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Q6 「再エネ」太陽光パネルは毒物を含んでいて廃棄が心配

今回のシリーズではパシフィコ・エナジー株式会社の社長の松尾大樹が太陽光発電所に関する様々な疑問に回答します。

今回は太陽光パネルには有毒な物質が含まれているのか、また廃棄はどうなっているのかについて、当社の取り組みと合わせて紹介したいと思います。

1.太陽光パネルの有毒性

まず経済産業省によれば、太陽光パネルには、パネルの種類によって、セレンカドミウムなどの有害物質が含まれているそうです。

この有害物質の内、はパネルの電極を繋ぎとめるハンダ部分に含まれているとされています。

次にセレンは日本のパネルメーカーであるソーラーフロンティア株式会社が製造しているCIS化合物型太陽光パネルに含まれます。

そしてカドミウムは米国のパネルメーカーであるファーストソーラーが製造しているカドミウムテルライド化合物型太陽光パネルに含まれます。

当社が採用している太陽光発電パネルは結晶系シリコン系を採用していますが、上記のセレンやカドミウムを含む化合物型太陽光パネルは使用しておりません。シリコンは、その成分構成に毒性の物質を持たず、化学的に安定で生理的にも不活性で、生体適合性も有しているので、万一、誤って食べてしまっても、人体には無害と言われており、医療、食品、化粧品関連の分野に多く使用されています。

また、電極のハンダには日本太陽光発電協会(JPEA)基準である鉛含有率0.1質量%以下のハンダを使用していますので、有害性は低いと言うことができると思います。

なお、宇宙空間で活動する人工衛星などに採用されている太陽光パネルには、人体に対して有毒なヒ素が含まれているものもあるようですが、宇宙用の太陽光パネルは極めて高コストなため、一般には流通しておりません。従って私も目にしたことがありません。

まとめますと、当社が使用している太陽光パネルにはセレン、カドミウムが含まれておらず、鉛も基準未満であり、人体に対してそれほど有害ではないということが言えると思います。とはいえ、設備が専門家によって適切に扱われ、事業終了後に適切な方法で廃棄・処理されることが必要であることには変わりありません。

2.廃棄の問題はどうなっているのか

では次に廃棄問題はどのようになっているのでしょうか。さきほどの経済産業省のウェブサイトによれば2023年現在では特に問題にはなっていないようですが、発電所の寿命が短いと2030年くらいから廃棄が始まるかもしれず、2038年くらいに年間80万トンの廃棄物が太陽光発電所から排出され、それが年間の産業廃棄物の処分量の6%にも上り、これでは最終処分場がひっ迫して大変だ!ということのようです。

まず年間の産業廃棄物の処分量というものを見てみましょう。環境省の直近の発表によれば令和元年度の総排出量が3億8,596万トン。これだと年間80万トンの太陽光発電からの廃棄物は0.2%ほどで6%と随分開きがあります。
次に分母を"電気・ガス・熱供給・水道業"の1億101万トンにしてみても、太陽光発電からの廃棄物は0.8%ほどです。

廃棄物の量が多くなることは良くないことだと思いますが、最終処分場の需給がひっ迫するような量なのかについては疑問が生じます。私が何かを見落としているのかもしれません。

次に他の発電形式と比べてみましょう。
日本フライアッシュ協会によれば、石炭火力発電所から2019年に発生した石炭灰(石炭の燃えた後に残る灰)は年間854万トンだそうで、実に経済産業省が想定する太陽光発電所からの最大の排出量年間80万トンの10倍を超えています。この854万トンの石炭灰は毎年発生しているもので、年間80万トンの太陽光発電パネル廃棄量は想定されるピークのものです。電気・ガス・水道などのインフラからの廃棄物はかなりの量がありますが、太陽光パネルの将来的な廃棄はその中でとても小さいものと言えます。

https://www.japan-flyash.com/about.html

3.太陽光発電所からの廃棄物とは??

太陽光発電所は太陽光パネルだけで稼働するわけではありません。太陽光発電所の構成について一般情報では調べても出てこないので当社の作東発電所を例に構成を調べてみました。

重量ベースで太陽光パネルが約25%、架台基礎・支柱部分が鉄とアルミで60%、ケーブルなど銅線が8%、その他が7%程度の構成でした。
このうち鉄とアルミの架台基礎と部分と銅線ケーブルの計68%の部分はスクラップとして既存のリサイクル業のシステムの中で有価物として買われ、不要なものをスクラップ業者さんが除去した上で再使用(リユース)やリサイクルがされていきます。

問題となっているのは25%の太陽光パネルで、中には銅や銀がわずかに含まれるのですが、殆どがガラスでありそれをくっつけている接着が強力なため、金属を綺麗に取り出すコストがとても高く、太陽光パネルをそのまま廃棄して埋め立ててしまう方が経済的だということのようです。今後の技術革新によりリサイクル可能な技術が待たれます。

4.きちんと廃棄はされるのか?

色々と対策がなされても、結局のところ太陽光発電所の操業が終わるのは10年も20年も先なのだから、その時点で事業者は適切に処分をしないのではないかという疑問があるかと思います。

撤去の実行については、2022年4月1日より太陽光発電所はパネル撤去のための費用積立が法的に義務化され、撤去費用の積立金が事業者から徴収され国の指定する組織において積立られることなりました。これにより撤去の実行が国によって管理されるようになりました。

なお、当社は撤去費積立の法制化以前から、独自に積立を各事業用途で行ってきた他、作東太陽光発電所では市が指定する銀行口座に撤去費積立を行い市から質権設定を受けて市が管理できるようにするなど、独自に地域の要請に従った取り組みを行っています。

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「撤去費用を外部積み立て」

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