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小太りお姉さんという人生

私は女性であるが、小さい頃から小太りな体型だった。健康診断に引っ掛かる程度でもないが、どちらかと言えば太り気味という分類の人だったというわけだ。
 何となく運動が苦手で何となく食べるのが好きという、私の人生がしっかり反映された体型と言えよう。そんな私は女子校育ちだったので周りに体型を指摘されることもなく、気が合うお友達にも恵まれそのまま健やかに育った。が、もちろんこの体型では見た目を褒められることもない。思わず同性の友人が写真を撮りたくなるほどのビジュアルではないというわけだ。

そのまま大学生活に突入し、コロナをきっかけに私はダイエットを始めた。バイトも学業も縮小され、圧倒的に自分のために使える時間が増えたからである。筋トレをして、ジョギングをして、好きなアイドルの動画を見て、カロリー計算をして…なんやかんやで5ヶ月で10kgほど痩せた。
その時BMIは22で、いわゆる「普通体型」を手に入れた。Lサイズが常だった洋服もMサイズを選べるようになっていた。自分の身体を鏡で直視できるようになった。バイト先では痩せたねと褒められた。コロナ禍で久々に健康診断のために大学へ行けば、健康的で素晴らしい体重バランスであると褒められ、道中に顔を赤らめたサラリーマンにナンパされた。
すごいモテ子になったわけじゃない。でもどこでも「若くて可愛い女の子」として扱われる。
きっと元々普通体型の可愛い女の子からしたら当たり前の日常。

私は呆気に取られた。
何ということだ。痩せるだけで世の中はこんなにイージーに変わるのか?

気をよくした私はマッチングアプリで彼氏を作った。
順風満帆な人生が始まると思いきや、このまま垢抜け街道を突き進めないのが、私を小太り人生たらしめる所以である。
私は大変飽き性で不器用なのだ。コロナが徐々に開けて大学や活動が増えることで、他の「頑張りごと」に気を取られて私はどんどんダイエットへの意識が離れていった。人付き合いに疲れてストレスで食べて、ジョギングウェアを見向きもしなくなった。結果もちろんリバウンドした。ちなみに彼氏とは一年続いたが方向性の違いで別れた。

そのままドタバタと学生生活を終えて就職して、ふと気づく。
男女含めた会社同期の中で私が最も太っているではないか。
男性の同期と飲み会でなぜか目が合わないではないか。
これは平均点が世の中の百点満点と思っている私にとって、耐え難い状況だった。目立ちたくない。普通体型に戻ろう。今なら間に合うはずだ。
一人では無理だと悟った私はXで見つけたパーソナルトレーナーにオンラインでトレーニングと食事管理の指導を申し込み、また3ヶ月で5kgほど痩せた。お金も飛んでいったが、実家暮らしだったのでノーダメージである。
そしてまた2年前と同じ生活が始まった。
洋服のサイズがMへ変わり、会社の同期に痩せたねと言われ、久々に参加したサークルの集まりでは顔を赤らめた先輩にデートに誘われた。
ものすごいモテ子になったわけじゃない。でもやっぱり「若くて可愛い女の子」として扱われる。
しっかり調子に乗って彼氏を作った。
そして同様に春には小太りに戻っていた。
彼氏とは相変わらず方向性の違いで別れた。

今は初夏なので、周りに合わせて痩せてきた。標準体型に近い。私はこの人生で小太りお姉さんを脱することができるだろうか。
そろそろ若さも尽きてくるし、方向性の違いで彼氏と別れている場合ではないと思うのだが、浮かれて作った彼氏は浮かれていない私とはそりが合わないようだ。でも浮かれていないと彼氏なんて欲しくならないので困ってしまう。ディズニーランドで買うカチューシャと似ているなと思う。
今年は年中浮かれていられるといいなと今日も体重計を見て思うのだ。


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