有馬記念回顧 ~「運」を持っている馬~

これだけの馬がダービーだけ勝てなかったのだから本当にツイてない。

もしエフフォーリアがダービーを勝っていたら菊花賞に回っていたはず。そしたらあの展開の菊花賞で勝っていたのだろうか?。あるいは菊花賞から有馬記念を使った場合に同じ結果が残せたのだろうか?。そしたらすべてがFになっっていたのだろうか?。

不確実な未来について予想するのが競馬だが、確定している歴史を振り返ってそんなことを考える時がある。あるはずのないパラレルワールド。

自分はギャンブルで「ツキ」をアテにしてないが、人生で「あの時負けて良かった」と思うことは結構ある。それで今があるからだ。競走馬もそんな勝てなかった「運」が大事なのかもしれない。

6.9 - 11.3 - 11.6 - 11.5 - 11.9 - 12.5 - 12.6 - 12.2 - 12.4 - 12.4 - 12.2 - 12.0 - 12.5

おそらくエフフォーリアが初めて経験するスタミナが問われるレースになった。最後は苦しくなってもう一度手前を替えたが、内で粘るディープボンドを競り落とし、祖父に続き3歳にして有馬記念を勝利した。やはりこの馬は有馬記念を勝つように生まれてきたような傑作だった。

デキに関して言うと天皇賞が90点なら今回は85点だったように思う。本来はもっと動けるはずの馬で、なんとなくおとなしく見えた。ただ少しデキが落ちたことでいつもよりスピードが出なくなり、その分、折り合いは楽になったので直線あの粘りに繋がったという見方もできる。

ちなみに「仕上がると掛かる」というのがちゃんと馬を見られる人の常識で、いつもよりスピードが上がるのでレースで抑えるのが大変になるということはよくある現象。もしかすると陣営としては今回、仕上げ過ぎないということを意識したかもしれない。まあ本当のところはわからないけど。

この馬の来年はどうなるのか?。祖父シンボリクリスエスは翌年の有馬記念で9馬身差の圧勝をして見せた。3歳時より4歳時の方が強くなって当然だ。ただ祖父が宝塚記念で5着と負けたように、馬場状況を含めもっと厳しい展開の競馬があった時にこの馬のスタミナがどうなのか?という点だけが数少ない不安材料として残っていると思う。そしてもちろん、そんなことを杞憂に終わらせてしまうだけの馬の可能性が十分ある馬だ。かつてのテイエムオペラオーに並んでしまうような、そんな馬になるのではないか、思っている。


クロノジェネシスやステラヴェローチェたちが思ったほどのデキではなかったのと対照的にこの馬のデキの良さが目について仕方がなかった。そして予想段階でフォア賞を楽勝したスピードを無視したことが予想の敗因の一つだったと思う。ただ2着に好走できたのは4コーナーでCデムーロがまるでサイクルロードレースのアシスト選手のような動きで内をスっと開けてくれた大きい。じゃなかったら壁になって待たされていたはずだ。

この馬の来年の目標は天皇賞春の連覇だろう。大阪杯や宝塚記念だとそこまでのスピードがないので道悪にならないと苦しいかな。重たいキズナ産駒の弱点でもある。


完璧だった昨年の馬体に比べると体幹が下がってしまい冬毛も少し目立つデキ。ただそれで「消し」みたいなのは馬を0か1かでしか考えない人の話。動き自体は良かったし十分走れる態勢だった。ただ4コーナーで馬群で少し待たされたにせよ前2頭に坂上で迫って行けなかった辺りが今回の体幹ダウンの影響だったように思う。それでも暫定TPで81なので昨年と1ptしか変わらない。馬を見ることと結果の差というのはこのくらいの差な時も結構あるし誤差みたいなことも存在する。そこがデキで出し入れする「相馬」の難しいところだ。

いわゆる「いい子なんだけどね」という馬。立て直してデキは良い。ただ唸るような「凄み」を感じさせるレベルに至らない。今回は外から力を出し切って、このメンバー相手0.3秒差の4着。暫定TPも80と過去最高値。馬体のバランスの良さは折り紙付き。でも勝ったレースはすべて道悪という馬場状況。真面目な馬なので来年も大崩れしない競馬が続きそう。勝つときは雨頼み?。ただ、どこかで馬体に「凄み」を感じさせた時がこの馬が化ける時だと思っている。それがいつか?はわからないけど。


デキに関しては文句なかった。競馬も番手で我慢は利いていた。それで離された5着というのがこの馬の現在地だ。

やっぱり上位4頭と比べると小さいというのがこの馬の弱点だと思う。例えダービーが折り合えてたとしても、上がりの速い勝負をしたら絶対に敵わないというフィジカル。なので今後もスタミナが問われるレースでしか好走はできないはずだ。

ただ難しいのは必ずある程度人気になることで、そうなると有力馬たちのマークを外せない。つまり菊花賞のような競馬は難しい。人気が落ちるまで待つというのがこの馬の扱い方になるかもしれない。


今考えると、菊花賞に出走するなら、あの神戸新聞杯を使っていたかもしれない。この秋1戦増えることで疲労が出たかもしれない。コントレイルはダービーを勝ち、菊花賞を使ったことでその後が少し狂ってしまったように。

何が良かったか?誰にも正解はわからない。わからないが「もっとも運のある馬が勝つ」と言われるダービーを勝たなかった「運」を持っている馬だと思っている。


年内の時間が少ないのでホープフルSの回顧は来年正月に予定してます。

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