いきなりキレられたお話

わたしが父の大声を聞いたのは
たった2回と記憶している。
小2のとき。
晩ごはん前に何かやらかしたらしく
わざわざお布団を敷いている部屋に
連れて行かれ
お箸を持ったままお布団の上に投げられ
思わず「お腹すいた…」呟いたら
「お父さんやってお腹すいとるわ!」
1回目。
高校合格したとき。
父と2人でお寿司を食べに行き
調子に乗ってボタンエビ(地価)を頼んだところ
「なんでボタンエビ頼むの‼︎
2回目。
いずれもまったく恐怖はなく…
キレられたというイメージもなく
穏やかすぎる父のおかげで
わたしは怒鳴られることが
ほとんどなくここまで生きてきた。
(時代もあり、仕事では数回怒鳴られた)

実家から店への届け物があり
自転車でゆっくり走っていた時のこと
でっかいヘッドホンをつけた
サラリーマンとお見合い状態になってしまった。
相手との間隔は1メートル以上あったし
ぶつかりそうってこともなかった。
道も広かった。
だけど
こちらは自転車だし邪魔になったし
謝ろうとしたところ

危ないやろがこらぁ‼︎
気をつけて走らんかこらぁ
‼︎

いきなり巻き舌で怒鳴られた。
怒鳴り声というのは思考を停止させる。
心臓がギュッてなったけど
いやいや…
こっちはスピード出してたわけでも
ぶつかりそうになったわけでもなく。
お見合いはしてしまったから
道は塞いでしまったかもだけど
危ないから気をつけてよ。
くらいは言われるかと思ったけど
巻き舌で怒鳴るほどのことか?
そう思うと少し腹が立った。

で、ここから先は完全に
わたしが良くないんだけど
去っていくサラリーマンを見て
つい「うるさいなぁ…」と呟いてしまった。
本当にこれはダメだったと思う。
すると

なんやとこらぁ‼︎
戻ってくるサラリーマン。
更に激ギレ。
そりゃそうなるわな。
自分の浅はかさに頭を抱えたくなった。
だからもう
相手の気が済むまで罵倒されてやろうと
サラリーマンの目をまっすぐ見据えて
罵倒を受け止めることに。

するとサラリーマン
危ないやろがこらぁ‼︎
気をつけて走らんかこらぁ
‼︎
ひたすら繰り返す。
いや、うん。
それはわかった。
万が一、押されたり殴られたらどうしようかと
考えながらも
その2つのセリフの罵倒をひたすら受け止める。
サラリーマンはその言葉を
しばらく繰り返したあと
言うことがなくなったのか
怒鳴りすぎて息が切れたのか変な間ができた。

なので聞いた。
「もう行っていいですか?」

するとサラリーマンは
怒鳴り散らしていたのが嘘のように
静かになった。
気が済んだのか
気が抜けたのか
それはわからないけれど
ひとまず落ち着いたようだった。

その後
「危ないことはしないで!」と
ママからしっかり怒られたのは
言うまでもない。

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