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当たり前を当たり前に

 相手の目を見て話す、嘘はつかない、「ありがとう」「ごめんなさい」を言える人間になる等我が家では「当たり前のことを当たり前にできる人間であること」を最重要視しています。

また目まぐるしく変革する世の中で「当たり前」がぼやけしてしまうこともありますが、私が再生可能エネルギー事業に携わり、その中でもパシフィコ・エナジーでアセット・マネージャーを務めるのは私なりに「当たり前」を全うするものです。

 私は生まれて18年間アメリカ、ニュージャージー州の小さな田舎町で育ちました。幼少期、夏は芝生で水遊び、秋は集めた落ち葉に飛び込む、冬は雪合戦とソリ遊びと当たり前に自然が遊び場でした。そんな当たり前が貴重であったことに気がついたのは自分が東京で親になってからでした。長男が5歳になり昆虫図鑑を一緒にみていた時、「これ、なーんだ」と私が蛍を指すと息子はポカン。「お尻が光る虫」だよ、と言ってもポカン。そう、息子は蛍を知りませんでした。私にとって夏の始めの遊びと言ったら、夕方水撒きをした家の周りを舞う大量の蛍を捕まえること。縄跳び、かくれんぼなどと同類の遊びという認識であったため蛍を知らないことに衝撃を受けました。しかし無理もありません。東京の住宅街では蛍は飛んでおらず、せいぜい動物園でガラス越しに数匹見えるくらいです。

思いっきり大自然の中で夜の空を飛ぶ蛍を追いかけさせてあげたい!この当たり前を叶えてくれたのは細江発電所での蛍観測でした。
(細江発電所 蛍鑑賞はこちら

2022/5 長男が蛍鑑賞の後描いた絵
2022/5 発電所横で緑カエルを探す長男

 これは小さな事例の一つにすぎませんが、子供達世代が思いっきり遊び、様々な体験をし、私たちがその昔抱いたような将来の夢を自由に唱え安心して夢を追いかける環境をつくることが我々の任務であると信じています。そして自分にとって再エネ事業に携わることはごく自然な運命と捉えています。

その中でも私はアセットマネージャーという立場で当該事業に携わらせて頂いています。

「アセットマネージャーの役割って?」とよく聞かれますが、私の回答は「当たり前な状態を維持し、他チーム員が最大限の力を発揮できる環境・状況を作ること」です。

発電所は100%稼働することが使命であり、「当たり前」とされています。しかしそこには機器の不具合、落雷、台風による倒木や制度変更など様々な予期せぬ事態が発生します。そこで我々アセットマネージャーはこのような予期せぬ事態を未然に回避する、発生したら最小限に損失を抑えるべく対応する、然るべき関係者に適宜情報共有するなど「当たり前」に回復するように努めます。現場で発電所を我が子のように毎日管理してくれている電気主任技術者は、我々にとっては最強のパートナーです。彼らがいかに発電所運用管理に集中できる状況を常に維持するかが我々の責任の一つでもあります。電気主任技術と共に現場の管理を担って頂いている保守運営業者の方々、各事業に多額な資金を投資・融資している投資家様、そして金融機関も大事なチーム員です。各チーム員、立場は異なるものの目的は同じ「発電所の安全、安定運転」であるため、当該目的に事業が向かっていることを常日頃管理していくことが我々アセットマネージャーの役割です。

ここまで読むとアセットマネージャーはただのトラブル対応担当のように思われるかもしれませんが、各発電所が所在する地域の皆様との共存共生を図ることも大事な任務です。

今やインターネットで調べれば大体のことは分かりますが、頭に残るのは実際見て触る体験です。そこで我々は機会があれば発電所近隣の小学生向けに太陽光発電所に関する講習及び発電所の見学会を開催させて頂いています。テレビ、スマホ充電、暖房や冷房など当たり前に使っている電気ってどうやって作られているの?太陽光パネル、おじいちゃんの家の屋根にあるけど何のため?再生可能エネルギーって何?と実は疑問だらけの子供たちは太陽光に関する講義を聞き、パネルを触り、最後に広大な発電所を目の前にして今まで当たり前としていた点と点がつながったようで満足気に帰ります。

太陽光発電所はパネルがたくさん並んで静かに見えますが、実は主技と保守運営業者の方々が毎日モニターで発電状況を監視すると同時に、発電所内を自ら歩き目視点検することに驚いていました。お母さん、お父さんや先生が毎日子供たちの体温を測って、顔色や食欲をみて当たり前に健康状態を確認するように、発電所の健康を毎日確認するためには多くの人が携わる必要があることに納得していました。

2022/10 発電所近郊小学校での講和

 「当たり前」は簡単なようだが意識せず、努力を怠るといつの間にか消えてしまうものです。これからも私に出来ることの中で「当たり前」を守り、発展させていきたいと思います。

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