エフェクターを自作したい人向け、電気回路の勉強方法


導入

 私の周りでも「エフェクターを自作してみたい」、「電気回路を勉強したいがどこからてをつければいいかわからない」という方はぼちぼちいます。そういった人のために、私がどのように勉強したのか、どうすれば近道だったのかを簡単に紹介していければと思います。

勉強する上でのおおまかな流れ

 現実問題として、基礎から応用まで系統的に勉強できるコンテンツは無いと言っていいかもしれません。なので複数の本やサイト、Youtube等を掻い摘んで勉強していくことになります。
 ここではコンテンツをざっくり3種類に分けようと思います。

  • 初学者用概論系

  • 具体的コンテンツ

  • 理論的コンテンツ

この3種類を使い分けながら勉強していくことになります。勉強の流れとしては

概論系→具体的⇄理論的

という形になります。これらについて、おススメの本やサイトを紹介しながら、どのように勉強していけばよいかということも教えていければと思います。

1.初学者用概論系

 概論系で目標とするのは、『基礎を学んだうえで、電気回路という分野を一望すること』です。何も知らない状態で回路を組んで動かしてもあまり効率的な勉強とは言えません。ここでは電気回路という分野にとにかくいいカタチで入ることを目標にします。それでは、おススメの本を紹介していきます。

回路図で音を読み解く! ギター・エフェクターとアンプの秘密がわかる本 (リットーミュージック)

 この本以上にエフェクター製作の入り口として適している本は無いでしょう。電気回路や電磁気学の知識が無くても、基礎的な内容から丁寧に書かれているため、詰まることなく読み進めることができると思います。この本を読めば、エフェクターの簡単な動作原理について理解することができると思います。

サウンド・クリエイターのための電気実用講座

 この本は絶版となっていますが、上記のページでpdfを購入することができます。内容自体は少々古いところもありますが、問題なく読むことができます。難易度としては、『ギター・エフェクターとアンプの秘密がわかる本』より少し上級な雰囲気はありますが、分かりやすい例やイメージを用いた各パーツについての説明や、実戦でも使える有益な情報まであり、読み込み甲斐のある本です。この本を読めば、エフェクター製作に必要な知識は一通り得られると思います。個人的にイチオシの本です。新版に期待したいところです。

2.具体的コンテンツ

 ここでは、実際に売られているエフェクターの回路やその改良について具体例や応用例を知ることを目標としてます。実際のエフェクターではどのように回路が設計されているかをインプットしたり、実際に作ってみたりすることを目的とします。幸い回路図はネットでたくさん見ることができますから、ここはちとネットをフル活用するとしましょう。

 基本的に、回路設計は先人の回路を参考に組んでいくのがセオリー(悪く言えばパクる)なので、専門書の回路例だけでなく、完成品の回路にも目を通し、音の傾向を学んだり、ノウハウを盗んでいく作業が必要になると思います。行き詰ったり、突き詰めたいときに専門書など理論的コンテンツを参照すると効率的に学習できると思います。

Effects Factory

 回路の解説をメインでされているブログです。かなり踏み込んだ内容となっており、改良方法や実戦で役立つ小技を多く知ることができます。また、有料記事『Jan rayの設計ミスと改良』もなかなか読み応えがあり、高性能化の近道となる内容が多く書かれているため併せておススメしたいです。

ハンドメイドプロジェクト

 サウンド・クリエイターのための電気実用講座の著者である大塚明 氏による製作記事集です。かなりのボリュームがあるため、製作の練習や回路のアイデアを探すのにもいいかもしれません。

可燃ごみ箱氏のブログ

 こちらのサイトでは、エフェクターの回路解析や動作原理の紹介などをされており、エフェクターを理論的アプローチから考察しています。内容としてもかなり勉強になることが多々あり、なんといっても解析された回路図が数多く揃っているため、コピーやアイデア集めでかなり役に立つサイトだと思います。

3.理論的コンテンツ

 理論的コンテンツで得たいものとしては、エフェクター製作で必要な知識のうち、パーツ選定の知識であったり、定数計算の方法、実装のテクニックといったより実戦的、かつ工学的内容です。ラインナップは専門書が多めとなりますが、頑張ってチャレンジしてみてください。ここで紹介する本の多くは大学図書館に所蔵されていると思いますので、大学生や近所に大学がある方はぜひ探してみてください。

定本OPアンプ回路の設計: 再現性を重視した設計の基礎から応用まで (CQ出版)

 アナログ電子回路学習者では知らない人は居ない、というと過言かもしれないが、それくらい有名な本です。他の本でも『岡村先生の~』と度々言及されるような名著です。オペアンプを使った回路設計をするのであれば必ず読んでおきたい、そういう本です。設計に行き詰った時に何度も読み返しているため、私が大学に入って一番読み込んだ本はこれか次に紹介するトランジスタ回路の設計だと思います。
 技術的な話をすると、一般的にこの手の本だと等価回路を用いて説明することが多いですが、この本は全く等価回路が出てきません。それでも問題なく理解できますし、私も等価回路は使わなくてもいいと思う派です。大学のアナログ電子回路の授業で等価回路は勉強しましたが、全く使わないのですっかり忘れましたorz…

定本トランジスタ回路の設計: 増幅回路技術を実験を通してやさしく解析(CQ出版)

 こちらもかなり、読み込んだ本です。オペアンプを使わないディスクリート回路を設計するなら読むべきです。関連書籍に『定本トランジスタ回路の設計 (続)』があります。違いとしては、続ではない方がバイポーラトランジスタを扱い、続がJ-FET、MOS-FETを中心に扱っています。どちらもかなり読みやすく、それでいて内容も充実しているため激推しです
 言っておくと、別にCQ出版の回し者ではないです。寧ろこっちがお金払ってますから。

光デバイス入門- pn接合ダイオードと光デバイス(コロナ社)

 電子回路とは直接関係はないですが、トランジスタやダイオードの動作原理を理解するのに役立つので紹介します。原理を知ることで、学問的理解が深まり、回路設計にも応用できるので是非読んでいただければと思います。

最後に

 ここで挙げた書籍やサイトを中心に学習、製作を進めていくことでおそらく、エフェクターを設計するために十分な知識を身に着けることはできると思います。ですが、ここで紹介しなかったサイトや書籍にも有益な情報はありますから、是非好奇心を持って情報を探していただければと思います。

 時には、いろんなサイトや本を漁っても答えが見つからないこともあるかもしれません。でも、それでいいんです。電気回路、電子回路の学習は遠回りしてなんぼです。遠回りの最中に色々な知識を得て、それが今後に繋がります。寧ろ、遠回りが一番の近道かもしれません。偉大な先人たちもそうやって、巨大な知識の塔を築いたのです。

 
今回は以上になります。最後までお読みいただきありがとうございました。

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