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偏ったウェルビーイング主義 (気候変動対策抑制カード10/12)

気候変動対策推進の足を引っ張っているさまざまな「主義」を、カードでご紹介しています(カードに関する詳細は最下部にてご覧ください)。

Card#10 APPEAL TO WELLBEING | 偏ったウェルビーイング主義

化石燃料は開発に必要です。化石燃料の放棄は、世界の貧困層は苦難にさらし、近代的な生活を営む権利を奪うことになるでしょう。

APPEAL TO WELLBEING | 偏ったウェルビーイング主義


偏ったウェルビーイング主義は、社会正義アピール主義がさらに極端になったものです。気候緩和策により基本的な生活が脅かされている、とりわけ発展途上国の貧しい人びとの生活が脅かされていると主張します。
偏ったウェルビーイング主義の中心的戦略は、エネルギー使用とそれに関連する移動、照明、暖房などによりもたらされるウェルビーイングを、化石燃料の使用と同一視させることにあり、よく聞かれる言葉は以下のようなものです。
「多くの環境活動家が要求する『できるだけ早い化石燃料の放棄』を実行すれば、何十億人もの人びとを貧困から救い出してきた成長を減速させることになってしまいます。」

偏ったウェルビーイング主義者のこの主張は、低炭素・分散型エネルギーサービスがもたらす可能性と、それを求める多くの人の存在を無視したものです。
それだけではなく、現在すでに貧しい人びとや社会から疎外された多くの人びとが、移動や暖房を享受できていないという事実も無視しており、彼らのウェルビーイングについては注意を払っていないことを示す議論でもあります。

実際、小規模で非中央集権型のエネルギー供給こそが、まさに発展途上国におけるエネルギー問題で必要とされているものです。
化石燃料の必要性やトランジション・ファイナンスについての議論は、現実には現体制の維持を求めているに過ぎない。
つまり、これまで通りのことを同じように続けたい企業やNGOのためのものでしかない。

APPEAL TO WELLBEINGのオリジナルの説明

先日、ロンドンの「イズリントン・クライメート・センター」を立ち上げた女性とお話しする機会があり、プレゼントに12枚のカードをいただきました。
カードは彼女も作成に関わったもので、英国発の環境保護団体「エクスティンクション・リベリオン(XR)*」が著作権フリーの制作物として提供しているそうです。

*エクスティンクション・リベリオン | 市民的不服従、非暴力の直接行動を用いて気候変動に対する政治的な決断を促す市民活動団体。
(ところで、この機会にXRについて改めていろいろ調べ、UKで暮らす人たちに意見を聞いてみたのですが、おれが日本で思っていたような「過激な組織」という印象を持っている人は少なそうでした。
やり過ぎてしまうメンバーが一部存在しているものの、規模からすれば当然で、むしろ抗議活動の行い方としては「真っ当」であり、市民や警察に対しても協力的と捉えている人が多いようでした。)

日本とは文化的な違いもありわかりやすくはないものの、それでも通ずるところや感じるものが多いものではないかと思ったので、テキストの日本語訳を考えてみました。
イマイチなところも多々あるだろうなと思うので、「この方が良くない?」とかアイデアがあれば教えてください。そしてもし「イラストを含めて日本語版を作ってみたい」と思われるデザイナーやプランナーの方がいらっしゃったらお声掛けください。

Happy Collaboration!

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