創作「A,B,C の問題」③

1.二年前
B「やっぱり、Aさんっておしゃべりな人ですよね。バイト先でももっと喋ったらいいのに」
A「いやいや。それは無理だよ。俺は内弁慶を文字通り生きてきた人間だからね。外交的な人間になるのは、重力がひっくり返っても無理だろうね」
B「そうなんですか。もったいないな」
A「そんなこと言ったらBだって。バイト先でも今日みたいにもっと笑ったらいいのに」
B「だってバイトのメンバー面白い人いないんですもん。前にいたCさんくらいですよ、面白かったの」
A「Cねぇ。あ、そういえば、Bって今でもCと連絡取ったりするの?」
B「え?いやいや。そもそも連絡先知らないし」
A「でも、今日聞いたよ?Cから」
B「......何をですか?」
A「全部」
B「......」
A「いやあ、まあそんな反応にもなっちゃうわな。なんか、申し訳ないな。あいつ、口軽いで有名だからさ。まあ許してやってよ」
B「......ごめーーー」
A「ごめん。さっきも見てたでしょ?俺、彼女いるんだ。同じバンドのメンバーで付き合ってるってなったら、結構やりにくいかもしんないけど、まあそこは気にしないで。なんなら、ベースの香坂と付き合ってもいいんじゃない?あいつ、格好いいし」
B「......了解です。ありがとうございます。でも、大丈夫です。私これからも、Aさんのこと狙ってますから」
A「あぁ...。お手柔らかに...。じゃあ、俺こっちだから」


2.一年前
C「あぁ、付き合えたのね」
B「はい。先週。空きたてホヤホヤの席、すぐとっときました」
C「差し支えなかったら、ことの経緯教えてもらっていい?」
B「経緯も何も、ただただ押しただけです」


3.一年三日前
A「いやBは今、香坂と付き合ってるじゃん」
B「でも全然好きになれないんで。ずっとAさんのことしか考えられないし」
A「嘘だろ。香坂と付き合ってどれくらいだっけ?」
B「9か月」
A「長いよ。その間、ずっと香坂のこと好きにならなかったの?」
B「なんか自分のこと面白い、って思ってる感じがずっと気に入らなかったです」
A「それは、分からなくもないけど。香坂が可哀想だよ。あいつ結構Cのこと好きだったんだからな」
B「それは分かってます。6時間くらい話し合って、分かってもらいましたから」
A「え、別れたの?」
B「それくらいしないと、私の本気度分かってもらえないと思って」
A「そう言われてもな...」


4.一年前
B「で、そのまま押していったら、了承してくれたって感じです」
C「相変わらず押しに弱いよな、Aは」
B「そうなんですか?」
C「そうだよ。だって前の彼女と別れた理由も多分、俺が押したからだもん」


5.一年一週間前
C「お前の彼女、この前男とラブホテルから出てきてたよ」
A「それ、本当か?いつの話だ」
C「丁度一週間前かな」
A「...見間違いじゃないか?」
C「いや、そんなことない。お前の彼女、最近ボブにしたろ?」
A「そうだよ。いや、そうだとしても、俺一週間前に彼女の家泊まったんだよ。いたもん、ずっと一緒に」
C「いつから?」
A「あいつが、昼間は妹の引っ越しの手伝いがあるからってんで、夜に集まったんだよ」
C「え、彼女の実家泊まったってこと?」
A「いいだろ。親は妹と一緒に向こうの家に泊まったんだよ。広い実家に二人きりだよ」
C「まあ、それはいいんだけど。大事なこと言い忘れてたわ」
A「なんだよ?」
C「俺がホテルから出てきたのを見たの、昼間の話だぞ」
A「え?じゃあ」
C「お前に嘘ついて、別の男と遊んでからお泊りデートにうつつ抜かしたんだよ、きっと」
A「...まじか」
C「ろくでもない奴だよ。あの女は」
A「......」
C「次いつ会うの?」
A「サークルは明後日」
C「そのときに色々聞いてみたら?俺の勘違いって可能性もあるわけだし」


6.一年前
B「ありがとうございます」
C「いやいや。感謝される筋合いは何にも。おめでとう」
B「じゃあ、また」
C「ああ。お幸せに」


7.一年二週間前
D「どうしたら見逃してくれる?」
C「どうするもこうするもない。俺は自分が見た事実だけを頼りに、判断し行動するだけだ」
D「そうだよね。Cはずっとそうだった。そういうところが好きだし、だけど、大っ嫌い」
C「褒め言葉として受け取っておくよ」

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