判断の難しさというのは、馬が変わった時にそれをプラスと見るか、マイナスとみるか？という判断で、馬によっては走らせてみないとわからないところがある。結果的にはこれでしっかり走れたので問題はなかったのだが、もしかすると毎日王冠の時のデキなら内からもっと差し返すような競馬ができたのかもしれない。こればっかりはわからない。

ダノンザキッドは前回よりさらに柔軟性が上がっていて、元マッスル大好きな自分としては「惚れてしまうやろ」というような状態だった。そしてデキが上がったことで前走とは全く違う能力を見せた。おそらくこれがこの馬本来の性能なのだと思う。ただこの馬は言ってみればディーゼルエンジン。馬力はあるが吹け上がらないので最高速度に限界がある。タイプとしてはキセキに近い。上位２頭とのスピード差は歴然だった。

中距離においてのスタミナはホープフルＳで見せているし、折り合いがつくなら距離は延ばした方がいいはずで、来年は時計勝負や上がり勝負にならない宝塚記念を目標にスケジュールを組んでいけば良いんじゃないかと思う。

インディーチャンプも昨年までの力があれば２着はこの馬だったと思うというくらいスムースな競馬で４着。６歳馬でありながらよく頑張ってるが、これが年齢的な衰えということ。

ホウオウアマゾンは今回体幹が良くなった。マイペースで楽に逃げられたことで直線差し返す脚も見せている。来年は1400ｍ重賞を獲れると思う。父キングカメハメハ×母父アグネスタキオンでかなりの筋肉量のスピード馬なので、マイルというよりスプリント路線を目指して馬を作っていくのがベターかもしれない。

サリオスは結局、仕上がらなかったなぁ。未完の大器は未完のまま。脚元不安の影響が解消されているとは思えない。この先も難しいのかもしれない。

グレナディアーズは掛かって失速。コラムで書いた通りスピードを活かすには1200ｍの方が向いていると思うのだ。あるいはダート。状態は良いので陣営がどこでマイル戦に見切りをつけるか？新天地を探したいところ。