見出し画像

2020.2.13

本日、地鎮祭を無事に終え、工事の安全を祈願してきました。僕のお店Villa della Paceは10月の移転オープン、オーベルジュとしての再スタートに向け、いよいよ工事がスタートします。


この場所は元々30年ほど前に塩津海水浴場として塩津の町会が運営していました。その際に建物が2つ建てられ、一つは飲食店を兼ねた休憩所、もう一つはシャワーや更衣室、トイレがついた建物でした。海水浴場が閉鎖された後は休憩所の建物は塩津の集会所として使われていましたが、近くの塩津保育園が閉園になると集会所はそちらの場所に移り、残った建物は基本的に使われることがなく、町会が管理し続けていました。

ここは七尾湾の奥まった場所で、能登島が防波堤の役割を果たしているため高波は来ずに穏やかな海が目の前に広がっています。海の向こうには和倉温泉街を眺めることができ、天気が良ければ更にその向こうに立山連峰がくっきりと浮かび上がります。海岸を少し歩けば手付かずの自然が残されていて、僕にとってはこれ以上ない理想の場所でした。


移転先はこの場所にしようと思い、塩津出身の仲間がいたので相談し、現町会長と引き合わせてくれました。建物自体は町会の物ではあるけれど、土地自体は行政の持ち物だから、行政の許可がおりれば使ってもらって構わないと町会長は仰いました。早速市役所に問い合わせたところ、10年以上更新されない情報や書類はすべて廃棄されてしまうとのことで、塩津海水浴場に関する情報はもう何も残っていないと。だから使用許可を出すことは出来ないと言われました。

それでも諦めることはできず、七尾街づくりセンターの協力の元、石川県の方へ問い合わせたところ、時間はかかりましたがいろいろ調べてもらいました。すると、あの海岸自体は国有地であり、使用面積に応じて海岸占有料を県に支払えば使用許可が下りるということが判明しました。海岸占有料の金額も大した額ではなく、合わせて集会所の建物のすぐ近くまで下水が来ていることも判明し、現実的にこの場所でレストランを営業することは可能だということが判明しました。

この場所と初めて出会ったのが一昨年の夏、時間はかかりましたが無事に着工まで来ることができました。多くの方の協力や理解があったからこそこの場所に来ることができるし、4年前移住するときにこの場所でできることはまずなかったと思います。


店作りは一人でできるものではありません。一昨年にこの場所と出会って真っ先に設計をお願いしようと思ったのは、金沢の継手意匠店の岩本さん。僕がこの場所でやりたいことや作り上げたい世界観にただただ共感してくれ、それを理解しようと精一杯努力をしてくる、そんな姿勢の彼が一緒にプロジェクトを進めていく上で絶対に必要なパートナーだと感じました。施工は高岡の堺谷建築の中城さんが指揮を取ってくれます。三者でミーティングや視察を重ね、着工まで時間はかかりましたがその分素晴らしいチームになったと実感しています。

まずは海水浴場跡地の裏手の空き地に建てる宿泊施設を兼ねた自宅の工事からスタートです。

能登の良さは深掘りしないと見えない部分が多いと思います。外から見ても実際に住んでみても、表面的に見える部分はそう変わらない気がします。たとえば能登を代表する食材の鰤や蟹なんかは、鮮度の違いはあると思いますが実際東京でも食べられる。本当に能登に来ないと食べられない食材、それは雑魚の魚だったり山や田んぼの脇に自生する木の実や野草だったり、消えかけている文化や伝統が生み出すものだと思います。地元の人が普段口にすることがないものであっても、そういったものから僕は能登らしさを感じ取れると思うんです。僕はそれを料理だけじゃなくて空間やしつらえでも表現していきたいし、それを実現できるチームだと思っています。

2020.2.13

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?