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東京芸術祭2024ファームスクール スクールトークサロン レポート

スクールトークサロンについて
東京芸術祭が取り組む人材育成事業「東京芸術祭ファームスクール」では、2024年9月21日・22日に「スクールトークサロン」を東京芸術劇場・ロアー広場にて開催しました。
本プログラムは、東京芸術祭 2024 上演作品を事前に鑑賞して参加者同士で感想を話し合った後、クリエイションに関わったアーティストを招き、作品の内容や作り手の考えについて参加者と対話を行うというもの。
東京芸術祭ファームスクールと、まちがアートとともにイノベーティブな原動力を生み出すためのパイロットプログラム「有楽町アートアーバニズム YAU」が連携して開催するユースプログラム「ファーストライン」の公開プログラムとして開催されました。
2ヶ月にわたる「スクールトークサロン」プログラムに通しで参加中するアートマネジメントに興味のある 10〜20 代の若者たちに加え、この「スクールトークサロン」単発で参加した学生たちが参加し、活発な議論が行われました。

※ファーストラインの様子はこちらの記事にてご紹介しています。

プログラムの流れ
本プログラムでは、作品を軸に、舞台芸術に関心がある若者たちが、第一線で活躍するアーティストの生き方・考え方に触れることを目的にしています。そのため、対話が生まれる場の構成を考えるところから、プログラムの準備は始まりました。
登壇したアーティストに観客が作品内容の質問をしてアーティストが答えるという形は舞台公演のアフタートークでも多く用いられますが、アーティストに作品に対する正解を求めるということにもなりがちです。
そこで本プログラムではアーティストが入らず、あえて参加者同士で話し合いながら作品内容を振り返る時間を最初に設けました。
参加者は自己紹介をしつつ、それぞれの視点から作品内容で気づいたこと、不思議に思ったことなどを話し合います。
お互いに見ていた部分や作品への考え方が少しずつ違う中、一つの正解を追うことなく、複数の情報や解釈を持ち寄っていくことで、それぞれの参加者は、一人では思いつかなかった新しい見方を発見し、より作品内容を深めていく様子が伺えました。

参加者同士での話し合いの後は、いよいよゲストを交えての対話の時間です。
21日(土)のゲストは、コンドルズ主宰の近藤良平さんと、ダンサーの石渕聡さん。
当日、2回の本番を終えた後に駆けつけてくださった二人と、作品を観たばかりの参加者が、活発な意見交換を行いました。
野外で市民参加の作品を上演することについてや、作品制作のプロセスなどを聞く中、逆にコンドルズの二人からも、参加者たちの創作環境や、劇団・カンパニーなど集団を作っていくことをどう考えているかなど、フラットな関係で互いに話し合う時間が生まれました。

近藤良平さん(コンドルズ)
石渕聡さん(コンドルズ)

22日(日)のゲストは、木ノ下歌舞伎主宰の木ノ下裕一さん。
木ノ下さんからは、作品創作時の自身の役割を紹介していただいた後、参加者からの質問に答えていただきました。今、歌舞伎を現代演劇として上演することの意義などを熱く語ってくださった木ノ下さんの人柄に触れ、参加者たちの作品に対する、関心がさらに深まっていく様子が印象的でした。

木ノ下裕一さん(木ノ下歌舞伎)

プログラムの意義
終わった後、参加者からは
「コンドルズのお二人が丁寧に向き合ってくださり、その大人としてのかっこよさが印象に残っています」
「木ノ下さんの話には説得力と熱量を感じました。現代の人に楽しんでいただきたいという思いが一貫していて、感動しました」
「トークサロンに参加していなかったら、変わった演出だなぁと思っていたけど、すとんと腑に落ちることができた」
と言った声が寄せられました。多様な考えを知って学ぶ機会となったことはもちろんですが、第一線で活躍するアーティストと直接対話するからこそ参加者が実感できたものも多いことが伺えます。

またプログラムを通じて、参加者同士の交流が生まれたことも特徴的です。
ゲストからは、普段活動している場所を超えて、同世代でつながれるこの機会を大事にした方が良い!との熱いアドバイスも。参加者たちはプログラム終了後も、その場で長く話し込んでおり、このトークサロンが、人と人をつなげる貴重な場となったことが伺えました。

(藤原)

写真:古田七海