50オンナが歓楽街で働きだしたお話⑥

「ボトルを入れるというのは
男の方のプライドだから
入れていただいたボトルは
大切にしないといけないと思っているんですよ」
スナックで働く前に
たまたま北新地のとあるクラブの
ママから聞いた言葉。
「数ヶ月いらっしゃらないからといって
奥にしまうなんて論外です」

その時は漠然と
へぇ〜そうなのか、位にしか思ってなかった。

実際にスナックで働き出して
ボトルを入れるというのは
どんな気持ちなのか知りたくなった。
あと、わたしはビールしか飲めないので
ほかのお酒も飲めるようになりたいと思った。
これ以上、中性脂肪の数値が上がることを
阻止しなければならないという
切実な思いもそこにはあった。
主治医からは
「これ以上あかんてなったら
ドクターストップかけるから大丈夫だよ」
などとやさしい言葉をかけられたが
そんな恥ずかしいことになってはならぬ。
ビールの飲み過ぎでドクターストップなんて
聞いたことない。

ある日ママに
「ボトル入れたいんですが…」と言ってみた。
すると
「そうやってがんばって勉強してくれることが
うれしいな」といって
きっとわたしも飲めるであろう
だいやめのボトルを入れてくれた。
ライチのような香りのする芋焼酎。
黒の瓶に自分の名前が入ったタグ。
最高すぎる…
その瓶を眺めながら飲むソーダ割りは
この上なくおいしかった。
そうか、こういう気持ちなのか…

嬉々としてInstagramに
ネームタグ付きのボトルをアップしたところ
酒好きの後輩からDMが届いた。
「つぎはワインか日本酒も…」
ふざけるな。
ボトルはプライドだ!
飲みたい酒があるなら自分で入れるんだな!
会ったときにそう言い放つと
後輩からは苦笑いしか返ってこなかった。
かっこいいオンナになりたかったが
ただの酒好きの暴君になってしまった。

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