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ダンジョン・ワールドをソロプレイ 本編1
このプレイログについて
このプレイログは、「Solo Dungeon World」を使用してナラティブ系TRPG「ダンジョンワールド(日本語版)」のソロプレイのセッションを行った際の記録です。
前回の「準備編」で、キャラクターとフロントを作成し、最初の場面を終えました。
準備編はこちらです。
【ダンジョン・ワールドをソロプレイ 準備編】
一部にルールの意図的な改変や省略、単純な誤解があります。
これまでのあらすじ
旅の戦士ホークは、陰惨な生贄の儀式から逃げ出してきた子供に助けを求められ、その追手を撃退しました。
子供はウフラル国の王族たる「光の血筋」を名乗り、ホークに頼みごとをしたいようです。
ウフラルは政変の最中で、王族が次々に処刑されています。ホークにははたして、この非力な子供を守ることができるのでしょうか?
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場面2:水辺にて
質問:子供の体を洗う場所はあるだろうか?
ダイスロール:7/きれいな水が流れている渓流の位置を思い出せるが、厄介なことが起きる。
夕日もとっぷりと暮れて、渓流の水は冴え冴えと冷たい。
俺は今、子供が体に巻き付けていた麻袋を取って水を含ませ、肌に描かれた紋様をひとつひとつ丁寧に洗い落としていた。
紋様を描く塗料は赤い塗料を混ぜた泥を膠でゆるく固めたようなもので、ただの水と麻布で取るのにはかなり時間がかかった。全て取り終えるころには、真っ白な肌はところどころ赤くなっていた。
あの黒衣の連中に捕らえられていた時、泥で紋様を描かれる以上の忌まわしいことが起きていたのが、子供の体を洗っていると段々と察せられてきた。
麻袋よりはいくらかましな外套を巻き付けて、さっき切り取ったザイルで留めてやる。
子供はようやく一息つくと、緊張の糸が切れたのか、へなへなとその場にうずくまって何も話さなくなってしまった。
「お、おい?」
話を聞けなければ困るんだが……
小さな肩を震わせてさめざめと泣き始めるその姿を見ていると、それ以上の言葉が継げなくなる。
一人暗闇の底にうずくまって泣いている子供は、どうしても他人とは思えなかった。故郷から逃げてきた時の俺は、きっとこんな風に弱弱しく頼りなかったのだろう。
俺は何も言わず、ただ子供の体に巻き付けている布を留めているザイルが緩かったのに気づき、そっと手を伸ばして結び目を解いた。
その時だった。
「そこまでだ、賊め!」
闇を引き裂く威勢の良い声に、俺は驚いて手を引っ込めた。
結び損ねたザイルが落ちて巻き付けられた布がはらりと開き、暗い視界の中で白い肌が痛々しくむき出しになる。
俺が得物に手を伸ばしながら声のほうへ視線をやると、カンテラを手にした男が一人、茂みを越えてこちらに駆け寄ろうとしていた。
質問:この男は何者だろう?
オープンテーブル:6-2/energizing(活力や栄養を与える)
オープンテーブル:2-11/wise one(賢い者)
カンテラを持っているのは、壮年の男のようだ。生命神ヴィタールの聖印を身につけている。旅の僧侶だろうと、俺は見当をつけた。
「賊だって?」
「武器を手放せ。子供から離れろ!」
「おいおい……」
ひっく、ひっく、としゃくりあげている子供がか細い声で「違うんです、この人は、」と訴えているが、緊張状態にある僧侶には届いていないようだ。
俺はとりあえず、武器から手を離すことにした。
ムーブ:《危機打開/CHA》
ダイスロール:9/誤解を解くことはできるが、代償を支払うことになる。
バシッ!
小気味よい音が響き、光の波が僧侶から俺に向かって駆け抜ける。突然体が重くなり、立っていられなくなった。
俺は下手に倒れてケガをしないよう、ゆっくりとその場に膝をつき、手を地面に突いた。
魔法への対処の方法は、少々心得ている――こういった生命や精神に働きかけてくる魔法には、心の力で抗うこともできるはずだ。だが、俺はそれをせず、ただ薄笑いを浮かべて僧侶を見上げた。
「こいつを一発食らえば、話を聞いてくれるって寸法だ」
「……!」
武器を取ることも飛び掛かることもなく、萎縮の魔法を抵抗なく受け入れた俺を見て、僧侶は次第に誤解を改める気になってきたようだ。
どうやら、悪人ではないらしい。世の中にはとんでもない聖職者もいるものだが……
この男は単純に、子供が凶悪な流れ者に(俺のことだ!)襲われていると思って飛び出してきたのだろう。
状態:衰弱(STR-1)
やっと泣き止んだらしい子供が、上ずった声を上げた。
「違います、この人は……ぼくを助けてくれたんです」
僧侶は俺と子供を見比べ、眉を寄せて俺を見た。
「……どうやらそのようだな」
「この子供は裸で逃げ出してきたんだ」
骨が抜けたようにぐったりと力が抜けていく体を引きずって、俺はその場にだらしなく足を組んで座った。
「今は俺のマントを着せているが、夜の寒さには心もとない。あんた、この子が着られそうなものは持ってないか?」
質問:僧侶は子供の服を持っているだろうか?
ダイスロール:5/持っていない。
僧侶は黙ってかぶりを振り、そのまま俺たちに近づいてきた。
その指先が聖印に僅かに触れ、ヴィタールの聖句を呟いたようだった。
「体を温めなければなるまい。ここで野営するつもりだったのだろう? 最も簡単な方法は、焚火を熾すことだ。私も手伝おう」
「なぜ、野営すると?」
「この先に村はない」
俺は少し黙り込み、その顔を伺うように視線を上げた。
少し前に確かめた地図では、山間に切り開かれた小さな村が確認できたはずなのだ。
「なんだって?」
「最寄りのタルイアの村に向かうつもりだったのか? あの村はとうに反逆者たちに焼き払われて、宿などないぞ」
「冗談だろ……」
それが王位を狙う簒奪者たちの仕業だとしたら、なぜこんな田舎の村を狙うのだろう。疑問は尽きないが、尋ねたところで答えの帰ってこない問いだ。
俺はのっそりと立ち上がり、僧侶を改めて見た。
質問:彼の外見的な特徴は?
特殊ランダム表/印象的なNPCの外見:54/NPCはとんでもないドスケベ衣装を着ていて、それに恥じない体を持っています。
(出典:Dndspeak 100 Memorable NPC Appearances )
「うむ、見ての通りの身の上でな」
とんでもないドスケベ衣装を着たムキムキの僧侶は、いかめしく頷いた。
「子供が着られる服は持ち合わせていない」
俺は何でこいつに「服を持っていないか」なんて聞いたんだろう?
俺はあいまいなうめき声を返事にして会話を終わらせ、僧侶と手分けをして焚き木になりそうな小枝を集めることにした。
場面3:焚火を囲んで
「私の名前はビドリーン。生命神ヴィタールに仕えし旅の僧侶だ」
焚き木にカンテラの油を移し、火種を投げ込みながら、全身からその鍛えられた筋肉の圧を醸し出すとんでもないドスケベ衣装を着ているその僧侶は重々しく名乗った。しばらくは燻る煙が心許なく上がり、やがて炎が周囲を照らす。
炎の温かさに引き寄せられるように、子供はマントを引き寄せて体に巻き付け、そろそろと近づいてきた。
焚火を囲むように俺とビドリーンも座り、荷物を近くに引き寄せる。
「誤解は解けたようで何よりだな、ビドリーン。俺はホーク、旅の戦士だ」
「この子の護衛を?」
「いや。たまたま出くわしたんで助けただけさ」
炎が映る金色の瞳でぱちぱちと瞬きをして、子供は俺とビドリーンを見ている。俺は荷物を漁って干し肉を引っ張り出しながら、横目にその幼い横顔を見た。
よく考えたら、俺はこの子供の名前も知らない。
「そういや、まだお前の名前を聞いてなかったな。聞いていいのか? ……ウフラルに、自己紹介のタイミングについての厳格な礼儀作法って奴がないならの話だが」
「ああ。名乗るのが遅れましたね、失礼しました」
子供は俺の皮肉っぽい口調など気にした様子もなく、俺とビドリーンに向かって微笑んだ。
「ぼくの名前は、エルディです」
「エルディ……」
ビドリーンが、ぽつりと繰り返すようにつぶやいた。
質問:ビドリーンは、ウフラルの王子エルディの名前を知っているだろうか?
ダイスロール:2/知らない。
「酷い目に遭ったようだが、気丈なことだ」
優しい眼差しで、ビドリーンは言った。そして、俺に穏やかに声を掛ける。
「その子が襲われていると思い、誤解からお前に魔法を掛けてしまった。すまなかったな」
「どうってことはないさ」
本当は皮肉の一つも言ってやりたいが、エルディのきらきらした目で見られていると調子が崩れる。俺は本当にどうでもいいことのように軽い調子で言って、干し肉に爪を立て、二つに裂いた。
少しは栄養を摂らないと、逃げるにしても戦うにしても身動きが取れなくなってしまう。しかし、王子様だというのが本当なら、こんなものがはたして口に合うんだろうか?
俺がエルディの顔を確かめるように視線を走らせる間にも、ビドリーンは重々しく続けている。
「私がホークに掛けた魔法は、《生命の簒奪(バイタリティ・シージャ)》という名の、ヴィタールの信徒が身を守るための魔法だ。一晩眠れば効果は消えるだろう」
「手足が重くて仕方ないんだが、それを聞いて安心したよ」
「朝が訪れるまでは、責任をもって私がこの野営の見張りを請け負うこととしよう」
「助かるね」
言葉少なに答えて、俺は裂いた干し肉をエルディに差し出した。
エルディは丸っこい瞳にそれを映し、白い手を伸ばして受け取った。
質問:エルディは干し肉を食べられるだろうか?
ダイスロール:9/食べられるが、ちょっとしたトラブルが起きる。
がち、がち、と干し肉を叩くように噛んでから、エルディの歯はそれを思い切ったように噛み千切った。ゆっくりと何度も噛み締めて、大人でも呑み込むのに苦労するそれを時間をかけて嚥下していく。
ああ、そうか。
と、俺は思った。
(飢えれば動けないことを、すでにこの子は知っているんだな)
そして、動けなくなれば、それが死につながることも。
王宮で安穏と暮らしているべき王族の子が、なぜそんなことを知ることになってしまったのだろう。このウフラルの内乱は、この子にどれだけ恐ろしい記憶を教え込んだのだろう。
俺はうつむいた。
エルディはそんな俺の様子に気づいたようで、干し肉のかけらを飲み下すと共に弾かれたように顔を上げた。
「あ、あの……美味しいです! 貴重な食糧を分けていただいて、ありがとうございます」
「……」
俺は裂いた干し肉のもう半分を眺めた。
そして、それをそっとエルディに押し付けた。
「えっ、いいんですか?」
「お前が言うほど、美味いもんじゃねえけど……食いきれなかったら、懐にでも突っ込んで持ってろよ」
「でも、ホークさんは……」
「俺は、腹は減ってない」
俺はそっけなく言い切り、焚火のそばにごろりと横になった。
一晩眠れば魔法による萎縮は収まるようだが、この空腹は体力を少し削るかもしれない。ビドリーンが野営の番をしてくれるのが幸いだ。
ダメージダイス:2
HP:24→22
状態:不調なし
場面4:僧侶ビドリーン
よく晴れた朝が来た。大あくびをする俺をよそに、ビドリーンは黙々と干した燕麦を入れた小鍋を焚き火に掛けていた。水と塩の他にも何か放り込んでいるようで、なかなか美味い匂いがする。
「チーズを入れたのか?」
川の水で顔を洗いながら、俺は尋ねた。
ビドリーンは頷いて、旅の荷物からごわごわした紙に包まれた暗褐色の小さな塊を取り出して見せた。ナイフで削り落とされていて、削られた断面には光沢がある。しっかり干し固められたチーズのようだ。
「そのまま齧ると腹ペコのネズミでも歯が粉々になる代物だが、こうして削って入れると干からびた燕麦でもなかなか食える代物になる」
「イカしたレシピじゃないか。生命神ヴィタールの教えってやつか」
「己を生かすものを尊び、軽んじることなかれ、という教えのことを指しているなら、その通りだな」
軽口は通じていたようで、ビドリーンは穏やかに微笑んだ。
起き出してきたエルディに顔を洗っておけと告げて、砂利の上で寝たせいで痛む体を一通り伸ばす。朝日は清らかに差し込んでいて、ウフラルで起きている血塗られた政変などまるで別世界だ。
燕麦のチーズ粥が俺の分まであるとは思っていないが、こういった子供でも無理なく食べられそうな食事などこれから何度ありつけるか分からない。
俺はビドリーンに目配せをして注意を引き、思い切って切り出した。
「そいつをエルディにも食わせてやってくれよ」
「言われるまでもない。3人分作ってある」
「え?」
俺は思わず聞き返した。
「驚くようなことじゃない。施しは神に仕えるものの務めだ」
「……お前、本当の信徒なんだな」
「生命神ヴィタールの徒として、この聖印に恥じぬ生き方をするまで」
ビドリーンは際どすぎる衣装の股間の上に描かれた聖印に触れて、力強く宣言した。
「……」
俺はぐっと胸が詰まるような心地でしばらく何も言えず、少し顔をそらして黙り込んだ。
不満があるわけではないが、これまでの俺の旅は孤独で厳しいものだった。こういった善意に不意に触れると、どうしても感情が揺さぶられる。
こんなにいい奴だと、ずっと気になっていたこの変な衣装について今更尋ねるのも躊躇われてしまう。俺は気持ちを落ち着けて、一言弱々しく「ありがとな」と告げた。
「わあ、美味しそうです」
顔を洗ってきたエルディが、はしゃいだ声を上げる。俺が枯れ枝を削って平たい匙を作り、鍋の中のものを3人でつついて食べることになった。
質問:影の一党や反逆者は、俺たちを見つけるだろうか?
ダイスロール:6/いいえ。少なくともこの朝は、敵の襲撃は発生しない。
その温かな食事で、エルディの表情はだいぶ和らいだようだ。ずっと青ざめていた白い肌には、薔薇色の血の気が上っていた。
繊維をほぐした木の枝を口に突っ込んで歯を拭っている俺を、エルディの金色の瞳がじっと見つめた。切り出したいことは、とても重要なことのようだ。
俺は木の枝を吐き出し、口を濯いでから、エルディに向き直った。
「そういや、まだ落ち着いて話を聞いてなかったな」
「はい。……ホークさん」
聞くべき言葉をまだ聞いていないのは、俺もよくわかっていた。俺は黙って、エルディの言葉を待った。
「ぼくは追われる身です。このままでは簡単に追いつかれ、殺されてしまいます。あなたに、ぼくの護衛を依頼したいのです」
「戦士への依頼なら、報酬が必要だ」
俺は説き伏せるように告げた。
「……この事態が落ち着いたら、十分な報酬をご用意します。ぼくの名と、血筋に懸けて」
エルディの名。光の血筋。
そのどちらにも、今までのような重みはない。空手形を着られる可能性のほうがずっと高い。それは、エルディも分かっているはずだ。
俺は黙り込み、腕組みをした。
「俺は戦士だが、傭兵じゃない。こうして旅をしているのも、何も勤め先を探しているわけじゃない。修行の旅だ」
「修行……」
「強くならなきゃならない。そのために、打ち倒すべき敵が要る」
報酬は、ぴかぴか光る金貨で支払われるものばかりではない。求めているものを与えることができれば、それは十分に報酬たりえる。
そして俺は最初から、金など求めてはいない。
「お前との旅の先に、打ち倒すべき強敵はいるか?」
俺ははっきりと尋ねた。
質問:エルディは、強い敵に心当たりはあるだろうか?
ダイスロール:2/エルディは、敵について知らない。武芸の腕前にはあまり興味がなかったのかもしれない。
エルディは困惑して黙り込んだ。どうやら、俺が求めるような武勇の世界には疎いようだ。
咳払いをして、ビドリーンが助け舟を出す。
「ホーク……護衛の旅は、思った以上の脅威と危難の連続になる。いつだって、例外なくな」
「旅をすれば、俺を満足させるものが現れると?」
「ひとつ、確かなことがある」
ビドリーンの遥かを見るような瞳が、旅路の西の方を差し示した。そこには険しい山々が聳えている。
「この道を行けば、ヴェイスウィック山脈に至ることになる。神々の宴会場として知られる聖地で……宴はすでに始まっている」
「神様たちが、あの山に集まってるっていうのか?」
「我らが生命神ヴィタールもな。この私の旅は、ヴィタールのおわす山峰を仰ぐための、巡礼の旅路だったのだ」
俺は立ち上がり、霞が掛かる西の遠景を眺めた。
「神々の宴に人の身で飛び込むことの恐ろしさは、筆舌に尽くしがたいものがある。愚かしきが上にも愚かしき行為。それゆえに、今の時期は、誰一人ヴェイスウィック山脈には近づかない」
「誰一人……?」
確かに、それは好都合だ。
「新たなる試練を求めるなら、そして敵の追っ手から逃れるなら……ホーク、エルディ、お前たちの行き先は一つしかない」
「ヴェイスウィック山脈を、越える……」
俺は呟いた。
それは、啓示だった。そして、決意だった。
ビドリーンは力強く頷き、俺の肩へ手を置いた。
「短い間だったが、良い時間を過ごせた。お前たちの行く道に、我らがヴィタールのもたらす活力が溢れんことを!」
次回へ
「王子エルディの危機」というフロントを解決するために、もう一つの危難であるヴェイスウィック山脈に向かう展開になりました。
今回は、「Dndspeak」の1d100ランダム表「100 Memorable NPC Appearances」を使用しました。以降からもこのように、オープンクエスチョンに対してはSolo Dungeon Worldで用意されているオープンテーブルのほかに、外部のランダム表やランダムジェネレーターを適宜使用していこうと思います。
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