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障害福祉サービスの評価にも生産性の視点を

私たち持続未来グループでは障害福祉サービス事業を行っています。
この障害福祉サービスは、厚生労働省の管轄下にあり、3年に1度報酬が改定されるという点で、医療や薬価、高齢福祉などと同じと言えます。

この報酬とは、私たちのような事業者に国と地方自治体から支払われるお金のことです。(「国と地方自治体から支払われる」と書きましたが、原資は皆さんが支払われたお金です)

3年に1度行われる報酬改定、定期的に見直しをかけることは重要だとは思うのですが、その内容が公表されるのが毎回2月なんですね。毎回けっこう変更があるのですが、毎回「じゃ、4月からこの内容でよろしく」となるわけです。

準備期間2ヶ月無いわけです。もう少し余裕持ってできないものですかね。

しかし、今日言いたいのはそのことへの文句ではありません。
障害福祉サービスにも、もう少し生産性の視点を入れたほうが良いのではないかということです。


■ 長時間働く方が評価が高い


私たち持続未来グループでは、障害福祉サービスのひとつである「就労継続支援A型事業所」を運営しています。
この報酬も今回見直しになるのですが、その見直し内容を見て考えてしまいました。

4月からは次のような評価がなされるそうです。
※点数が高い方が評価も高い=報酬も高いということです。

7時間以上 :90 点
6時間以上7時間未満 :80 点
5時間以上6時間未満 :65 点
4時間 30 分以上5時間未満 :55 点
4時間以上4時間 30 分未満 :40 点
3時間以上4時間未満 :30 点
2時間以上3時間未満 :20 点
2時間未満 :5点

要は長時間雇用する方が評価が高いわけです

■ 時間だけをモノサシにするのではなく


就労継続支援A型事業所は雇用型ですので、働く障害者と雇用契約を結びます。つまり、最低賃金が適用されるので、長時間働く方が給料が上がります。
(「そんなの当たり前だろ」と思われるかもしれませんが、就労継続支援B型事業所という最低賃金が適用されない形態もあります)

だから、長時間雇用するということは一定額以上の給料が支払われるということなので、このような評価システムにすることには合理性があるとは思います。

しかし、このモノサシには疑問も持ちます。

「長時間働いて給料が高い」よりも「短時間働いて給料が高い」方が、生産性の視点で見ると優れているのではないでしょうか。

見方を変えましょう。
このモノサシの裏には、「就労継続支援A型事業所を利用する障害者は高い付加価値を生み出すことはできない」あるいは「最低賃金程度しか稼げない」という考えが透けていないでしょうか。

もちろん、就労継続支援A型事業所は一般就労が困難な人を対象にします。賃金が安くなるのは不自然なことではありません。

しかし、事業所を評価するモノサシとして順番をつけるなら「短時間働いて給与が高い」方が「長時間働いて給与が高い」よりも上ではないでしょうか。

■ 短時間しか働けない人を雇用すると損になってしまう


また、もう一つの視点は、このモノサシで評価されると、短時間しか働けない人を雇用し訓練することが、事業所の収益性からは損失になってしまうということです。

これは困ったことです。
なぜなら、すぐに長時間働くことができない人、訓練することによって徐々に働く時間を伸ばす人は多く居るからです。

こうした観点からも時間だけで評価することには無理があると感じます。

■ 少しずつベターを積み上げて行きましょう


色々書きましたが、就労継続支援A型事業所には、障害者の就労時間を短時間(例えば4時間程度)に抑えることで利益を上げる、いわゆる「悪しきA型」と呼ばれるような事業所が存在するという問題もあります。
(なぜ就労時間を抑えると利益が上がるのかについての説明は省略しますが、簡単に言えばシステム上のバグのようなものと考えてください)

正直、地域によってはこうした悪しき事業所ばかりが多いため、就労継続支援A型事業所=悪ととらえられることもあります。(まさに私たちが事業拠点を置く広島市がそれに近いのですが…)

そうした悪しき事業所を駆逐するためにもこうした評価基準にしているのは理解できるのですが、3年後はもう少し生産性の視点を入れて評価基準を修正することも必要と考えます。

いきなりベストは作れなくても、ベターを積み上げることでベストに近づくのですから。

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