【長文】全運會決賽を漏れなく見たので、中國棒球への所感を書く
とあるサラリーマンが、休日である9/12に「中國の五輪」全運會の棒球賽チェックに7時間半も尽力したので、チェックの上で感じた中國棒球の現在とこれからについて、たくさん書きたいと思う。
注意
中國棒球にハマって日が浅い(大体半月〜1ヶ月)人が書いているため、正しく中國棒球の実際を表しているとは思わないでほしい。一部は正しいかもしれないが、そのあたりの評価は他者に任せる、、
サマリ
ちゃんとした野球になっている。ディフェンスドリブンな味わい
ピッチングはコントロールがソリッドな仕上がりで、ディフェンスもそれを支える形でゲームが成立
バッティングが一番のウィークポイント。先は長そうだ、、
一様分布なピッチングデプス
シーリングよりもフロアーが味わえる、一言で中國棒球を表現すると、そんな具合なソリッドで、ディフェンシブな味わいであった。
ズバ抜けたモンスタークラスは不在。全運會を全体で見れば孟偉強や宮海成あたりは90マイルオーバーをマーク出来る巨大なエンジンがあるものの、9/12の決賽に2人がプレーするチームの出番は無かった。結果として拝めた人材のMAXは甘泉の84マイル止まり。蘇長龍もマークしていたかもしれないが、、そんなレベルである。
一方で、全員が漏れなく、変化球も交えてカウントコントロールが出来る上、プレースタイルやリリースポイントにもそれなりにバリエーションがある点はインパクトが大きかった。国家隊入りが出来るプールとの形で1個の集団として見ると、これはそれなりなストロングポイントと思う。
3決で惜敗した四川のリレーが一番分かりやすいかもしれない。エクステンション大なストレート主体のフライボーラー甘泉を立てた後に、シンカー・スライダー型の羅夏、そして左の本格派でスライダーが良くキレる冉松。3人はいずれも国家隊メンバー入りもしている実力者で、大会ラストゲーム、メダルがぶら下がった中でのゲームなこともあり、四川は彼らを次々に投入していった。3者3様。それでいてストライクを並べられる。
オーバーハンドは吳安俊や鄭超群、齐鑫がいて、スリークォーターは羅夏や孫建增、冉松、米嘉弘、李鑫。サイドハンドも蘇長龍がプレー。バリエーションが広い。大体はキレはともかくコントロールが効く3球種を持っているか、国内レベルではプラスグレードの変化球主体で組み立てるケースだが、いずれにしてもストライクを集められる。こうした一様分布の作りは、国としてのデプスの厚さと捉えても良い、と感じる。
そしてこれは、アメリカを発信地にして、日本、台湾でも見られるボールのパワーアップトレンドが中國棒球にも到来すれば、めちゃくちゃに面白いことになることも意味していると感じる。少なくとも、B站等を見る限り、ドライブラインの「プライオボール」と言ったパワーアップメソッドを伝えるチャンネルは無い上、私があさっている限りではMLB棒球發展中心でこうしたトレーニングを伝えているシーンは(若年層だから、との理由はあるかもしれないが)見当たらない。
仮にこのあたりのメソッドが伝わった後のことを考えると、中國棒球は世界でもトップクラスのピッチングプロスペクト大国になるポテンシャルすらある、と私は信じている。孟偉強や宮海成、全運會で91マイルをマークした齐鑫と、90マイルオーバーをマークすれば騒がれる現在だが、所詮は国内レベルでズバ抜けている、止まりではある。特に齐鑫は今の技術そのままにパワーが94〜95マイルまで上がれば、少なくとも立派にマイナーフルシーズンクラスはプレー出来るスペックに化けるだろう。
パワーのたらればはあるが、少なくとも現在、スキルがあって、テクニカルにゲームメークも効くことは良く分かった。全運會を通じて私が得た、もっともポジティブな中國棒球へのイメージである。
ディフェンシブ・タクティクス
ピッチングが苦労無くストライクを集められる、レパートリー広くゲームメークも出来るとなると、そのパフォーマンスを下支えするディフェンスも大事になってくるが、決賽で荒れたのは北京ぐらい(主に陸昀。ただし、本人のディフェンス力や素養は高い、との点は注記しておきたい)で、特に江蘇はとても良いプレーを終始キープした。投げて、守るとの一連のフローをないがしろにしないチームが大半だったことを考えると、中國棒球は一種の形には収まっている様に思う。
ずっと前にWBC等で拝んだ中國棒球のディフェンスは、まるで堅牢さが無いイメージが大きかった。ディフェンスが上手い人材はRay ChangやJoey Wongと中国系アメリカ人ばかり、しかもOFディフェンスについてはちょっと深いフライを打たれるとまるで背走が出来ず、大半はツーベースになるシーンが、、少なくとも、こうしたかつてのイメージと、全運會で見たプレーには乖離があった。一部の識者曰く、北京大成學校から發展中心ルートの賜物、と言うコメントも見たが、このルート外のメンバーのプレーも割とソリッドで、特に高強はプルヒットされた、強く伸びる打球を上手くハンドリングしていたと思う。王寧も一瞬Byron Baxtonに見える様な猛チャージからのスライディングキャッチを決めたりもした。フライを打てばミスを誘発出来る、そんなレベルが低いゲームでは、少なくとも全運會は無かったと感じる。
後述するが、中國棒球はバッティングが大きなネックと感じたため、必然的に勝敗を分ける要因として、ピッチングも含めたディフェンスは非常に大きいイメージがめちゃくちゃに膨らんでいる。「ディフェンシブ・タクティクス」を完遂出来たチームがベストなイメージで、事実決賽の江蘇はディフェンスで満点を与えられるパフォーマンスであった。今後、北京大成學校から發展中心ルートの中で、より高いレベルのディフェンスを提供してくれる人材が続々生まれてくれると思うと、ピッチングとの関わり合いも考慮して、直近で是非ともストロングポイントにして頂きたい、と感じた。
勝手なフレーズを作ってしまうが、「防守棒球」を、しばらくは国家としてのポリシーにしてしまっても良いかもしれない。
国家総スランプ状態のバッティング
ここから一気にネガティブなことを書く。防守棒球だ!なんて書いたが、これから未来で中國棒球が国威発揚を成し遂げる上では、バッティング無くしてアメリカをはじめとした大国には勝てない。
課題が山積みな上、パッと見た限りは海外でプレゼンスを示せるであろう人材も皆無と、まさに国家総スランプ状態と言うべきバッティングと感じる。バッティングを形成する要素の大半が、中國棒球には欠落している。
まず、アジャスト力が無い。国内のピッチングはたしかにソリッドだが、上述の通り大半は「大体はキレはともかくコントロールが効く3球種を持っているか、国内レベルではプラスグレードの変化球主体で組み立てる」タイプの中で、ボールのクオリティと比べてもあまりにも食らい付けない。私が見た限りは、ストレートとスライダー、カーブとの基本セットがあれば、まず国内ではそれなりに抑えられる。カーブがチェンジアップになれば、左打者にもスキが無いエースになれるだろう。事実、孟偉強も齐鑫も良いチェンジアップを投げている。
トップカテゴリでは、もはやレパートリーとは言えないキレで、初見でも即スタンドインは必至なボールでも、中國棒球の打者はあっけなく翻弄される。ヤマを張ったボールがあって、それ以外が来た場合はさっさと諦めている、そんなイメージ。アジャスト力が無いのか、アジャストするつもりが無いのかは定かでは無いが、少なくとも翻弄されっぱなしなのが現状である。
アジャスト力が無いと失投を狙うチャンスも減るが、失投を大ダメージに出来る程のパワーが無い点が、加えてのネックだ。張賽や那闖と言ったパワーバットは何人かいるが、基本的に国家総パワーレス状態で、失投をシングルヒットで止めている。上述した防守棒球も、ベースにはバッティングのパワーレス文化があると感じる。スタンドインをほとんど想定しなくて良いので、インプレー前提で、インプレーからいかにアウトをもぎ取るかを念頭に置けば、ディフェンスのプライオリティは高くなるだろう。こうした背景で全体のディフェンス力が上がったのであれば、メリットが無かった訳では無かった一方、この先に向けては防守棒球を上回るためにも、バッティングはいくらかのブレークスルーが求められることになる。
近年は、かわいいだけで無く、バッティングさえも作ることが出来る様になったことは、「アメリカン・ベースボール革命」でも記憶に新しいが、中國棒球の立ち位置はDoug Lattaのメソッドを吸収する以前のステージ、と言うのが私の理解だ。アジャスト力の無さ、根本的なアプローチ方法を洗練させないことには、スイングプレーンやフライボール・レボリューションなんて全く意味を為さないだろう。たくさんの攻め手がある相手に対して、どの様に攻略をしていくか、ここを突き詰めないことには、防守棒球を掲げ、それが徹底出来たとしても、ある程度のところでジリ貧になることは目に見えている。
中國棒球の未来に向けた提言
提言と言うか、戯言と言うか、、7時間半を投じて、中國棒球が分かった気になった身から、現実味をあまり考慮に入れない、未来へ取るべきじゃないかアクションについて自由に書きまくる。
まず、「アメリカン・ベースボール革命」を読んで頂きたい。国内で発刊しているかは定かでは無いが、台湾の出版社を介して中文訳があることはAmazonで確認した。
MLB棒球發展中心のトレーニングを見ても、この本に書かれている様なことを実現してくれるテクノロジーについては、ダイレクトにアメリカの物を輸入することは難しいだろう。その点については、国内のIT界の雄(個人的にはテンセント推し)のサポートも取り付けなければならない。巨大資本とのタッグを行うべく、中國棒球サイドの主要人物の奔走に期待したい。
国内の内製で野球にまつわるテクノロジーが成熟したら、一大プロジェクトのスタートだ。是非、キューバと提携して、相互に人材を派遣し合う関係を築き上げて頂きたい。お互いのリーグ開催期間中に、強化ターゲットの人材を派遣する、ウィンターリーグ間の提携の様なイメージだ。
キューバとの提携は、中國棒球を追いかけ始めた当初から、ずっと妄想をしているプランだ。アジャスト力が足りない、パワーも無い国内の打者にとって、ストレートのレンジに大きな差分は無いものの、ボールを動かしたり、リリースポイントを変えながら様々なレパートリーを交えてくるキューバのピッチングは絶好のトレーニングになる。こうしたピッチングにパワフルに対処するキューバの打者のスタンスも、すぐに国内に持ち帰り実践が出来るナレッジになると感じている。キューバにとっても、国外のプレーに触れるチャンスや、このプロジェクト発足前に成熟した中國の野球テクノロジーの提供等のメリットがもたらされれば、きっとWIN-WINになる。
アメリカン・アソシエーションに派遣している場合では無い。アメリカン・アソシエーションはあまりにもレベルが高いのだ、、キューバも野球大国としてのプライドがジリ貧に立たされている中で、社会主義国家間の野球ラインの発足が現実になり、双方が世界の野球の中でのプレゼンスを伸ばして頂ければ、さらにWBCやプレミア12は面白くなってくるだろう。
ところで、こんな妄想を行ううちに、「死ぬまでに見たい物」が1個、新しく生まれたので、最後にその内容を共有して、クロージングしようと思う。
WBC決勝、アメリカ vs. 中國と言う、世界の大国同士の、野球を介したノーガードでの殴り合いである。
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